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リュミエル、憑りつかれる
しおりを挟むちゅく、ちゅくと、舌が撫でられ、絡みつき、吸われている。
逞しい男性に抱きしめられている感覚はあるのに、薄く目を開いてもベッドの上には私一人だ。
お化けさんの姿は見えない。
でも、確かにそこにいる。
「ん、ぁ、あ……だめ……っ」
じんじん舌が痺れて、口の中が熱くぬめる何かでいっぱいになって。
重なる唇は、甘いような気がして。
身の置き場のなさに、私は手を伸ばして、お化けさんの実態もなければ見ることもできない体に抱きついた。
背中、硬い。
ごつごつしている。筋肉の隆起がそこにあって、私よりもずっと大きい、男性の体を手のひらから、抱きしめられて重なる体から感じる。
「んぅ、ぅ……っ、は、ぁ……ん、んっ」
口蓋を、舌先が撫でる。
溢れた唾液を飲み込むと、妙に甘くて頭がくらくらした。
腰骨から背中を、ぞくぞくしたものが這い上がる。
キス、気持ちいい。
相手は、お化けさんなのに。
「ぁ、ふ、あぁ……ん……!」
『可愛いな、リュミエル。可愛い。可愛い』
「ゃ、ああ……っ」
僅かに離れて、息継ぎをさせてくれる。
その狭間に、何度も可愛いと言われて、ぞくぞくが大きくなる。
「やだぁ……かわいく、ない、です……」
『こんなに愛らしいのに、手放した男も、手をこまねいていた男も、愚かだ』
「だめ……や、もお……きす、やぁ……」
『なぜ、いけない?』
「恋人と、するもの、だから……」
『はは……純真だな。では、俺がお前の恋人になろう』
「お、お化けなのに……?」
確かにそこにいるけれど、見えないのに。
お化けさんは自分が誰か忘れてしまって。
私は、名前も聞き取ることができなかったのに。
『俺はここから出られない。お前はここの家主。関係は、良好であるべきだ』
「ぅん、でも……」
『リュミエル。頷け』
「でも、私……」
『もっと、して欲しいだろう?』
低く囁かれると、お腹の奥が甘く疼く。
気持ちいいことを、さっきまで沢山されていた。
体がそれを覚えているみたいに。
もっと、されたいと訴えているようだった。
『リュミエル、素直になれ。誰もお前を、咎めない』
「ん、ぅん……してほしい……キスして、ぎゅってして、ほめて欲しい……」
素直な気持ちを吐露すると、涙がはらりと流れ落ちた。
私、ずっと誰かに──ワイアット様に、そうしてもらいたかった。
リュミエル、好きだよって。
愛してるって。
えらいね、いい子だね、もう大丈夫。
ずっと、一緒だから。
そうやって、婚約者として、そして妻として愛されたかった。
『いい子だ、リュミエル』
「お化けさ……ん、んっ」
さっきよりもずっと、激しく唇が重なる。
じゅっと、舌を吸われて、撫でるように舐られて、酸欠と気持ちよさで、閉じた瞼の裏側が白く濁る。
私は、お化けさんの体を掴んだ。
服を着ているようで、布を掴む感触がある。
「んんぅ……っ」
体がふわふわして、意識が高いところまで浮き上がって。
「あ、は……はぁ……」
『可愛いなぁ、リュミ。たったこれだけで、びしょびしょに濡らして』
「やぁ……っ、も、もぅ、今日は、だめ……お願い、です……っ」
足の間に骨ばった指が差し入れられる感覚がある。
ぬかるんだそこを擦りあげられてら、私はお化けさんに縋りつきながら、すんすん泣いた。
『嫌か?』
「いっぱい、したから……もぉ、つらくて……っ」
『まだ、していないが』
「しました、たくさん……だから、今日はもう、駄目です……」
『あぁ、分かった。まぁ、俺としてもお前に触れることができると分かったので、満足だ』
「ん……」
『リュミ。これからは俺がお前の傍にいる。ずっと』
激しい口付けも、怖いぐらいに気持ちよくなることも、そんなに嫌じゃなかった。
でも、優しくぎゅっとされて、髪を撫でられると、心も体もふわふわした。
ぼんやりその心地よさに身を委ねながら、目を閉じる。
ずっと傍に。
それってつまり、取り憑かれた、ということではないのかしら。
そう頭の片隅に疑惑が湧いたけれど、眠気が強くて、それ以上は何も考えられなかった。
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