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妄想の敵への宣戦布告
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シグルーンとクロヴィス様と心底どうでも良い話をしていると、教員の方がクロヴィス様の出番だと呼びに来てくれた。
控室からは、奥の扉を抜けると壇上に出られるようになっている。
入学式に参加することが一切できず、幼馴染の変態どもとの交流に貴重な時間を費やしてしまった。
クロヴィス様が壇上に上がる今がチャンスとばかりに、私は控室から出て、皆が並んでいる集会場のホールへと戻ろうとした。
けれど私が颯爽と逃げ出すより、クロヴィス様が私の体を抱え上げる方が早かった。
あれよあれよという間に私はクロヴィス様に抱っこされて、そのまま壇上へと向かう羽目になった。
もう、泣きたい。
助けを求めるようにシグルーンを見たら、頬を染めてうっとりしていた。
いつも小生意気な私が涙目で助けを求めているのが可愛くて仕方がないという顔だった。変態め。今度絶対にすりおろしてやる。
クロヴィス様にお姫様抱っこされた私は、集会場の奥に設けられている広い舞台の中央の壇上へと上がった。
一年生の皆様と先生方が私たちを見ている視線が痛い。心にざくざく刺さる。
私は両手で顔を覆った。もう泣きそうだわ。
何てこんな羽目に。クロヴィス様が乱心したせいだけど。なんでこんな目に。
クロヴィス様は王子様らしい美しさと精悍さを備え持った顔だちに真面目な表情を浮かべて、私をお姫様抱っこしたまま、堂々と壇上へと立った。
そうして、口を開く。
「ラシアン王家王太子、クロヴィス・ラシアンより、皆の入学に心からの祝いの言葉を述べさせて貰う。入学、おめでとう。皆が充実した学園での生活を送れることを願っている。私も在学生なので、困ったことがあればいつでも声をかけて貰って構わない。学園に通う生徒は皆、平等だ」
堂々とした声音だった。
こんな状況じゃなければ、クロヴィス様も立派になったわね、と感心していただろう。
こんな状況じゃなければ。
「一つ、私から大切な話がある」
人前では「俺」ではなくて「私」と言うのね、クロヴィス様。
背伸びをしているみたいで少し可愛いわね。
いたたまれない気持ちになりながらも、もうどうしようもないので、多少冷静になって私はクロヴィス様の話を聞いた。
分析する心の余裕まで出てきた。
元々私は、クロヴィス様の婚約者の座を狙っていたご令嬢の方々には嫌われているし、元々嫌われているのだからこれ以上嫌われようもないだろう、と開きなおりはじめてもいた。
大切な話とはなにかしら。学園生活での注意点だとしたら、私もちゃんと聞かなきゃいけないわ。
こんな状況だけど。
「リラ・ネメシアは私の婚約者。リラが雪の妖精のように愛らしく、美しく、可憐だからといって、邪な恋心を抱くことは、許されない。男子生徒の諸君は、リラの半径三メートル以内に近づかないように。近づくだけでも言語道断だが、二人きりになる、肌に触れる、といった行為があった場合、ラシアン王家の名の元に私が正式に決闘を申し込む。骨の一本や二本折られた上、内臓を潰される覚悟があるものだけが、私に挑め」
何言ってるの、こいつ……!
私は心の中で悲鳴をあげた。
入学式の壇上で言うようなことではないし、そもそも私に邪な気持ちを抱いている男子生徒などはいないし、そのような相手だっていないのよ。
クロヴィス様とシグルーンが幼馴染だったせいで、皆が遠慮してしまっていたのか、それとも私の事が怖かったのかは分からないけれど、男友達だってそもそもいないのよ、私には。
私は顔を隠した両手の指の隙間から、クロヴィス様を睨んだ。
それはもう、今すぐ、ご立派らしい局部をすりおろしてやる、という気持ちで睨んだ。
クロヴィ様は私をみつめて、何故か得意げに、そして誇らしげに、笑んだ。
殴ってやろうかと思ったけれど、流石に同級生の皆様の前でそれはできなくて、私は終始両手で顔を隠している恥ずかしがり屋の婚約者、みたいになってしまった。
そんなんじゃないのに。
控室からは、奥の扉を抜けると壇上に出られるようになっている。
入学式に参加することが一切できず、幼馴染の変態どもとの交流に貴重な時間を費やしてしまった。
クロヴィス様が壇上に上がる今がチャンスとばかりに、私は控室から出て、皆が並んでいる集会場のホールへと戻ろうとした。
けれど私が颯爽と逃げ出すより、クロヴィス様が私の体を抱え上げる方が早かった。
あれよあれよという間に私はクロヴィス様に抱っこされて、そのまま壇上へと向かう羽目になった。
もう、泣きたい。
助けを求めるようにシグルーンを見たら、頬を染めてうっとりしていた。
いつも小生意気な私が涙目で助けを求めているのが可愛くて仕方がないという顔だった。変態め。今度絶対にすりおろしてやる。
クロヴィス様にお姫様抱っこされた私は、集会場の奥に設けられている広い舞台の中央の壇上へと上がった。
一年生の皆様と先生方が私たちを見ている視線が痛い。心にざくざく刺さる。
私は両手で顔を覆った。もう泣きそうだわ。
何てこんな羽目に。クロヴィス様が乱心したせいだけど。なんでこんな目に。
クロヴィス様は王子様らしい美しさと精悍さを備え持った顔だちに真面目な表情を浮かべて、私をお姫様抱っこしたまま、堂々と壇上へと立った。
そうして、口を開く。
「ラシアン王家王太子、クロヴィス・ラシアンより、皆の入学に心からの祝いの言葉を述べさせて貰う。入学、おめでとう。皆が充実した学園での生活を送れることを願っている。私も在学生なので、困ったことがあればいつでも声をかけて貰って構わない。学園に通う生徒は皆、平等だ」
堂々とした声音だった。
こんな状況じゃなければ、クロヴィス様も立派になったわね、と感心していただろう。
こんな状況じゃなければ。
「一つ、私から大切な話がある」
人前では「俺」ではなくて「私」と言うのね、クロヴィス様。
背伸びをしているみたいで少し可愛いわね。
いたたまれない気持ちになりながらも、もうどうしようもないので、多少冷静になって私はクロヴィス様の話を聞いた。
分析する心の余裕まで出てきた。
元々私は、クロヴィス様の婚約者の座を狙っていたご令嬢の方々には嫌われているし、元々嫌われているのだからこれ以上嫌われようもないだろう、と開きなおりはじめてもいた。
大切な話とはなにかしら。学園生活での注意点だとしたら、私もちゃんと聞かなきゃいけないわ。
こんな状況だけど。
「リラ・ネメシアは私の婚約者。リラが雪の妖精のように愛らしく、美しく、可憐だからといって、邪な恋心を抱くことは、許されない。男子生徒の諸君は、リラの半径三メートル以内に近づかないように。近づくだけでも言語道断だが、二人きりになる、肌に触れる、といった行為があった場合、ラシアン王家の名の元に私が正式に決闘を申し込む。骨の一本や二本折られた上、内臓を潰される覚悟があるものだけが、私に挑め」
何言ってるの、こいつ……!
私は心の中で悲鳴をあげた。
入学式の壇上で言うようなことではないし、そもそも私に邪な気持ちを抱いている男子生徒などはいないし、そのような相手だっていないのよ。
クロヴィス様とシグルーンが幼馴染だったせいで、皆が遠慮してしまっていたのか、それとも私の事が怖かったのかは分からないけれど、男友達だってそもそもいないのよ、私には。
私は顔を隠した両手の指の隙間から、クロヴィス様を睨んだ。
それはもう、今すぐ、ご立派らしい局部をすりおろしてやる、という気持ちで睨んだ。
クロヴィ様は私をみつめて、何故か得意げに、そして誇らしげに、笑んだ。
殴ってやろうかと思ったけれど、流石に同級生の皆様の前でそれはできなくて、私は終始両手で顔を隠している恥ずかしがり屋の婚約者、みたいになってしまった。
そんなんじゃないのに。
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