探偵主人公

アズ

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6章 恐怖のラブレター

04 狙撃

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 カルメンが夜中にホテルの客室にいるところを外から撃たれたと聞いたのは翌朝のことだ。
 ジークが護衛についていたのはあくまで日中のみで夜はガードマンが扉の前でかたく塞いでいる。客室への入口はそこしか存在せず、窓の外は最上階で地上とはかけ離れている。まずもって外からの奇襲はないだろう。そう万全な状態であるにも関わらずカルメン市長が狙撃されたのは想定外のことだったからだ。
 ジークはリッター刑事から事情を聞かされ、ホテルへと向かった。
 幸い、市長は左肩を撃たれただけで暫くは左腕を動かすのが不便に感じる程度で済んだ。
 弾は貫通してはおらず、手術によって弾を取り除く必要があった。
 客室には処置された市長が青ざめた顔をしてソファに座り、警察から事情聴取を受けている。
「ジークさん、狙撃された場所は此方です」
 リッター刑事はそう言って窓ガラスに穴があいて割れている。
 床を見ると高級感あるカーペットが埃一つない状態だった。
「おかしいですね」
 ジークは真っ先にそう言った。
「やはりそう思いますか?」
 ということは、警察もこの不自然な現場に気づいているということだ。
「カルメン市長の供述では、夜にトイレに行きたくなり向かう際に電気を付けたそうです。そして、トイレに向かっている最中に外から狙撃されたと言っています。銃声はガードマン二人がしっかりと聞いています」
「確かに寝室からトイレに向かうならこの窓の前を通ることになるでしょうが……カルメン市長と話が出来ませんか?」
「どうぞ」
 そう答えが返ってきたので、ジークはカルメン市長のいる部屋に戻った。
「カルメン市長、怪我の様子はどうですか?」
「これから手術を受けることになります」
「その前に質問をしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、構わないけど、何か分かったの?」
「分からないということが分かりました」
「はい?」
「カルメン市長、あなたが撃たれたのは本当にこの客室ですか?」
「何を言い出すかと思えばどうしてそのようなことを聞くんですか?」
「カルメン市長、もしあなたが狙撃されたのなら、あなたを狙った犯人はあなたのいる階と高さがそれ以上でなければなりません。しかし、この部屋は最上階。この部屋の高さと同じかそれ以上の建物はこの周辺にはないんです。となると、犯人はどうやってあなたを狙撃できたのか? それともう一つ疑問があります。撃たれたあなたの服は血が滲んでいますが、床は綺麗な状態でした。床に血がなかったんです。この状況から察するにあなたが撃たれたのはそこではない可能性があります。なら、あの窓は何か? それは簡単に説明出来ます。仮定ですが、前提条件としてあなた実は客室では撃たれなかったとしましょう。しかし、あなたを守るガードマンはドアの前にたち、交代制で見張っていました。あなたを守る為にです。そのガードマン二人は間違いなく客室から銃声を聞いています。銃を使いなれているガードマンが銃声を何かと聞き間違えるでしょうか? では、前提条件は間違いということになるのか? いえ、一つだけ可能なものがあります。あなたが窓に向かって銃を撃った場合です。あなたは脅迫を受け、自分も護身用の銃を用意していたんではありませんか?」
「護身用の銃はあるけど、どうして私が自作自演をする必要があるんですか?」
「是非聞きたいところです! しかし、私はこう推理します。それは恐らくですが、自分が撃たれた場所を知られたくはない理由があるのではありませんか? だから、あなたはホテルの客室で撃たれたことにした。そうでなければ日中は私が護衛に入ってましたし、撃たれたタイミングは日中にはなかった。ホテルに戻ったところまで見届けた以上、あなたが撃たれるとしたらホテルしかないと考えた。しかし、あなたが考えられたのはそこまででした。人は慣れないことをするとミスをしがちです。痕跡を残すのです。カルメン市長、何度も言うようでクドいかと思われるでしょうが、あなたを狙撃するのは不可能です」
「脅迫も自作自演だったのか?」とリッター刑事はカルメン市長に訊いた。
「いいえ。それは無理でしょう。カルメン市長の撃たれた肩の位置は前ではなく後ろ肩ですから、自作自演するなら前肩にするでしょう。勿論、何らかのトリックで自分の後ろ肩を撃つ方法が例えあったとしても、市長が騒ぎを起こす動機が不明です」
「確かに」
 リッター刑事は顎を擦りながら納得した。
「では、カルメン市長。あなたはどこで撃たれたというんですか」
「ジークさん、あなたは私が自作自演で後ろ肩を撃つトリックがあるかもしれないと言いましたが、同じようにあり得ないことを犯人がトリックを使い私を狙撃できた可能性はあると思うんですが、どうですか?」
「では、何故血痕が部屋にないのですか?」
「それは……」
「カルメン市長、私に秘密をしていては犯人は捕まりません。そもそも、あなたは撃たれたのですから当然犯人を見たんじゃありませんか?」
「いいえ。それは間違いないです」
「では、もう一度訊きますが撃たれたのはこの客室ですか?」
「ええ、そうよ」
「あなたがそう証言を続けるのなら、犯人は一生捕まることはありません。宜しいんですか? そもそも、あなたにとってその秘密は自分を守る為ですか? 他人ですか?」
 カルメン市長は少し間をあけてから、深いため息をもらした。
 その後で「私とジークさんの二人だけにしてくれませんか」と言った。
 それには流石にリッター刑事も怒った。
「市長! そんなことを言っている場合ですか」
「リッター刑事、私を信用してくれているのなら、市長の言うとおりにしていただけませんか?」
「ジークさん……分かりました。いいでしょう」
 リッター刑事はそう言って、他の警官も外に出るよう命令し、全員が部屋を出ると市長と自分だけになった。
「それで、話してくれるんですね?」
「あなたは深く知っているからあなたには話すわ」
「と言うことは元大佐? それとも少佐?」
「ロバート・エルフマン博士よ」
 その答えにはジークは驚いた。
「では、その人物に会っていたんですね! 勿論、分かっていましたよね? そのご自身の行動が意味することを」
「あなたの信頼をまた失ったとは思うけれど」
「なら! 話すことはこれ以上なさそうですね」
 ジークはそう言って立ち上がった。
「待って頂戴! これには理由があるの」
「言い訳は結構です」
「言い訳じゃないわ!」
 そう言われ、足が止まった。つま先はドアの方を向いていた。
「あなたを信用して全てを話すわ。私の計画を」
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