探偵主人公

アズ

文字の大きさ
100 / 124
11章 探偵の勘

02 原稿

しおりを挟む
 後日。ホランド警部(今度は本当)が訪ねて来た。
「ジーク、いきなりですまないが急用でな、直ぐに見てもらいたい写真があるんだ」
 そう言って書斎に入ってきたと思えば、警部は胸ポケットから一枚の写真をジークに見せてきた。
 それは昨日訪ねて来た作家志望のリーガンだった。
「ああ、それなら昨日来ましたよ。この方がどうかしましたか?」
「なんだと、本当か!?」
「ええ」
「なんてこった……」
 警部は額に手を当てて困った顔をした。
「こいつはアメリカの元諜報員で無断でイギリスに渡ったのが分かり、アメリカからこいつの捜索願いを受けたんだ。で、探していると、どうもそいつはこの島に向かったらしいと分かって、それならまずはお前さんに聞こうと思ったんだ」
「元諜報員?」
「それで、こいつは何の用でお前んとこに訪ねに来たんだ」
 ジークはリーガンが自分が心変わりをするのを期待して置いていった原稿を警部に見せてから「小説を書くのに自分をモデルにしたいので許可が欲しいと来たんです」と説明した。
 原稿を読んだ警部は「なんだこれは。私も出ているじゃないか」と困惑した表情をした。
「元諜報員が何か? 作家にでも転職したってことなのか?」
「いえ、多分恐らく違うでしょう。この原稿を置いていったのも、警部が訪ねに来る前日に素顔で現れたのも、完全に私に対する挑戦でしょう」
「それじゃあれか? この原稿の内容は本当だと言うのか? となると……Xがその元諜報員!?」
「随分とナメられたものです。自分の手口をわざわざ本人が探偵の目の前で自慢するかのように話していたわけですよ」
「元諜報員だったとは言え、お前さんがそれに気づかないとはな。探偵の勘は当たらないか」
 ジークはテーブルを叩き「いいでしょう。その挑戦、受けてやりますよ!」と宣言した。
「しかし、証拠は残してないんだろうな。諜報員だった男がそんなヘマをするとは思わんし。そもそも何故ジークを挑発するような真似を?」
「私が幾つも事件を解決したのを知ったからでしょう。特にアメリカで起きた大事件にも私は捜査協力しましたし」
「それじゃ、奴はそんなお前に勝ちたいわけだ」
「彼は遊びゲームを見つけたようですね。諜報員の任務は彼にとって退屈だったんでしょう。かなりの自信家でうぬぼれのようだ。今回は私の負けで認めますが、必ず逆転してみせますよ」
「それじゃお前さんの勝利にベットするよ」
 そこに、ドアが勢いよく開きズカズカとマーニーが入ってきた。
「どうやらお前さんは今日も忙しいようだな。まぁ、こっちの件は俺達も調べるよ。それじゃ」と警部は言って、マーニーに会釈して部屋を出た。
「それで、今日はどうしたの?」
「もしかしてそっちも事件?」
「その言い方だと事件ですか?」
「出来ればそっちの事件は後回しでこちらの方を優先してもらいたいんだけど」
 そう言われたジークは考えた。
 此方の方は相手が元諜報員ともあって今まで相手にしてきたものより手強いと思われる。長期戦になるのなら、先にマーニーの方の事件を訊いた方がいいか。
「分かりました。では、そちらの話を聞きましょう」
「ありがとう。急を要するの。事件と言っても殺人ではないわ。行方不明の人を探すのを一緒に見つけて欲しいの」
「人探し?」
 マーニーは頷いた。
「行方不明の高齢の女性は認知症(現代の言い方で統一)で外出したっきり戻って来ないの。人探しの依頼を軽く受けたつもりが、時間制限があって。2日以内に見つけなきゃならないの」
「なる程。それ以上は厳しいってことで時間制限か。うん、分かった。でも、警察は?」
「警察には既に捜索願いは出してあるわ」
「それじゃ警察はその行方不明の高齢女性の特徴をもとに街の中を捜索してくれるでしょう。私達は他の方法で探そう」
「他の方法?」
「警察と一緒に探すより二手に分かれた方がいいでしょ? まぁ、その前に同居家族はいないの? 流石に一人ではないんでしょ?」
「ええ。息子が一人いるわ」
「では、まずその息子から行方不明になる直前の話を訊きましょう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

合成師

盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

処理中です...