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6章 恐怖のラブレター
03 市長の話
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秘書に連れられ案内された場所はホテルの最上階の角の客室だった。
ドアの前にはガードマンが二人立っていた。
ガードマンは秘書を見てから、後ろにいるジークを見た。
「ローラ・ウィザースプーンさん、この方は?」
「新聞で何度か見たことがある。例の探偵か?」
「ええ、そうです。市長がジークさんをお呼びしたんです。彼も中に入れてあげて下さい」
「ボディーチェックだけはさせていただきますよ」
ジークは頷き素直にガードマンからのボディーチェックを受けた。
問題ないと分かると、ようやく部屋に入ることができた。
部屋は広々としており、カルメン市長はフカフカの赤いソファに座っていた。
「市長、お連れしました」
「ローラ! よくやったわ」
「カルメンさん、市長就任おめでとうございます」
「私のパーティに参加しなかったわね。招待したのに」
「政治資金を集めるパーティでしょ? 行きませんよ。政治には興味がありませんので」
「あなたには求めませんよ。むしろ、感謝のつもりで招待したのですよ」
「ついでに、マスコミの前で事件を解決した私と一緒に写真を撮れば世間のアピールにもなった。そんなところですか?」
「随分と信頼されていないのね」
「ハッキリ否定しないのが理由ですよ」
「あなたと口論する気はないわ。あなたは例のクリスマスパーティ以来、私に信用がないことはなんとなく分かっていたわ」
「それでも私に頼るんですね。市長になる為に手段を選ばないということですか」
「分かってくれとは言うつもりはないわ。今は私を守って欲しいの」
「ええ、そのつもりですよ。それで、脅迫というのは?」
「ああ、あなたに見せるのが早いわね」
カルメンはそう言って脅迫の手紙を見せた。
ジークはそれを受け取った。三つ折りされた折り目のあるA4用紙だ。
カルメン、お前が不正で選ばれたことを知っている。
お前は本当の市長ではない。
よって、お前に裁きを与える。死をもって。
死神より。
「不正というのは?」
「言いがかりよ!」
「でも、元大佐と繋がりがありますよね? 元大佐は軍と今でも繋がりがありますから、軍からの支持をあなたは得られる。死神はそれを言っているのではありませんか?」
「まさか……」
「死神はあなたが当選したことに納得いっていないようですね」
「どうやって犯人を見つけるつもり?」
「こうしていれば犯人はあなたを襲いたくても出来ないのでは?」
「ずっと怯えることになるわ」
「まぁ、そうなりますね。一つ気になることが、何故犯人はわざわざあなたに予告を出したのか? 当然、警備が強化され犯人にとっては犯行するタイミングが失われることになります。脅迫の文章には不正という言葉と裁きという言葉が使われています。犯人は強い正義感があり、あなたのような人物を許すことが出来ない。正義の為なら私刑を執行しても構わないと犯人は考えている。だとしたら、脅迫をせずに執行してしまえば良かった。しかし、犯人はわざわざあなたに犯行予告をしている。犯人にとって必要な事なのか? 考えられる可能性は幾つかありますが、例えば犯人はあなたに強い殺意を感じているが、実行する勇気はなかった。もしくは、殺意まではなかったが、あなたがこうして怯えることを犯人は楽しんでいるのか。こうも考えられます。犯人は殺意もなく、まさか大事になるとは知らずに安易にあなたに脅迫をした。強い正義感だけが先行してしまった。そして名乗り出ることもできず、一ヶ月が経過した。この脅迫文に一番悪意が感じられるのは、犯行予定日がないことです。つまり、単なる脅しなのか? それとも本当なのか? それが分からないということです。ああ、そうだ! この手紙に指紋はありましたか?」
「いいえ」
「そうですか。手紙の封筒はどこにでも売っているものですし、これだけの手掛かりでは犯人を特定するのは不可能ですね」
「でしたら、護衛をしてくれませんか? 勿論、報酬は出します」
「分かりました」
すると、部屋にノックがした。
カルメンは「どうぞ」と言うと、中に入ってきたのはリッター刑事だった。
「あなたでしたか」とカルメンは言った。
だが、リッター刑事の目はカルメン市長よりジークの方へ向けられた。
「戻って来られたんですね! ああ、良かった。ずっと戻られないつもりかと思いましたよ」
「秘書にまんまとやられましてね」
「秘書?」
リッター刑事はそう言って秘書の方を見た。
秘書は苦笑して何も答えなかった。
「リッター刑事、ジークさんも私の護衛につくことが決まりました」
「そうでしたか! それは心強いでしょう。しかし、今となってはそれも無駄かもしれませんよ? なにせ、未だ事件は起きていないんですから」
「ではリッター刑事はあの予告は嘘だと思うんですか?」
「それは断定はできませんが、予告を出してもうかなり日にちが経過しているのですよ? その間、何もなかったというのはねぇ」
リッター刑事の言いたいことは分かった。自分もその時はそうではないかとそう思っていたかもしれない。
2通目の予告と、市長が怪我をするまでは。
ドアの前にはガードマンが二人立っていた。
ガードマンは秘書を見てから、後ろにいるジークを見た。
「ローラ・ウィザースプーンさん、この方は?」
「新聞で何度か見たことがある。例の探偵か?」
「ええ、そうです。市長がジークさんをお呼びしたんです。彼も中に入れてあげて下さい」
「ボディーチェックだけはさせていただきますよ」
ジークは頷き素直にガードマンからのボディーチェックを受けた。
問題ないと分かると、ようやく部屋に入ることができた。
部屋は広々としており、カルメン市長はフカフカの赤いソファに座っていた。
「市長、お連れしました」
「ローラ! よくやったわ」
「カルメンさん、市長就任おめでとうございます」
「私のパーティに参加しなかったわね。招待したのに」
「政治資金を集めるパーティでしょ? 行きませんよ。政治には興味がありませんので」
「あなたには求めませんよ。むしろ、感謝のつもりで招待したのですよ」
「ついでに、マスコミの前で事件を解決した私と一緒に写真を撮れば世間のアピールにもなった。そんなところですか?」
「随分と信頼されていないのね」
「ハッキリ否定しないのが理由ですよ」
「あなたと口論する気はないわ。あなたは例のクリスマスパーティ以来、私に信用がないことはなんとなく分かっていたわ」
「それでも私に頼るんですね。市長になる為に手段を選ばないということですか」
「分かってくれとは言うつもりはないわ。今は私を守って欲しいの」
「ええ、そのつもりですよ。それで、脅迫というのは?」
「ああ、あなたに見せるのが早いわね」
カルメンはそう言って脅迫の手紙を見せた。
ジークはそれを受け取った。三つ折りされた折り目のあるA4用紙だ。
カルメン、お前が不正で選ばれたことを知っている。
お前は本当の市長ではない。
よって、お前に裁きを与える。死をもって。
死神より。
「不正というのは?」
「言いがかりよ!」
「でも、元大佐と繋がりがありますよね? 元大佐は軍と今でも繋がりがありますから、軍からの支持をあなたは得られる。死神はそれを言っているのではありませんか?」
「まさか……」
「死神はあなたが当選したことに納得いっていないようですね」
「どうやって犯人を見つけるつもり?」
「こうしていれば犯人はあなたを襲いたくても出来ないのでは?」
「ずっと怯えることになるわ」
「まぁ、そうなりますね。一つ気になることが、何故犯人はわざわざあなたに予告を出したのか? 当然、警備が強化され犯人にとっては犯行するタイミングが失われることになります。脅迫の文章には不正という言葉と裁きという言葉が使われています。犯人は強い正義感があり、あなたのような人物を許すことが出来ない。正義の為なら私刑を執行しても構わないと犯人は考えている。だとしたら、脅迫をせずに執行してしまえば良かった。しかし、犯人はわざわざあなたに犯行予告をしている。犯人にとって必要な事なのか? 考えられる可能性は幾つかありますが、例えば犯人はあなたに強い殺意を感じているが、実行する勇気はなかった。もしくは、殺意まではなかったが、あなたがこうして怯えることを犯人は楽しんでいるのか。こうも考えられます。犯人は殺意もなく、まさか大事になるとは知らずに安易にあなたに脅迫をした。強い正義感だけが先行してしまった。そして名乗り出ることもできず、一ヶ月が経過した。この脅迫文に一番悪意が感じられるのは、犯行予定日がないことです。つまり、単なる脅しなのか? それとも本当なのか? それが分からないということです。ああ、そうだ! この手紙に指紋はありましたか?」
「いいえ」
「そうですか。手紙の封筒はどこにでも売っているものですし、これだけの手掛かりでは犯人を特定するのは不可能ですね」
「でしたら、護衛をしてくれませんか? 勿論、報酬は出します」
「分かりました」
すると、部屋にノックがした。
カルメンは「どうぞ」と言うと、中に入ってきたのはリッター刑事だった。
「あなたでしたか」とカルメンは言った。
だが、リッター刑事の目はカルメン市長よりジークの方へ向けられた。
「戻って来られたんですね! ああ、良かった。ずっと戻られないつもりかと思いましたよ」
「秘書にまんまとやられましてね」
「秘書?」
リッター刑事はそう言って秘書の方を見た。
秘書は苦笑して何も答えなかった。
「リッター刑事、ジークさんも私の護衛につくことが決まりました」
「そうでしたか! それは心強いでしょう。しかし、今となってはそれも無駄かもしれませんよ? なにせ、未だ事件は起きていないんですから」
「ではリッター刑事はあの予告は嘘だと思うんですか?」
「それは断定はできませんが、予告を出してもうかなり日にちが経過しているのですよ? その間、何もなかったというのはねぇ」
リッター刑事の言いたいことは分かった。自分もその時はそうではないかとそう思っていたかもしれない。
2通目の予告と、市長が怪我をするまでは。
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