あなたのつがいは私じゃない

束原ミヤコ

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はじめての、三度目の

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 ディルグはメルティーナを、自室に運んだ。
 王妃の部屋は夫婦の部屋はヴィオレットやフラウディーテが全て手を入れて調度品などを揃えていたために、入りたくないと、疎ましげに言いながら。

「感情を律しようと努力していた。だが、今だけは少し、幼稚なことを言ってもいいか?」
「ええ、ディルグ様」
「あのものたちの気配が、城に残っていることさえ嫌だ」

 メルティーナはそんなディルグに、困ったように微笑んだ。
 辺境から王都に向かう最中で、ジュリオに少しだけ聞いていた。
 ディルグはヴィオレットやフラウディーテの策略に嵌り、口に出すのも憚られるようなことをされそうになったのだと。
 それは未遂で終わったのだそうだが、ディルグの心に深い傷を残したのだろうと。
 ディルグはそのことには触れようとしなかった。メルティーナはそれでいいと思っていたし、ジュリオから聞いたことは心の中に閉じ込めておくことにした。
 
 ディルグの自室の手前で待ち構えていた侍女たちが、「メルティーナ様のお支度が」と言うのを「必要ない」とディルグは断る。

「火急の用がなければ、しばらくはここから出ない。フラウディーテやヴィオレットのドレスや宝石は売りに出し、メルティーナが王妃として過ごすための準備を」
「心得ております、陛下」

 侍女たちは礼をすると、それぞれの仕事に戻っていく。
 メルティーナを自室のベッドに降ろすと、内鍵を閉めた。

 急なことだったが、ディルグやメルティーナが広間にいる間に部屋を整えてくれたのだろう。
 寝室手前にあるリビングルームのテーブルには、水差しや酒やグラス、軽食などが置かれている。
 ディルグのベッドにはホワイトローズの花弁が散りばめられていて、エルダーフラワーの茶や、香炉が置かれて、かすかな甘い匂いを漂わせていた。

 ホワイトローズの花弁の中に降ろされたメルティーナの婚礼着が、ベッドにふわりと広がる。
 ディルグは邪魔そうに首のスカーフを引き抜いて、頭の金冠をベッドサイドのテーブルにことりと置いた。

「ディルグ様、湯浴み、を……」
「行儀のいい犬でいる時代はもう終わった。ティーナ、悪いが、待てない」
「……っ、ふ、ぁ」

 ディルグが覆いかぶさるようにして、メルティーナの体を抱きしめる。
 唇が触れ合い、すぐに舌が割って入ってくる。
 ディルグと肌を重ねるのは、二人で過ごした小さな家の時以来だ。
 あのあとの日々はとても目まぐるしく、再会の喜びや愛情を確かめ合う暇さえなかった。
 不意に、大胆なことをしてしまった記憶が想起されて、自分のことを恥ずかしく思い、メルティーナは頬を染めた。

 ディルグの舌がメルティーナの口腔内を弄る。
 長く分厚く、先の尖った舌がメルティーナの口蓋の裏側の凹凸を、くすぐるように撫でる。
 舌の裏側を撫でられて、舌を絡めとられる。
 口の中にある甘い飴玉でも探すようにちゅるりと吸われて舐られて、メルティーナはディルグの服を掴んだ。

「ん……ぁ……」

 長い口づけから解放されると、体からくたりと力が抜けていた。
 潤んだ視界に、メルティーナを愛しげに見つめるディルグの青い瞳が映る。
 悲しげでもなく、苦痛に歪んでいることもなく、彼は──艶やかに笑んで、嬉しそうに瞳を輝かせていた。

「ティーナ、ずっと触れたかった。滑らかな君の肌に、唇に。……君にはひどいことばかりをしてしまった。だから、君を……気持ちよくしたい。何もかも、忘れられるぐらいに」
「ディル……っ、ぁ、待って……っ」
「大丈夫だ。君の母上が用意してくれた、大切な婚礼着だろう。破いたりはしたくない。脱いで、ティーナ」
「……ん、はい」

 メルティーナの気持ちを察したディルグが、婚礼着を丁寧に脱がせてくれる。
 彼は白い布の塊のようになった婚礼着を、ソファの背にかけた。
 純白の下着とガーターベルト姿のメルティーナは、両手で体を隠した。
 全て見られることがわかっていても、羞恥心を取り去ることはどうしてもできない。
 
 ディルグの看病をしているときは必死だったから、どんな姿を見せるのも平気だったような気がする。
 今はあの時とは違う。
 まだ明るいうちから素肌を晒すのは、どうしても抵抗があった。
 一人で住んでいるときは、誰もいないのを確認してのことではあるが、屋外で水浴びを堂々とできるぐらいだったのに。不思議だ。

「ティーナ、綺麗だ。手をどかして、見せてくれるか?」
「……っ、はい」

 命じられるままに、両手を体から退ける。心もとなくて、シーツを掴んだ。
 昼下がりの日差しに、メルティーナの華奢ではあるが豊満な肢体が、白く輝いている。
 ディルグはその姿を見つめてもう一度「すごく綺麗だ、ティーナ」と呟いた。

「全部、舐めたい。指先から、俺しか触れることのできない場所まで。ティーナ、君の全てを食べたい」
「……はい。私の全部を、ディルグ様に、さしあげます」
「愛している、ティーナ」

 その声に、言葉に、視線に、熱を煽られる。
 ディルグの指がメルティーナの下着に触れる。胸を覆うものを取り払われて、唇が胸の頂に触れた。
 焦らすことなく舌先で舐られて、片方の胸の頂を指先で撫でられる。
 久しぶりの感覚なのに、すぐにメルティーナの体は快楽を拾いはじめた。

「ディルグ、様……っ」
「可愛いな、ティーナ。俺が触れると、すぐに硬くなる。ずっと食べたかった。ティーナ、君は以前、俺が君にひどくした時のことを、それでも嬉しかったと言ってくれたな」
「ん、は、はい……」
「あの時、俺は自分の快楽ばかりを追っていた。二度目の時は、君にばかり負担をかけてしまった」
「……ディルグ様、っ、ぁ……ゃ、あ……っ」

 唾液で濡れた乳首を、指先がつまみこりこりと扱く。
 返事をしようとしているのに、甘い声が漏れてしまい、メルティーナは恥ずかしくなって目を伏せた。

「ティーナ、優しくする。約束だ。だから、たくさん気持ちよくなってほしい。大丈夫、見ているのは俺だけだ。だから、君のはしたない姿を、全て見せて」
「……っ、ぁ、あぁ、ん、や、う……っ」

 ディルグの唇が肋骨の上の薄い皮膚を食む。
 舌が臍の窪みをたどり、内腿を舐めた。
 強く吸い付き、赤い跡を散らせる。乳首を弾いていた指が腰に触れて、唇が下着の上からふっくらとした媚肉に口付けた。
 薄い布の上から割れ目を舐り、小さな芽を押しつぶすようにされる。
 メルティーナは両手を口に当てる。
 甘い疼きが腰から背中に這い上がり、甘い声が唇から漏れてしまう。

「ティーナ、声が聞きたい」

 甘えるように言われると、ディルグの頼みには全部聞いてしまうのだと、わかっていた。

「ぅん……ぁ、あ、ディルグ様、そこ、やぁ……っ」

 メルティーナは口を塞いでいた手を外して、頭の下にあるクッションを、力の入らない指先で掴んだ。

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