すれ違わない二人の結婚生活

能登原あめ

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領地で新婚生活編

4 隣の領地の息子達 2

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 なぜ、おまえがいる!

「……ヴァル。おまえはいつもやることが遅いな」

 カーターが木の上で、リンゴをかじっている。

「ここ、うちの領地! なんでいるんだよ!」
「俺とおまえの仲じゃないか」

 どこが?
 
「ほらよっ!」

 上からりんごを投げられ慌てて受け取った。

「ほら、もう一つ」

 アンジーの分も投げてよこす。

「ありがとう」

 うっかりお礼言っちゃったけど、ここ、うちだし!
 りんご泥棒だし!
 とりあえず、アンジーに一つ渡した。

 ニヤッと笑ったカーターがアンジーの前に飛び降りる。

「かーわいいのな、若奥サマ♪ ヴァルなんかで満足できないだろ? いつでも俺が満たしてやるから。……なんなら、今すぐ」
「いえ、必要ありません」

 アンジーが、クール!
 いつの間に、母様みたいな態度を身につけたの⁉︎
 かっこいい!

「かっわいそうだなぁ。……粗末なのしか知らないんだもんな」

 粗末とか!
 大人になってからの僕自身『僕の俺』を知らないくせに!
 おまえはそんなに立派だったの、か……?

「カーター、もう帰れ! アンジーが汚れる!」

 思わず僕が投げてしまったりんごを楽々よけてニヤニヤする。

「相変わらず、投げるのヘッタクソだなぁ。……体だけ大きくなりやがってッ」

 確かに目の前に立つカーターは記憶より小さい。
 僕の鼻まで届かないくらい。
 思わず上から下まで眺めちゃったから、ますます機嫌を悪くして突っかかってくる。

「生意気な態度とりやがって! おまえなんて、いっつも俺たちの後をついてきては、びびって震えていたくせによぉ!」
「まぁ、小さかったからね」

 誰が一番、高い木から飛び降りることができるか度胸試しして、足の骨折ったのを見たら震えるよ。
 ありえないほうに曲がっていたからね……。

「高い木から飛び降りて足の骨折ったのって、カーターだったっけ? あの後、大丈夫だった?」
「くっ! 昔の話を持ち出しやがってッ」
「まぁ……」

 アンジーが痛ましげな顔をしてるよ。
 僕が、兄弟みんなで度胸試ししたんだって説明したら、笑うのを我慢してた。

「クッソ生意気な奴だ! 川で溺れそうになったところを助けたことだってあるのに!」
「それ……木陰で昼寝していたら、いきなりおまえが落としたんだ! そりゃ沈むよ!」

 水嫌いにならなくてよかったよ、本当に!
 川の中でアンジーに似た天使が微笑んでくれて、水が怖いと思わなかったんだ。
 あれは十歳だったかな。

「まぁ。ひどい……」
 
 アンジーがカーターに蔑んだ目を向ける。
 あれ? 母様そっくり‼︎

「くそっ! これを見ろ‼︎」

 いきなりカーターがズボンを下げた。

「きゃっ! 粗悪っ! 汚らしい!」

 目を覆ったアンジーが投げたりんごが無防備なカーターの股間に当たった。

「……ッ!」

 カーターがその場にしゃがみ込む。
 これは痛そう。
 僕の俺がむずむずする。

「……アンジー、行こう」

 戸惑う彼女の手をつかんでその場を離れた。
 
 今回気づいたこと。
 母様の侯爵夫人教育すごい⁉︎
 だけど、カーターをこのままにしておくわけにはいかない。
 僕にだって考えがある‼︎
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