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ルナリア、禁欲三日目にして我慢の限界を迎える
しおりを挟む今日もつつがなく一日が終わろうとしている。
レーヴェ様は私と手を繋いで、にっこり微笑むと「おやすみ、ルーナ」と言った。
私はベッドの上で少しもぞもぞして、レーヴェ様をじっと見つめる。
大きな手をぎゅっと握ったり、もう一方の手を重ねたりしてみる。
落ち着かない。
「……どうしたの、ルーナ? 眠れない?」
「い、いえ……」
「もし、ルーナが嫌じゃなければ、教えて欲しい。君の望みは、できる限り叶えたいと考えているよ」
「ありがとうございます……」
私は、少し考える。
落ち着かないとか、物足りないとか、本当は──レーヴェ様に、はしたないことをしていただきたいとか。
そんなことはとても言えない。
まだ、二日目だもの。
あと一日、あと一日したら、レーヴェ様はお休みで、それまでは我慢して欲しいって、私がお願いしたのだから。
「ルーナ……?」
「わ、私……おやすみの、キスして欲しい、って、思って……」
私、すごく恥ずかしいことをおねだりしてしまったのではないかしら。
いつもはレーヴェ様から、「おはようのキスをして、ルーナ」と言ってくれて。
おやすみのキスは、数えきれないぐらいに、してくださる。
唇にも、顔にも、他のところにも、たくさん。
それがないのが寂しい。私、我儘ね。
いつもあったものがなくなってしまうのが、こんなに寂しいなんて。
(我儘な女って、思われないかしら……)
レーヴェ様のこと、好きなのに。触れて欲しくないと言ったり、触れて欲しいと言ったり。
恥ずかしくて心配で、頬を染めながらレーヴェ様を見上げる。
レーヴェ様は私をじっと見つめた後に、嬉しそうに目を細めた。
「可愛い……なんて可愛いんだろうね、私のルーナは。もちろん、しよう。私もしたいと、思っていた。けれど、こうして一緒にベッドにいて、キスをするのにその先をしないというのは、私にとってはかなりの苦行でね……理性が、ぐらついてしまう……」
「レーヴェ様、ごめんなさい、私……っ」
「君は謝る必要はないよ、ルーナ。私が少々、やりすぎたのがいけないのだから。ね、ルーナ。キスをして、少しだけ、君に触れたい。でも、少しだけ。ほんの、少しだけ。ルーナが傍にいるだけで私は満たされる……と言いたいところだけれど、やっぱり、触れたいと思ってしまって……」
「大丈夫です、レーヴェ様の、好きに……」
「ありがとう、本当にルーナは優しいね、私に優しい美少女……愛しているよ、ルーナ」
レーヴェ様が私の上に覆いかぶさる。
久々の、久々と言ってもたった二日ぶりの重みに、私はうっとりと目を閉じた。
良かった。
私、我儘だけれど、レーヴェ様も同じ気持ちでいてくれた。嬉しい。
「ん……」
掠めるように唇が触れる。
啄むような口付けを何度かされて、胸が高鳴る。
それだけじゃ物足りなくなって、私は薄く唇を開いた。レーヴェ様の舌がぬるりと口の中に入ってきて、舌を絡めとられる。
私の腰の括れや、脇腹を、レーヴェ様の大きな手のひらが撫でる。
ただそれだけなのに、体の芯の方があつくて、体をよじりたいぐらいに、うずうずする。
舌が擦られて、口の中をねっとりと撫でるようにされて、私は体をびくりと震わせた。
「ん、ん……っ、あ、ぅ……っ」
腰をゆったりと撫でていた手が、太腿に触れる。
気持ち良いのに、物足りない感じがする。心は幸せでいっぱいなのに、もっと、触って欲しいと思ってしまう。
絡まっていた舌が離れていく。幾度か、唇を触れ合わせて、レーヴェ様は切なげに微笑んだ。
「ルーナ、君は小さくて、どこを触っても柔らかくて、心地良いよ。好きだよ、ルーナ。愛してる」
「……レーヴェさま、ふ、ぁ……っ」
「今日は何もしないけれど、ルーナを撫でていても良い? 君を撫でているだけで、なんだかとても幸せな気持ちになれる。キスをして、抱き合って、君を撫でるだけでも……私は、幸せだと思える。ふふ、嬉しいな。私が、ルーナを愛しているから、だね」
「レーヴェ様ぁ……」
大きな体にすっぽりと抱きしめられて、背中や双丘や、太腿や、腕や手の平を熱心に撫でられると、体がとろりと蕩けていくような感覚がある。
私は目を閉じた。触られていると、変な声をあげてしまいそう。
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