探偵主人公

アズ

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7章 宝石箱

プロローグ

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 ロジャー・レイトンは目の前に座って同じ食事をとるカーソン・パロットを見た。かつては軍人で軍服を着ていた彼を目の前にしたら食事も喉を通さなかっただろう。だが、彼は変わった。昔よりは肉体も落ちたのか、昔着ていた軍服のサイズはもう着ることは難しいだろう。かく言う私も人のことを言えたものではないが。
「なぁ、パロット。周りは君を未だ大佐と呼んでいるそうだが、そろそろやめにしないか? 私もあなたも退役した身だ。もう軍人じゃない。大佐なんておかしいだろ?」
「私の心はまだイギリス国旗がはためいている」
「分かるよ。私もだ。パロットの言ういずれまた世界に戦争が起きるという話し、あの占い師の言葉を信じる信じないは別として、確かに戦争はいつの時代だって引き金はあるし、それがいつ勃発するかは誰にも分からない。だけどな、あの研究の進化薬はあれはないぜ。あんなものを実用させたいのか?」
「少佐が死んだ」
「え?」
「バーソロミュー・ムーア少佐だ」
「あぁ……知っているよ。残念だ。だが、何故少佐は死んだんだ? 新聞を読んでも何が真実なのか分からない。嘘だと信じたい。だが、これだけは私でも知っているぞ。あなたを信用していた、彼はだ。どうなんだ?」
「少佐の死を無駄にするわけにはいかない。進化薬は単に使い道が一つと限ったわけではない。動物にも使えるし、兵士に使えないならクローンを生み出し、進化薬を投与すればいい」
「何を考えてるんだ! クローンだって? そんなことをすればただでは済まされないんだぞ」
「あなたは分かっていない。もう、既に研究は最終段階にきている」
「まさか! やってしまったのか!?」
「でなければ、ここまで大胆にはやっていないよ。少佐は自らの体で研究の成果を見せた。研究は成功している。それに、クローンもだ。わざと瀕死にさせ進化薬を連続投与させ、更に瀕死にさせ、また進化薬を投与する。そうやって繰り返すことで強靭な兵士をつくりあげることが出来る」
「バカバカしいぞ。人間の一人の強化に爆弾な予算をつけるより、むしろ大量に人を殺せる兵器を作った方がマシだ」
「その方がまだ人道的だとまだ思っているのか?」
「なに?」
「戦争事態、命を軽んじた人間の愚かさの象徴だろう。今更クローンや生物兵器でわめくな。どの国だってやっていることだ」
「いやいや、パロット。君はどうかしているよ。忘れたのか? 私達が戦争で戦っていた時、相手は人間だった。私達も人間だ。怪物を作ってどうする?」
「いずれ、人間の戦争の相手は人間じゃなくなるよ。機械かもしれん。同じことだ」
「だとしたら私は機械をとるよ」
 すると、パロットは少し笑った。
「博士も同じことを言っていた」
「ロバート・エルフマンか。彼は反対していたのか?」
「元々博士は兵器より単なる生物のその先を生きている内に見たいという好奇心で研究に没頭していたに過ぎん。それではせっかくの才能の持ち腐れだ。私が活用する手立てを用意した。だが、博士は最初こそ研究の資金を得る為ならと協力的だったが、最近は博士がやり出したくせに自分の研究に疑問を持つようになった」
「まだ、完全にイカれた科学者ではなかったわけか。なら、もうやめにしないか」
「どうして?」
「どうしてって……」
「お前なら分かる筈だ。負傷し助からないと分かった兵士にもしチャンスを与えられるとしたら、あの進化薬しかない」
「単なる強化ではなく治療という意味か。にしても君は少し行き過ぎている気がするね」
「どうして理解出来ない」
「言いたいことは分かった。同じ戦場の経験者だ。お前がそれにこだわった理由を知ったら無理もないのも分かる。だが、感心はしないな。その間に大勢を犠牲にしている。確か……リスクをおかさなければ得られない……お前の口癖でお前の考えだったな。確かにその通りだ。だがな、説教になるが、一線をこえちゃいけないものもある。綺麗事かもしれないが、あんたはそれをこえたんだ」
「残念だ。退役しても我々には我々の出来る事がある。それは成すべきことだ」
「出来ることなのにやらないのは怠慢か? 違うな。間違ってるからやらないのさ」
 パロットはため息をついた。
「悪いがお前をかくまってやれる程俺は顔が広くない。その辺はむしろあんたに負けるよ。それより誰なんだ? さっきからそばでずっと立っている奴は?」
 その男は軍服姿だった。
「少佐の弟だ」
「弟!? 弟がいたのか!? なら、兄弟揃って入隊してたのか。こりゃ驚いた。あぁ……すまない。少佐の件は本当に残念だった」
 しかし、弟は一言も返事をしなかった。ただ、直立不動だった。
「お前の命令か? やめさせろ。見たところ階級は大尉のようだが、あんたはもう大佐じゃないだろ?」
「私は命令などしていない。彼の判断だ」
「俺はそういうの嫌いだな」
「ワインは飲むか?」
「いや、もう帰るよ。フィッシュアンドチップスはもう食べ飽きた」
 レイトンはそう言って立ち上がった。
「かくまって欲しいのは私ではない」
 パロットは急にそう言った。
「それじゃ誰なんだ?」
 レイトンはそう訊いた。
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