探偵主人公

アズ

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9章 銃弾と煙

08 誤算

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「さて、パロットにとってトラブル、誤算と言ってもいい事が起きました。それは元市長の裏切りと、カルメン市長の誕生でした。当初、リードしていたのはボーダンでした。人殺しも辞さない彼のやり方はカルメンよりもパロットにとってやりやすい相手の筈でした。対して、カルメンはパロットの前では従っているふりをしながら、実のところは裏切っていました。完全には支配出来なかったのです。ボーダンが捕まったきっかけは私でした。そして、私を送り込んだのは今は元市長でした。となると、元市長は自分の引退をいいことに最後にパロットに対して打って出たことになります。もう、政治家からも身をひいた彼なら出来たことです。パロットは政治家に対しても顔が広かった。逆にそれをよく思わない人もいた。パロットはそれに気づいたのです。きっかけは事件が起きた列車に私も偶然いたことです。だが、それは偶然ではなかった。だからです」
 全てを聞かされたミラーは頷いた。
「ああ、君の言った通りだろうね」
「あなたの誤算はどうです?」
「君は私がパロットと出会ってしまったことだと言いたいのかね?」
「私はあなたがそもそも進化薬に手を出さなければ良かったと思ったのです。あれが他の手に渡ったらどうなるかぐらい占いをしなくたって分かることでしょ?」
 ミラーは笑った。
「君は占いをまだ信じてはいないようだね」
「いえ、少し違います。どうでもいいんです。別に自分の人生がどうなるかは知りたいとは思いません。何故、知りたいと思うのかが分からないのです。知らないまま生きればいい。ほとんどの人はそうしてますよ」
「それはあなたが強いから。他の人はそうではない」
「占いに頼る人は弱い人ですか? いや、違う。彼らは占いが当たることを楽しんでいるだけです。つまり、単なる興味本位。本当に悩んでいるなら占い師にそもそも頼らないでしょう。それこそ、信頼出来る人物に相談するでしょう。何故、見知らぬ人物にそこまで信頼して人生相談をするんでしょうか? それが分からないのです。いえ、そういった例もあるでしょう。珍しいことだとは思いますが」
「あなたのような人間ばかりでは占い師はとっくに廃業している」
「確かに。ごもっともだ」
「私はね、君になら捕まってもいいと思ったんだよ」
「それで?」
「それでどうせならと、最後に自分のことを自分で占ってみたんだよ。確かに、私は君に捕まることになっていた。だからね、最後くらいは」
 そう言ってミラーはポケットから空の小瓶を床にわざと落とした。
「まさか!」
「自分の占いで死んでみようと思ったのさ」
 そう言うと、ミラーは目をつむり息を引き取った。
「分からん、何故ミラーは自殺をしたんだ?」
「占いに一番縛られていたのはミラー自身だった。占いは最初趣味だったんでしょう。本業は博士だ。しかし、当たる占いに彼女は遂に世界の未来まで見てしまった。それをパロットに思わず話してしまった。だから、最後は占いに縛られず、占い通りに死ぬのではなく、それとは違う方法で死ぬことで、自ら占いの結果を外したんです。ミラーは最後に自由を選んだんです」
「自由……か」
「警部はこれからどうします?」
「犯人は自殺した。そう処理するよ。お前さんは?」
「私は戻らせてもらいます」
「ああ、分かった」
 ジークはドアを開けて部屋を出た。
 警部はじっと、まるで深い眠りについたようなミラーの死を暫く見つめていた。
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