探偵主人公

アズ

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7章 宝石箱

04 登場人物

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 正直なところ、ここまで来ると事件は起きそうな気がする。
 まずは、招待客に注意せねば。
 最初に現れたのは、ニコラス・ユエン。黒いパーマヘアーに丸い縁の髭を生やした男性は歴史学者だ。宝石の出資者の一人で1割を負担した。ブルーダイヤの歴史を研究するのに大変貴重な資料として出資に参加した。ブルーダイヤは展示会で展示も予定されるが、ニコラスはその研究に自分を優先してもらう為でもある。ただし、宝石が趣味というわけではなさそうだ。彼には宝石のついたものが見当たらない。指輪すらしていないところを見ると彼は独身だ。興味があるのは恐らくブルーダイヤだけだろう。
 次に訪れたのがブルーダイヤをいずれ展示する際の館長のフォーブスだ。年齢はネイスミスとたいして変わらない。彼には指輪があり、そこにはダイヤがある。だが、身につけている宝石と言えばそれぐらいで、ネイスミス程の派手さはない。
 遅れて現れたのはネイスミスの妻のアリス。彼女は指輪は勿論のこと細い首には宝石輝くネックレス、小さな腕時計もキラキラと輝き宝石があしらわれている。彼女も宝石に目はないようだ。盗まれたと聞いていたが、無事だった宝石もあったようだ。
 となると、犯人は宝石を全て取らず、目についたものだけ盗んで逃亡したということだろうか? それともその宝石は新たに購入したものなのか、他の場所に保管されてあったものなのか…… 。
 因みに奥さんは主人より若く見えた。そう、5つか、もしかすると10歳若いのかもしれない。
 奥さんは二階の自室にいたようで、主人の横に立った。仲のいい夫婦なのだろう。趣味もお互い合いそうだった。
 次に現れたのはアーチボルト・ホイットフィールド。宝石商だ。残りの1割を出資した人物で、ネイスミスはお得意様になる関係。ブルーダイヤがオークションにかけられる話しをし購入を誘った人物になる。売り手側とお金と物のやりとりは彼が行い、ブルーダイヤをここまで運んだ。
 宝石商のホイットフィールドもネイスミスの夫婦も宝石については真贋しんがんを持っていると思われる。
 もし、犯人が今日狙い、ダイヤを偽物とすり替えたとしても、恐らくこの中にいる誰かが気づくだろう。
「全員が揃いましたな。今日は皆さんお集まりいただきありがとうございます。勿論、皆さんの目当てであるブルーダイヤは厳重に保管されてあります。今回は更に警部さんに有名な探偵さんまでいますので、何も起こらないでしょう。明日にはブルーダイヤはここから移動し、数日中には展示が再びされることになります。皆さんは特別に先にブルーダイヤを見ていただこうと思います」
 それから雑談を終え、簡単な食事が振る舞われた後、遂にそのダイヤのお披露目というところで、玄関に誰かがノックした。
 執事が玄関に向かった。全員はそれまで食堂に集まっていた。
 執事が踵を返すと、主人の方へ向いてから「ワトキンス様がいらしていますが、いかが致しましょうか?」と訊いた。
 すると、アリスは顔を青ざめたように主人の腕の裾を引っ張った。
「ああ、分かっている」
 主人も困った顔をしていた。
 と、そこに玄関先で待たされていた筈のワトキンスは勝手にあがり込み、皆のいる食堂まで姿を現した。
「あら、キャロウェイ。客人を玄関先で待たせるなんてどういうことかしら? そうでしょ? アリス」
 鋭い目をした女性からは強い香水の匂いがした。アリスは「え、ええ……」と答えた。
 だが、誰がどう見ても困惑した表情だ。どうやら、ネイスミス家にとってこの女性は要注意人物らしい。
「大変申し訳ございません」
「一番長く働いているんだからもっとしっかりして頂戴。あなたのふるまいが、家の名に傷がつくんですからね」
「はい、肝に銘じます」
 ワトキンスはふん! という態度をとった。それに呆れたネイスミスは「私の執事をあまり虐めないでくれ」と言った。
「あら、使用人に優しいのですね」
「キャロウェイはこの家の為によく働いてくれている」
「キャロウェイ、聞いたわね? 主人があなたをかばっているんだから、あなたもそれにこたえなさいよ。分かったわね?」
 ワトキンスの急な飛び入りにも関わらず、空気を一瞬で悪くするこの女の態度に周りもうんざりした顔をしていた。
 しかし、自分に都合の悪いものはこの女性の目には映らないようだ。
 ジークはこっそりと執事に近づき、名簿になかったその女性について訊いた。
「ワトキンス様はこの近くに一人でお住まいの方で、近所付き合いもあって奥様はワトキンス様に対してあまりむげには出来ないのです。しかし、本心ではワトキンス様のことを嫌っています」
「招待されていなくてもこうして来るのですか?」
「時折あります。どうやって聞きつけたのかは未だ謎のままです」
「なる程……」
 ジークはそう聞きながら飛び入り参加の女性を見た。警部も同じく彼女に注意していた。
 因みに、アリスとワトキンスは歳は近いようだ。
「あら、皆さんはもうお食事は済まれたの?」
「ああ、それじゃワトキンスさんの分もご用意致しましょうか?」
「あら、本当? 飛び入りで申し訳ないのに。それじゃ、そうしてもらえるかしら?」
「パクストン」とアリスが言うと「畏まりました」と返事をし食堂から離れた。
 皆はうんざりし、食事を終えたホイットフィールドは煙草を始めようとした。すると、ワトキンスは「私は煙草の臭いが嫌なんです」と言った。
「申し訳ない」とホイットフィールドが急いで煙草をしまおうとすると、ネイスミスは「なら、書斎を使うといい。私もそこへ行く」と言い、二人は一旦二階へあがり書斎に向かった。
 執事はカッパを着ると外に出て庭に育ててある小さな畑で実がなっているものを収穫しに行った。
 どうやら外は雨が降り出してきたようだ。
 食堂にはジークと警部、ワトキンス、それから仕方なくワトキンスに付き合うアリスとニコラスだけが残った。その間に家政婦はキッチンへ、執事は庭へ、主人と宝石商の二人は書斎へ向かった。
 庭は食堂の窓からも覗け、執事が仕事している様子が伺えられる。
 暫くしてから、食事を持ってきたパクストンが食堂に現れ、ワトキンスに提供すると、入れかわるようにホイットフィールドが戻ってきた。
 それから更に時間が経過し、予定より30以上遅れてからワトキンスも食事を終えたところでようやく本題のお披露目となった。
 しかし、今度はどういうわけかネイスミスが食堂に現れなかった。
「ネイスミスさんはまだ書斎かね?」とニコラス・ユエンは最後一緒だったホイットフィールドに訊いた。
「どうだろ? 戻ってきたところを見ていないな」
「でしたら、私が呼びに行きましょう」と執事が言ったので、ジークは警部と顔を見合わせ「私達も一緒に向かいます」と言って階段を3人であがり、書斎へと向かった。
 書斎のドアは閉まったままで、執事がそのドアをノックする。
「ネイスミス様? 皆様がお待ちです」
 しかし、執事がそう言っても返事はなかった。
 執事は「失礼します」と言ってドアを開けると、そこには大量の血が床に飛び散り椅子にもたれかかった状態で全く動く気配がないネイスミスがそこにいた。
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