86 / 124
9章 銃弾と煙
07 推理と真相
しおりを挟む
ニューヨークでの出来事は世界中に広がった。
ジークはというと、警部と一緒にパリに来ていた。
そのパリにあるとある建物の中に入ると、若い女性がジークの顔を見るなり「どうぞ二階へ。ヴェラ・ミラーさんがお待ちです」と言った。ジークは「どうも」とお礼を言って階段へと向かった。
「どういうことだ?」と警部が自分に訊いてきたので「まぁ、直ぐに分かりますよ」と答えた。警部はその言葉を信用した。今更、私がつまらない嘘をつかないだろうと思っているのだ。これは信頼関係と言っていいだろう。ここまで来ると、警部の初対面の時の反応が嘘みたいに感じる。是非とも、この関係を前の警部に見せてやりたいぐらいだ。しかし、あの頃の警部は全く信じないだろう。そう思うと今の警部と比べ内心クスッと笑えてしまう。
部屋に入ると、最初に来た時とは全く変わらない部屋で、そこにヴェラ・ミラーがいた。
「そろそろ来るだろうとは思っていたよ」
「では、全てを話してくださるということですね?」
「その前に一つだけ確認させてくれ。何故、私だと分かった?」
「確かに、ロバート・エルフマンという名前は男の名前です。そして、博士ということも。実はこの人物について度々耳にするくせほとんど変わらない情報ばかりで新たな個人を特定するような情報はありませんでした。僅かな情報でロバート・エルフマンがどのような人物かを考えなければならない時、陥りやすいのはうっかり根拠もなく信じ込んでしまうということです。例え、ようやく得た情報もそれが本当のことか疑う必要がありました」
「探偵も警察も疑うことが仕事だからな。それで?」
「問題は、ロバート・エルフマンが本名かどうかでした。実は替え玉だったかもしれない。本当に探していた謎の人物は本当は名前も分かってはいなかったのではないか? もし、そうなると全ては振り出し……いや、何も分かっていなかったということになる。そうなると今まで得た手掛かりは失ってしまう。こうなった時、私は過去をもう一度振り返りました。実はかなり振り返る必要があったんです。最初の事件、ホテルで起きた殺人事件でした。私にとって初めてだった事件はなんとか解決することが出来ました。そして、切り裂きジャック事件の犯人も同時に判明したのです。切り裂きジャックはロンドンを恐怖に陥れました。ずっと警察が解決出来なかった事件の犯人です。そこに目をつけたのがその当時の市長でした。これがきっかけだったのです。次に市長から豪華列車のチケットを貰いました。報酬として。その列車で事件が起きました。そこにはなんと! 偶然にも時期市長を目指すボーダン議員が乗っていました。そして、そのボーダンは殺人を犯すのです。私は不幸だと思いながらもなんとか事件を解決出来ました。結果、ボーダンは逮捕され、二番手だったカルメンが一気にリードし市長に選ばれました。さて、問題は私にチケットを渡したあの市長はどちらを応援していたのか? もし、ボーダンでなくカルメンであった場合、これは偶然ではなかったのではないのか? まさに、新たな疑問が生まれたのです。さて、そんなカルメンは元大佐の言いなりでした。カーソン・パロットです。彼は自分の目的の為に政治や中には警察にまで影響力を及ぼしました。しかし、彼のやり方に疑問を持った方もいたことも事実です。実際、彼に関わる人物は狙われたりもしました。それが例の記者です。あの船に爆弾を仕掛けた意味は少佐を狙った殺害というより、パロットの息がかかった人物の抹殺、だからこそ船ごと沈没させてしまえばいいということになるわけです。さて、どこまで話しましたか?」
「まだ、私の話しをしてくれていないな」
「ああ、そうでした。パロットにとって重要なことは、生物兵器の完成と複製、そして占いでした。パロットは占いを信じ込んでいました。しかし、私からしてみればあのような男が熱心に占いを信じ込んでいることにかなりの違和感がありました。そして、私はそんな疑問をずっと抱えたまま、ずっと考えていました」
「それは疑問ではなく単に君の偏見ではないのか?」
「かもしれません。しかし、答えは違いました。そもそも、パロットが誰かに従う時は何か? いや、誰か? と質問した方がこの場合は早いのです。そして、その答えはロバート・エルフマンにいきつくのです。さて、そろそろ答えといきましょうか。あなたですよね? ロバート・エルフマンの本当の正体は」
「……」
「男性の名前を語れば相手は勝手に男だと思い込む。それがあなたの隠れみのだったんです。見事にやられました! 恐らく、これに気づけた人はそういなかったでしょう。問題は、パロットがあなたを重要視し、周りもあなたの占いを褒めた。いやいや、違う。そうではない。誰もが知っていた。パロットもパロットの部下も。だが、本当のことは公には出来ない。だから占いを褒めたんです。占いに一番遠そうなパロットまでもがです。それが一番おかしかった。私にはヒントでもありました」
「証拠はない」
「ええ。証拠はありません」
「話にならんな」
「しかし、決め手になるような発言を大尉はしたのです。殺すべきは僕たちを狂わせた占い師、大尉には兄弟がいました。僕たちというのは少佐のことでしょう。そして、占い師、それはあなたのことしかいない」
「……最初は若さを永遠に手に入れる為だった。進化薬は老いや病気にも働く。だが、私に接触したパロットは単に兵器を欲しがっていた。私は躊躇さえしたが、どうしても資金源が必要だった。しかし、どうやら私の発明した進化薬は人間には早過ぎたようだ」
「いえ、そうではありません」
「ん?」
「人間が手を出してはならないものでした」
ジークはというと、警部と一緒にパリに来ていた。
そのパリにあるとある建物の中に入ると、若い女性がジークの顔を見るなり「どうぞ二階へ。ヴェラ・ミラーさんがお待ちです」と言った。ジークは「どうも」とお礼を言って階段へと向かった。
「どういうことだ?」と警部が自分に訊いてきたので「まぁ、直ぐに分かりますよ」と答えた。警部はその言葉を信用した。今更、私がつまらない嘘をつかないだろうと思っているのだ。これは信頼関係と言っていいだろう。ここまで来ると、警部の初対面の時の反応が嘘みたいに感じる。是非とも、この関係を前の警部に見せてやりたいぐらいだ。しかし、あの頃の警部は全く信じないだろう。そう思うと今の警部と比べ内心クスッと笑えてしまう。
部屋に入ると、最初に来た時とは全く変わらない部屋で、そこにヴェラ・ミラーがいた。
「そろそろ来るだろうとは思っていたよ」
「では、全てを話してくださるということですね?」
「その前に一つだけ確認させてくれ。何故、私だと分かった?」
「確かに、ロバート・エルフマンという名前は男の名前です。そして、博士ということも。実はこの人物について度々耳にするくせほとんど変わらない情報ばかりで新たな個人を特定するような情報はありませんでした。僅かな情報でロバート・エルフマンがどのような人物かを考えなければならない時、陥りやすいのはうっかり根拠もなく信じ込んでしまうということです。例え、ようやく得た情報もそれが本当のことか疑う必要がありました」
「探偵も警察も疑うことが仕事だからな。それで?」
「問題は、ロバート・エルフマンが本名かどうかでした。実は替え玉だったかもしれない。本当に探していた謎の人物は本当は名前も分かってはいなかったのではないか? もし、そうなると全ては振り出し……いや、何も分かっていなかったということになる。そうなると今まで得た手掛かりは失ってしまう。こうなった時、私は過去をもう一度振り返りました。実はかなり振り返る必要があったんです。最初の事件、ホテルで起きた殺人事件でした。私にとって初めてだった事件はなんとか解決することが出来ました。そして、切り裂きジャック事件の犯人も同時に判明したのです。切り裂きジャックはロンドンを恐怖に陥れました。ずっと警察が解決出来なかった事件の犯人です。そこに目をつけたのがその当時の市長でした。これがきっかけだったのです。次に市長から豪華列車のチケットを貰いました。報酬として。その列車で事件が起きました。そこにはなんと! 偶然にも時期市長を目指すボーダン議員が乗っていました。そして、そのボーダンは殺人を犯すのです。私は不幸だと思いながらもなんとか事件を解決出来ました。結果、ボーダンは逮捕され、二番手だったカルメンが一気にリードし市長に選ばれました。さて、問題は私にチケットを渡したあの市長はどちらを応援していたのか? もし、ボーダンでなくカルメンであった場合、これは偶然ではなかったのではないのか? まさに、新たな疑問が生まれたのです。さて、そんなカルメンは元大佐の言いなりでした。カーソン・パロットです。彼は自分の目的の為に政治や中には警察にまで影響力を及ぼしました。しかし、彼のやり方に疑問を持った方もいたことも事実です。実際、彼に関わる人物は狙われたりもしました。それが例の記者です。あの船に爆弾を仕掛けた意味は少佐を狙った殺害というより、パロットの息がかかった人物の抹殺、だからこそ船ごと沈没させてしまえばいいということになるわけです。さて、どこまで話しましたか?」
「まだ、私の話しをしてくれていないな」
「ああ、そうでした。パロットにとって重要なことは、生物兵器の完成と複製、そして占いでした。パロットは占いを信じ込んでいました。しかし、私からしてみればあのような男が熱心に占いを信じ込んでいることにかなりの違和感がありました。そして、私はそんな疑問をずっと抱えたまま、ずっと考えていました」
「それは疑問ではなく単に君の偏見ではないのか?」
「かもしれません。しかし、答えは違いました。そもそも、パロットが誰かに従う時は何か? いや、誰か? と質問した方がこの場合は早いのです。そして、その答えはロバート・エルフマンにいきつくのです。さて、そろそろ答えといきましょうか。あなたですよね? ロバート・エルフマンの本当の正体は」
「……」
「男性の名前を語れば相手は勝手に男だと思い込む。それがあなたの隠れみのだったんです。見事にやられました! 恐らく、これに気づけた人はそういなかったでしょう。問題は、パロットがあなたを重要視し、周りもあなたの占いを褒めた。いやいや、違う。そうではない。誰もが知っていた。パロットもパロットの部下も。だが、本当のことは公には出来ない。だから占いを褒めたんです。占いに一番遠そうなパロットまでもがです。それが一番おかしかった。私にはヒントでもありました」
「証拠はない」
「ええ。証拠はありません」
「話にならんな」
「しかし、決め手になるような発言を大尉はしたのです。殺すべきは僕たちを狂わせた占い師、大尉には兄弟がいました。僕たちというのは少佐のことでしょう。そして、占い師、それはあなたのことしかいない」
「……最初は若さを永遠に手に入れる為だった。進化薬は老いや病気にも働く。だが、私に接触したパロットは単に兵器を欲しがっていた。私は躊躇さえしたが、どうしても資金源が必要だった。しかし、どうやら私の発明した進化薬は人間には早過ぎたようだ」
「いえ、そうではありません」
「ん?」
「人間が手を出してはならないものでした」
0
あなたにおすすめの小説
道化たちの末路
希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?
【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!
貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。
別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが
まっど↑きみはる
ファンタジー
「我が宿敵!! あなたに、私の夫となる権利をあげるわ!!」
そう、王国騎士『マルクエン・クライス』は、敵対していた魔剣士の女『ラミッタ・ピラ』にプロポーズを受けのだ。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる