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7章 宝石箱
03 金庫
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邸宅は立派だった。素晴らしい庭もあり剪定されてある。
中に入ると、玄関から先は階段と、奥に進む通路がある。
執事は奥へ案内した。キャロウェイはこの邸宅に10年以上執事として働いている。その前は他のお屋敷で使用人(下僕)として働いていた。ここへは求人を見て選んだのがきっかけだったようだ。
移動中も彼は主人について語っていたが、恐らく自分がつかえる最後の主人になるだろうと話していた。
働けるとしてもあと数年。その後は引退し奥さんと一緒にいる時間を増やしたいのだとか。
奥には食堂に繋がる部屋がある。テーブル席は予め決められており、自分の席は執事に教えられた。
食堂の隣はキッチンがあり、そこでは家政婦が料理をしている。
家政婦のパクストンは6年以上ここにいる。キャロウェイは彼女の料理を褒めていた。パクストンの前は長く続かず3ヶ月で辞めた者までいた。原因は料理にあった。ネイスミスの口にどれも合わなかった為に次々とかわり、ようやくパクストンで落ち着いた。
小太りでエプロンをしているが、年齢はキャロウェイの5つつ下だとか。
食堂で主人のネイスミスと出会った。
「おお! これはこれは探偵のジークさんですね。紹介はいりません。新聞であなたのことは充分知っています」
「そのようですね」
年齢は50過ぎか。執事の用意した名簿には主人のことは書かれてなかった。招待客だけだと思って書かなかったのだろう。
髭は立派に整えられ、太った指には大きな宝石がキラキラと輝いている。更に腕時計にも宝石がついていた。
「宝石がお好きなのですね」
「宝石が嫌いな人なんていますか?」
「確かに、仰る通りです」
「執事からは話しは聞いているとは思うがお披露目は食後に行われる。それまでは厳重な金庫にしまっておいてある」
「失礼ですが、前回窃盗が入り奥様の宝石が盗まれたと聞きましたが、その宝石は金庫に保管されていなかったのですか?」
「いやいや、いくら家の中とは言え金庫には入れて保管してあったよ。ただ、金庫ごと盗まれてね」
「ああ、なる程」
「犯人はどうやって金庫から宝石を盗み出せたのやら。あの金庫は簡単には破壊出来ない程頑丈なんです。まぁ、今回はそうならないよう取り付けた金庫に保管してあります」
「まさか、この為にわざわざ?」
「ええ! 宝石を盗っ人から守る為です。流石の犯人も同じようには盗めないでしょう」
「そうですね。流石に同じとはいかない」
「執事はかなり心配しているのだが、探偵のジークさんも同じかね?」
「多少は」
「私はね、そもそも盗っ人が二度も同じ家を狙うとは思えないんだよ。その点はどう思う?」
「分からないというのが答えでしょう。断定は出来ませんし、同じ家が何度か狙われた、なんて言う話しも聞いたことがあります」
「本当!?」
「ですが、前回の反省から改善し、しかも今回は警部もいます。流石に前回と同じようにとはいかないでしょう」
「そうでしょう! それに事件を解決してきた探偵もいる。犯人からしてみればそれだけで近寄れない筈です」
「ただ、犯人が強行な手段を使わなければの話しです」
「え?」
「例えば強盗です。銀行強盗をするような犯人が世の中にはいるぐらいですから、それに比べれば難易度は下がる。勿論、銀行を狙った時程沢山は手に入らないでしょうが、大抵銀行は紙幣の番号を控えてあります。使用すれば痕跡が残りますが、宝石なら裏ルートを持っていればいくらでも犯人は現金に変えられるのです」
「まさかそんなことは……」
「さっきも言いましたが断定は出来ません。しかし、可能性は低いでしょう。むしろ、狙うとしたら金庫から宝石を出しているお披露目の時でしょうか。しかし、それは警部もいますし」
あれ? 今、自分でフラグたててしまったのか?
すると、遅れて警部が入って来た。
ジークは警部を見てから主人に「それでは全員が集まる前に一度金庫の場所を確認したいのですが」と言うと、ネイスミスは頷き「ご案内します」と言って一旦部屋を出ると、階段をあがり二階へと向かった。
二階には夫妻の寝室や浴室などがあるが、その中でも重要な場所となるのが書斎だった。
本棚に囲まれた部屋に到着するなり、ネイスミスは右側の本棚の真ん中当たりにある聖書に指をかけると、それを引っ張った。
すると、仕掛けが反応し一部の本棚が奥に押し込まれると、スライドされ、かわりに金庫が姿を現した。
「なる程、金庫は仕掛けが分からないとそもそも見つけるのも難しそうですね」
「ええ、勿論。この中に宝石が保管されてあります」
「見せていただくことは可能でしょうか?」
「ええ」
ネイスミスはそう言ってダイヤルを回し、金庫を開けると中からブルーダイヤモンドが出てきた。
「まさかこれって……」
「おや、ジークさんはご存知でしたか。ええ、呪われたダイヤと呼ばれる有名な宝石です」
「何故、そんなものをわざわざ手に入れようと?」と思わず警部は訊いた。
「伝説だからですよ。歴史的価値もある。確かに呪いという言葉で皆は恐れますが、私はそういったものには信じないものでして。探偵のあなたも不確かなものは信じないでしょ?」
「オカルトには興味はありませんが、不確かなのはそもそも立証が出来ないからではないでしょうか? 悪魔の証明がまさに有名な例えでしょう。信じるも信じないのも人それぞれでしょう」
「まぁ、それはそうですが」
見せ終わったところでネイスミスはダイヤを再び金庫の中へ戻した。
「因みに他の宝石が盗まれることはありませんか?」
「身に着けた宝石を気づかれずに盗めるなら」と言って笑みを見せた。
「なる程」
「ここにある宝石は今日身につけるものだけです」
「それでは後は何事もなく終わることを祈るだけですね」
それから、定刻の10分前になると招待客がぞろぞろと集まりだした。
中に入ると、玄関から先は階段と、奥に進む通路がある。
執事は奥へ案内した。キャロウェイはこの邸宅に10年以上執事として働いている。その前は他のお屋敷で使用人(下僕)として働いていた。ここへは求人を見て選んだのがきっかけだったようだ。
移動中も彼は主人について語っていたが、恐らく自分がつかえる最後の主人になるだろうと話していた。
働けるとしてもあと数年。その後は引退し奥さんと一緒にいる時間を増やしたいのだとか。
奥には食堂に繋がる部屋がある。テーブル席は予め決められており、自分の席は執事に教えられた。
食堂の隣はキッチンがあり、そこでは家政婦が料理をしている。
家政婦のパクストンは6年以上ここにいる。キャロウェイは彼女の料理を褒めていた。パクストンの前は長く続かず3ヶ月で辞めた者までいた。原因は料理にあった。ネイスミスの口にどれも合わなかった為に次々とかわり、ようやくパクストンで落ち着いた。
小太りでエプロンをしているが、年齢はキャロウェイの5つつ下だとか。
食堂で主人のネイスミスと出会った。
「おお! これはこれは探偵のジークさんですね。紹介はいりません。新聞であなたのことは充分知っています」
「そのようですね」
年齢は50過ぎか。執事の用意した名簿には主人のことは書かれてなかった。招待客だけだと思って書かなかったのだろう。
髭は立派に整えられ、太った指には大きな宝石がキラキラと輝いている。更に腕時計にも宝石がついていた。
「宝石がお好きなのですね」
「宝石が嫌いな人なんていますか?」
「確かに、仰る通りです」
「執事からは話しは聞いているとは思うがお披露目は食後に行われる。それまでは厳重な金庫にしまっておいてある」
「失礼ですが、前回窃盗が入り奥様の宝石が盗まれたと聞きましたが、その宝石は金庫に保管されていなかったのですか?」
「いやいや、いくら家の中とは言え金庫には入れて保管してあったよ。ただ、金庫ごと盗まれてね」
「ああ、なる程」
「犯人はどうやって金庫から宝石を盗み出せたのやら。あの金庫は簡単には破壊出来ない程頑丈なんです。まぁ、今回はそうならないよう取り付けた金庫に保管してあります」
「まさか、この為にわざわざ?」
「ええ! 宝石を盗っ人から守る為です。流石の犯人も同じようには盗めないでしょう」
「そうですね。流石に同じとはいかない」
「執事はかなり心配しているのだが、探偵のジークさんも同じかね?」
「多少は」
「私はね、そもそも盗っ人が二度も同じ家を狙うとは思えないんだよ。その点はどう思う?」
「分からないというのが答えでしょう。断定は出来ませんし、同じ家が何度か狙われた、なんて言う話しも聞いたことがあります」
「本当!?」
「ですが、前回の反省から改善し、しかも今回は警部もいます。流石に前回と同じようにとはいかないでしょう」
「そうでしょう! それに事件を解決してきた探偵もいる。犯人からしてみればそれだけで近寄れない筈です」
「ただ、犯人が強行な手段を使わなければの話しです」
「え?」
「例えば強盗です。銀行強盗をするような犯人が世の中にはいるぐらいですから、それに比べれば難易度は下がる。勿論、銀行を狙った時程沢山は手に入らないでしょうが、大抵銀行は紙幣の番号を控えてあります。使用すれば痕跡が残りますが、宝石なら裏ルートを持っていればいくらでも犯人は現金に変えられるのです」
「まさかそんなことは……」
「さっきも言いましたが断定は出来ません。しかし、可能性は低いでしょう。むしろ、狙うとしたら金庫から宝石を出しているお披露目の時でしょうか。しかし、それは警部もいますし」
あれ? 今、自分でフラグたててしまったのか?
すると、遅れて警部が入って来た。
ジークは警部を見てから主人に「それでは全員が集まる前に一度金庫の場所を確認したいのですが」と言うと、ネイスミスは頷き「ご案内します」と言って一旦部屋を出ると、階段をあがり二階へと向かった。
二階には夫妻の寝室や浴室などがあるが、その中でも重要な場所となるのが書斎だった。
本棚に囲まれた部屋に到着するなり、ネイスミスは右側の本棚の真ん中当たりにある聖書に指をかけると、それを引っ張った。
すると、仕掛けが反応し一部の本棚が奥に押し込まれると、スライドされ、かわりに金庫が姿を現した。
「なる程、金庫は仕掛けが分からないとそもそも見つけるのも難しそうですね」
「ええ、勿論。この中に宝石が保管されてあります」
「見せていただくことは可能でしょうか?」
「ええ」
ネイスミスはそう言ってダイヤルを回し、金庫を開けると中からブルーダイヤモンドが出てきた。
「まさかこれって……」
「おや、ジークさんはご存知でしたか。ええ、呪われたダイヤと呼ばれる有名な宝石です」
「何故、そんなものをわざわざ手に入れようと?」と思わず警部は訊いた。
「伝説だからですよ。歴史的価値もある。確かに呪いという言葉で皆は恐れますが、私はそういったものには信じないものでして。探偵のあなたも不確かなものは信じないでしょ?」
「オカルトには興味はありませんが、不確かなのはそもそも立証が出来ないからではないでしょうか? 悪魔の証明がまさに有名な例えでしょう。信じるも信じないのも人それぞれでしょう」
「まぁ、それはそうですが」
見せ終わったところでネイスミスはダイヤを再び金庫の中へ戻した。
「因みに他の宝石が盗まれることはありませんか?」
「身に着けた宝石を気づかれずに盗めるなら」と言って笑みを見せた。
「なる程」
「ここにある宝石は今日身につけるものだけです」
「それでは後は何事もなく終わることを祈るだけですね」
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