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領地で新婚生活編
5 平穏な日々のために
しおりを挟む領地でのんびり蜜月生活、ってなんだろう?
「お兄様、こちらもいかがですか?」
アンジーの兄、ジェイコブとはまあまあ親しくなったと思う。
しかし!
アンジーが久しぶりに会った兄にすっごくかわいい笑顔を浮かべているんだ!
あの笑顔は僕だけの笑顔じゃないのかなぁ‼︎
「いや、十分だ……ほら、そっちへ」
「え……? ヴァル? どうしたの?」
ジェイコブに気遣われた!
兄だからって余裕があるな?
僕だって、夫としてもう少し余裕が欲しいよ!
だけど、アンジーがかわいすぎて、好きすぎてだめなんだ!
「いや……なんでもない」
「そう?」
アンジーが何か言いたそうにしているけど、僕は今自分の中の醜い感情と闘っているところなんだ。
「……それじゃあ、私はそろそろ領地へ戻ります」
「寂しくなるわ……」
「また、イツデモ、来て下さい」
僕の言葉にジェイコブがほんの少し口角を上げる。
「……今回は一週間も滞在させてもらったから、次はうちのほうへもお越し下さい」
「はい、今回は助かりました。本当にありがとう」
「いや、アンジーのためだからね」
そうなのだ!
用があって呼んだのは僕だ。
海に面した伯爵領に住むジェイコブのつてを使って、カーターをしばらく船に乗せることができないか相談したのだから。
僕は漁船でもいいと思ったけど、話を聞いたジェイコブが、他国に軍船の関係者がいるから訊いてみると言った。
それからカーターの長兄夫婦協力のもと逃げられないよう調整して昨夜無事に出港した。
そういうわけで、すご腕のジェイコブはこの後伯爵領へと戻る。
「お兄様、お手数おかけしてごめんなさい」
「いや、これくらいなんでもない。……四男殿も礼儀正しい男になって戻ってくるよ」
そう言ってにっこりと笑顔を浮かべた。
うん。黒い笑みだ。
彼は敵に回しちゃ、いけないな。
わかっているけど焼きもち焼いちゃうんだ!
アンジーの兄だってわかってるけど!
「じゃあね、ヴァル。妹をよろしくお願いします」
「はい、任せてください」
僕が頷くと穏やかに微笑んだ。
その顔はアンジーとよく似ていて、兄妹だなぁと思う。
次はもう少し仲良くなりたいな。
そのうちアンジーの幼い頃の話とか聞かせてほしいし、もっと『お義兄さん』と呼んだほうが自分のためにも気持ちを切り替えられていいのかもしれない。
「見送りはいらないから、ここで失礼するよ」
アンジーが渡したほろ苦い飴の入った瓶を持って立ち上がる。
「道中気をつけて、お義兄さん」
僕の言葉にほんの少し口角を上げて笑った。
「アンジーの部屋はそのままだから、今度二人で泊まるといいよ」
お義兄さん⁉︎
いいの?
僕の俺が黙ってないよ!
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