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6章 恐怖のラブレター
02 依頼
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エジプトからロンドンへ市長の秘書と一緒に戻ったジークは、そのまま病院へと直行した。
病院の大部屋の窓側のベッドで大人しくいる警部の姿を見ると、ジークは少しほっとした。
「なんだ、わざわざ見舞いに来てくれたのか? 別によかったんだがな」
「大丈夫なんですか?」
「ああ。足を滑らせて階段から落ちたんだ。それで、足を骨折してな」
「え?」
ジークは秘書の顔を見た。
「私は怪我をしたとしか言ってませんよ?」
「なんだ? 秘書にうまいこと言われ戻ってきたのか?」
「どうやら、そんなところのようです」
「どこへ行ってたんだ?」
それには秘書が「エジプトです」と答えた。
「エジプト? 観光にでも行ってたのか?」
「急いで戻ったのでお土産はありませんが」
「構わんよ。次、海外に行くなら俺にも声を掛けてくれ。年休を申請して旅行に出る」
「自分と?」
「いいだろ別に。一人じゃ心細いんだよ」
「警部が心細い?」
「おい、馬鹿にしてんのか?」
「いえ。分かりました。では、警部が退院出来るのを待ってますよ。しかし、警部は一人でアメリカに行き来してたじゃありませんか?」
「……あれな。迷子になってな」
「へ?」
「警部は実はよく迷子になるんです。ロンドンのことしか知らないんですよ、警部は」と秘書は言った。
「うるさい! 地図さえあればなんとかなる。アメリカに行った時は売店で買った地図が古すぎたんだよ。全く使えなかった!」
「あら、そうだったんですか。かわいい言い訳ですね」
「なにがかわいいだ。どいつもこいつも馬鹿にしやがって」
「警部、私は馬鹿にしてませんよ」
「もういい! 二人ともどっか行ってくれ」
「はいはい、分かりましたよ。ですが、警部。アメリカで迷子になっていたなら、空振りだった理由もそれが原因じゃありませんよね?」
「ない。途中で案内人を付けた」
「あぁ……」
「なる程みたいな顔をするな!」
これ以上、警部を怒らせるわけにもいかないので、二人は踵を返した。
病院を出てからジークは秘書の方を向いた。
「それで、あなたの狙い通り私をロンドンに連れ戻し目的を果たしたんですから、いい加減本題に入ったらどうですか」
「それじゃそうさせていただきます。実は」と秘書は真剣な顔になった。
「カルメン市長に脅迫状が届いたんです」
「脅迫?」
「はい。カルメンさんが市長に就任して一ヶ月後にです」
「確か、手紙がやたらくるようになったのもその時期でしたね」
「やはり、読んでなかったんですね」
「途中からですが」
「読んで下さいよ! そうしてもらえたらわざわざエジプトに私が行くこともなかったんですから」
「でも、おかげでピラミッドは見れたじゃないですか」
「スフィンクスもです」
「ああ、そうでしたね」
「いや、そう言う話しじゃなくて、その犯人を捕まえて欲しいんです! 警部は見ての通り動けませんし、頼れるのはあなただけなんです」
「どうしてですか? 他に警察の方はいるでしょ」
「表向きは公にはなっていませんが、署長はカルメンさんを支持していないんです」
「それで?」
「警察は役に立たないということです。分かるでしょ?」
「分かりませんね。まさか警察がカルメン市長が早々にいなくなることを望んでいるとでも言いたいんですか?」
「市長は就任の会見で警察が切り裂きジャック事件を解決出来なかったことを批難してしまったんです。私は止めたんですよ。しかし、警察を批判すれば市民の受けが良いからと勝手にあんなことを!」
「秘書も大変ですね。つまり、あなたは警察を疑っているんですね」
「少し違います。政治家になると敵も増えます。中には過激な人もいます。そういった状況では信用出来る人物が身内、仲間にいるかいないかはかなり重要になるんです。カルメン市長はあなたを信用しているんです。どうか、市長を守っていただけませんか。お願いします」
頭を深々と下げお願いされると、ジークは中々断われないという弱点を持っていた。
そのことを秘書は知っていて、ずる賢い頭脳を使ってこうしてやっているのかは定かではないが、ジークの答えは決まっていた。
「分かりました。話しを聞きましょう」
「ありがとうございます」
結局、ジークは事件に引き寄せられ、断われず、たった二ヶ月の休業から再び依頼を受けることになった。
病院の大部屋の窓側のベッドで大人しくいる警部の姿を見ると、ジークは少しほっとした。
「なんだ、わざわざ見舞いに来てくれたのか? 別によかったんだがな」
「大丈夫なんですか?」
「ああ。足を滑らせて階段から落ちたんだ。それで、足を骨折してな」
「え?」
ジークは秘書の顔を見た。
「私は怪我をしたとしか言ってませんよ?」
「なんだ? 秘書にうまいこと言われ戻ってきたのか?」
「どうやら、そんなところのようです」
「どこへ行ってたんだ?」
それには秘書が「エジプトです」と答えた。
「エジプト? 観光にでも行ってたのか?」
「急いで戻ったのでお土産はありませんが」
「構わんよ。次、海外に行くなら俺にも声を掛けてくれ。年休を申請して旅行に出る」
「自分と?」
「いいだろ別に。一人じゃ心細いんだよ」
「警部が心細い?」
「おい、馬鹿にしてんのか?」
「いえ。分かりました。では、警部が退院出来るのを待ってますよ。しかし、警部は一人でアメリカに行き来してたじゃありませんか?」
「……あれな。迷子になってな」
「へ?」
「警部は実はよく迷子になるんです。ロンドンのことしか知らないんですよ、警部は」と秘書は言った。
「うるさい! 地図さえあればなんとかなる。アメリカに行った時は売店で買った地図が古すぎたんだよ。全く使えなかった!」
「あら、そうだったんですか。かわいい言い訳ですね」
「なにがかわいいだ。どいつもこいつも馬鹿にしやがって」
「警部、私は馬鹿にしてませんよ」
「もういい! 二人ともどっか行ってくれ」
「はいはい、分かりましたよ。ですが、警部。アメリカで迷子になっていたなら、空振りだった理由もそれが原因じゃありませんよね?」
「ない。途中で案内人を付けた」
「あぁ……」
「なる程みたいな顔をするな!」
これ以上、警部を怒らせるわけにもいかないので、二人は踵を返した。
病院を出てからジークは秘書の方を向いた。
「それで、あなたの狙い通り私をロンドンに連れ戻し目的を果たしたんですから、いい加減本題に入ったらどうですか」
「それじゃそうさせていただきます。実は」と秘書は真剣な顔になった。
「カルメン市長に脅迫状が届いたんです」
「脅迫?」
「はい。カルメンさんが市長に就任して一ヶ月後にです」
「確か、手紙がやたらくるようになったのもその時期でしたね」
「やはり、読んでなかったんですね」
「途中からですが」
「読んで下さいよ! そうしてもらえたらわざわざエジプトに私が行くこともなかったんですから」
「でも、おかげでピラミッドは見れたじゃないですか」
「スフィンクスもです」
「ああ、そうでしたね」
「いや、そう言う話しじゃなくて、その犯人を捕まえて欲しいんです! 警部は見ての通り動けませんし、頼れるのはあなただけなんです」
「どうしてですか? 他に警察の方はいるでしょ」
「表向きは公にはなっていませんが、署長はカルメンさんを支持していないんです」
「それで?」
「警察は役に立たないということです。分かるでしょ?」
「分かりませんね。まさか警察がカルメン市長が早々にいなくなることを望んでいるとでも言いたいんですか?」
「市長は就任の会見で警察が切り裂きジャック事件を解決出来なかったことを批難してしまったんです。私は止めたんですよ。しかし、警察を批判すれば市民の受けが良いからと勝手にあんなことを!」
「秘書も大変ですね。つまり、あなたは警察を疑っているんですね」
「少し違います。政治家になると敵も増えます。中には過激な人もいます。そういった状況では信用出来る人物が身内、仲間にいるかいないかはかなり重要になるんです。カルメン市長はあなたを信用しているんです。どうか、市長を守っていただけませんか。お願いします」
頭を深々と下げお願いされると、ジークは中々断われないという弱点を持っていた。
そのことを秘書は知っていて、ずる賢い頭脳を使ってこうしてやっているのかは定かではないが、ジークの答えは決まっていた。
「分かりました。話しを聞きましょう」
「ありがとうございます」
結局、ジークは事件に引き寄せられ、断われず、たった二ヶ月の休業から再び依頼を受けることになった。
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