あなたのつがいは私じゃない

束原ミヤコ

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気持ちいいこと

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 ディルグは大きな手で、メルティーナの後傾部をおさえた。

「ディル……っ、ふ、ぁ……」

  舌先で唇の狭間を撫でられて、メルティーナの脳裏に淫靡な口付けの記憶が過ぎる。

 ディルグを受け入れるために、薄く唇をひらく。
 ディルグは開いた唇から舌をメルティーナの口腔中に侵入させた。

「ん、ぁ……っ」

 甘えるような、小さな声が吐息と共に漏れる。
 奥に引っ込めた舌をさぐるように、ディルグの舌はメルティーナの口の中をまさぐる。

 口蓋をざらりと舐られて、頬の内側や、綺麗に並んだ歯列を舐る。
 ディルグの舌は大きくて、分厚い。先端が尖っていて、湿り気を帯びている。

 おずおずと舌をさしだすと、すぐにぬちゅりと絡められた。
 逃がさないとでもいうように、首を支える手や、腰を引き寄せる腕が力強い。
 メルティーナは所在ない手で、ディルグの服をきゅっと握った。

 長い舌が器用に、メルティーナの小さな舌に絡まり、粘膜を擦り合わされる。
 ぞくりとしたものが腰のあたりから背筋を這い、メルティーナは切なく眉を寄せた。
 体が熱い。妙な感じがする。
 あの時もそうだった。体の芯が蕩けていくような感覚があった。
 ちゅくちゅくと、響く水音が鼓膜を犯す。それだけでも、何度も背筋をぞくぞくした感覚が襲った。

 羞恥と混乱と息苦しさに、メルティーナはディルグの服を引っ張る。

「ん……っ、ん、ぁ……」
「可愛い、ティーナ」

 服を引かれて気づいたように、ディルグはメルティーナから唇を離した。
 空色の瞳が、爛々と輝いている。食い入るようにメルティーナを見つめる瞳に、唇を薄く開いて頬を上気させる、淫らな自分の顔が映っていた。

「可愛い、ティーナ、可愛い……もっと、したい」
「ディルグ様……も、もう、私」
「駄目か?」
「……駄目じゃ、ない、です」
「ティーナ、可愛い……」

 熱に浮かされたようにディルグは何度も「可愛い」と繰り返して、再びメルティーナの唇を塞ぐ。
 更に深く重なる唇に、メルティーナはこのまま食べられてしまうのではないかと感じた。

 自分のものではない唾液が、口の中で混じり合う。
 ざりっと口蓋を撫でられると、くたりと体の力が抜けてしまう。
 何度も角度を変えてメルティーナの口腔を味わっていたディルグがようやく離れた頃には、メルティーナは生理的な涙をこぼしながら、息も絶え絶えになっていた。

「ディルグ、さま……ごめん、なさい……変です、私……」
「何が、変なんだ?」

 メルティーナの濡れた唇を、ディルグがゆっくりと指で辿る。
 何度も長い間唇を重ねていたのに、その仕草はまだ足りないと言っているようだった。

「変、なんです……体、あつくて。幸せ、なのに、嬉しいのに、変、で」
「……ティーナ」

 この、奇妙な逃げ出したくなるような感覚は。
 それなのにもっと欲しいと、貪欲に求めるような感覚は、変ではないのか。

 メルティーナは、この感覚をディルグと口付けるまで知らなかった。
 口付けも交合も知識としてはあるが、経験はない。
 こんなふうに体がぞくぞくしてしまうのは、おかしいのではないかと不安になる。

 すがるようにディルグを見上げる。
 ディルグの浮き出た喉仏が、ごくりと大きく上下した。

「ティーナ、可愛い。食べたい。少しだけ。君を食べたい」
「ディルグ様、だ、だめです……ここは、外で……っ」

 メルティーナを自分の膝の上に座らせて、ディルグは背後から抱きしめる。
 器用な指先が、ぷつぷつとドレスの胸に一列に並んだボタンを外した。
 下着に指を引っ掛けられてずるりと降ろされる。
 まろびでた豊かな胸を、ディルグは優しく包み込むように撫でた。

 屋外で胸をさらけ出すなんて、いけないことだ。
 たまらなく恥ずかしくて、メルティーナは必死に隠そうとした。
 だが、その手は簡単に、ディルグによって押さえ込まれてしまう。

「ここには、誰も来ない。鍵付きの部屋よりよほど安全だ。それに、人獣は耳がいい。誰かくればすぐにわかる」
「で、ですが……」
「ティーナ、食べさせてくれ。我慢できない」

 いつもより低い声で耳元で囁かれると、元々入らなかった体の力が、ふにゃりと抜けてしまう。
 羞恥に震える指先を大人しく降ろすと、ディルグは両手でメルティーナのふたつの膨らみを包んだ。

 両掌の中で、膨らみはぐにぐにと形をかえる。
 胸をディルグに触られているという事実が、皮膚に触れる風が、メルティーナの羞恥を煽る。

 硬い皮膚が胸のいただきに擦れる。
 ディルグの息遣いを、鼓動を背中越しに感じる。
 揉みしだかれるたび、口付けの時と同じざわざわが体に広がっていく。

「ぁ……ぅ……っ」
「可愛い。君の声を聞くたびに、耳が蕩けそうになる。ずっと、食べたかった。君の指先を喰んだときから」
「ディルグさま……っ、わ、わたし……」
「大丈夫だ、ティーナ。気持ちいいのは、悪いことじゃない」

 これは、気持ちいいのだと、メルティーナは言われて初めて気づいた。
 なんて甘美なのか。
 なんて──いやらしくて、甘くて、愛しいのだろう。

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