探偵主人公

アズ

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12章 ハロウィン

05 トム

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 屋敷に戻った二人は、食堂の方に明かりが付いていることに気がついた。
 二人は首を傾げ食堂に向かうと、手前でいきなり食堂から子供達が飛び出してきた。
「わー! おめでとう!!」
「解けたんだね」
 その後ろでは保護者達が拍手をして祝った。
「やはり、他の人とは違うね」と言ったのは小太りの例の男の子だった。
「君はトム・イェールだね?」
「うん、そうだよ」
「君がこれを考えたのかい?」
「ううん、違うよ。皆で考えたんだ。でも、本当に凄いね。ねぇ、どうやったら沢山の事件を解決出来るような探偵になれるの?」
「言葉で説明するのは難しいかな。いつも上手くいくとは限らない」
「でも、事件を解決してきたのは本当でしょ?」
「ええ」
「ならさ、お願いがあるんだけど」
「お願い?」
「僕を探偵の弟子にして欲しいんだ」
「え……」
「駄目?」
 ジークは困った顔をした。
 どう断ればいいか悩んだからだ。しかし、隣にいたマーニーは「子供のお願いじゃ断れないね」と意地悪にそう言ったのだ。
「え、本当?」
「マーニー」
「本当のことでしょ?」
「まぁ……」
「わーい! かの有名な探偵の弟子だ!!」
 すると、周りの子供達は羨ましそうに「いいなぁー」と言い出した。
「流石に全員は無理だからね」
「別にいいじゃん。皆、あなたのファンなんだから、ファンサービスと思えば」
「あまり適当なこと言うならマーニーにも大変な分を一緒に背負ってもらうよ」
「あー、あー、あー、全く聞こえませーん」
「そう言えば師匠、お客さんが来てますよ」
「客?」
「書斎に行きましたけど」
「ホランド警部のことじゃない? それより皆どこに隠れてたの?」
「どこか当ててみてよ」
「うっ、生意気な」
「それなら屋根裏部屋じゃないかな?」
「え、正解。なんで分かったの?」
「そこはまだ見てなかったし、全員が隠れられるスペースもある」
「師匠には敵わないや」
「出来れば師匠はやめてくれ」
「それじゃ先生で」
「まぁ、いいでしょう。それよりマーニー、私は書斎に行ってくるよ」
「うん」
 ジークはポケットに手を入れ書斎へと向かった。
 徐々に子供達の賑やかな声が遠ざかり、ジークは静かな書斎へと入った。
 奥にある椅子に座り紅茶を飲みながら、ようやく現れたジークを待ち望んでいたかのように不気味な笑みを見せたのは、リーガンだった。
 ジークは彼を見て驚きもせず、冷徹な目でその男を睨んだ。
「あなたの仕業でしたか」
「さぁ? なんのことやら」
「ここに現れておきながらそれを言いますか」
「私が言っていることは証拠はあるのかということですよ」
「ああ……いえ、ありませんよ」
「でしょうね! これで私はあなたにまた勝ったわけだ」
「嬉しいですか? そんなに私に勝ったことが」
「そりゃあ当たり前ですよ。あなたは有名なんですから」
「正直分かりませんね、あなたの目的が。単に私に勝つことですか?」
「いいや、違う。これはデモンストレーションだよ」
「デモンストレーション?」
「つまり、私には大きな計画があり、今までのは私があなたに勝てるかどうかという勝負。しかし、これで私は証明できた。あなたに勝てるのは私しかいないと」
「それじゃ聞かせてもらえますか、大きな計画とやらを」
「今は話せない。いずれしよう」
「では、他の質問を」
「いや、駄目だ」
「勝手に上がり込んで紅茶を飲んだんです。その分の情報料はいただきますよ」
「ほぉ、私とやるって言うのか? しかし、いいのか? ここには大勢の子供が来ている。彼らに何かあったらどうするつもりだ」
「いや、あなたは何もしない」
 それを聞いてリーガンは大笑いした。
「いやいや、私に何か期待しているのだとしたら残念なことに私はその期待には応えられない」
「期待して言ったわけではない。あなたの性格上そうしないと言っているんです。あなたは事件が自分に辿り着かないよう意外にも慎重だ」
「意外にも?」
「意外なことは、あなたはこうして何度も私の前に現れている」
「確かに。続けて」
「そんなあなたがここで大量殺人を引き起こしますか? いや、しない。何故なら今までのように計画的なやり方ではないからだ。そうでしょ?」
「ふふふふ、なる程ね。確かに! いいだろう、認めよう。では、かわりに君の質問に一つだけ答えよう。しかし、私が答えたくないと思ったものは答えない」
「どうして子供達のゲームにちょっかいを出したんだ」
「それを答えてしまったら私が認めたようなものじゃないか」
「いや、ここでの話しは警察には言わないでおこう」
「私がそれを信じるとでも?」
「それは私が決めることではない。リーガン、お前次第だ」
 リーガンはジークをじっと見た。そして、何を思ったのか「いいだろ」と了承した。
「私はあの子どもが嫌いだ。この世は不平等だ。私はあの子ども達のように幸せではなかった。貧しい家庭でね。そういった家は沢山ある。だから、私はこの連鎖から断ち切る為に優秀になることに決めたんだよ。しかしね、私は優秀になりどんなこともしてきたし、手だって汚してきた。しかしだ! 誰も私には感謝しない。裏の顔って奴さ。一方、君はこの国では英雄の顔だ。私がなりたかった地位だ。しかし、どう間違えたのか、私はもう引き返しやり直すことも出来なくなっていた。君を恨むよ、探偵ジーク。君にとっては知ったことではないんだろうけどね。私は世の中を平等にしたいのさ」
「その為にあなたはこれから本格的に動くというわけですね」
「どうやら少し喋り過ぎてしまったようだ。紅茶代としては高いな」
 リーガンはそう言って立ち去ろうとした。
「リーガン、あなたの言う平等な世の中に自由はありますか?」
「何だって?」
「私は自由の為なら平等を犠牲にしても構わないと思ってます。そもそも、最初から平等ではない」
「だからそれを実現させようって話しじゃないか! 何がいけないんだ」
「人が求めたものは自由なんじゃありませんか」
「君は何も分かっていない! 世の中を見て見ろ! 健全に見えるか? どうだ?」
「健全とは言えませんね。しかしですよ、あなただって結局は優秀になって貧しい家庭から脱却しようとしたんでしょ? それって能力主義で平等主義じゃないでしょ? 平等になったら努力とか無意味じゃないですか。皆、同じにされてしまうんだから。あなたがしようとしている極端に偏った平等の社会の成れの果てがそれですよ」
「努力しても報われないならそれでも構わないさ」
 リーガンはそう言うと書斎を出て行ってしまった。
 ジークは追いかけようとしたが、しかし、しなかった。
 不平等な社会に彼は怒り、不満を持ち、そして彼の人格を変えた。恐らく、リーガンという男がいなくても、彼の代わりは現れるだろう。
「社会をよりよくしたいと皆が思っても、一つ考えの違いでうまくいかないものさ、リーガン」



(第十二章・完)
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