すれ違わない二人の結婚生活

能登原あめ

文字の大きさ
7 / 44
領地で新婚生活編

5 平穏な日々のために

しおりを挟む


 領地でのんびり蜜月生活、ってなんだろう?

「お兄様、こちらもいかがですか?」

 アンジーの兄、ジェイコブとはまあまあ親しくなったと思う。

 しかし!
 アンジーが久しぶりに会った兄にすっごくかわいい笑顔を浮かべているんだ!
 あの笑顔は僕だけの笑顔じゃないのかなぁ‼︎

「いや、十分だ……ほら、そっちへ」
「え……? ヴァル? どうしたの?」

 ジェイコブに気遣われた!
 兄だからって余裕があるな?
 僕だって、夫としてもう少し余裕が欲しいよ!
 だけど、アンジーがかわいすぎて、好きすぎてだめなんだ!
 
「いや……なんでもない」
「そう?」

 アンジーが何か言いたそうにしているけど、僕は今自分の中の醜い感情と闘っているところなんだ。

「……それじゃあ、私はそろそろ領地へ戻ります」
「寂しくなるわ……」
「また、イツデモ、来て下さい」

 僕の言葉にジェイコブがほんの少し口角を上げる。

「……今回は一週間も滞在させてもらったから、次はうちのほうへもお越し下さい」
「はい、今回は助かりました。本当にありがとう」
「いや、アンジーのためだからね」

 そうなのだ!
 用があって呼んだのは僕だ。
 海に面した伯爵領に住むジェイコブのつてを使って、カーターをしばらく船に乗せることができないか相談したのだから。
 僕は漁船でもいいと思ったけど、話を聞いたジェイコブが、他国に軍船の関係者がいるから訊いてみると言った。

 それからカーターの長兄夫婦協力のもと逃げられないよう調整して昨夜無事に出港した。
 そういうわけで、すご腕のジェイコブはこの後伯爵領へと戻る。

「お兄様、お手数おかけしてごめんなさい」
「いや、これくらいなんでもない。……四男殿も礼儀正しい男になって戻ってくるよ」

 そう言ってにっこりと笑顔を浮かべた。 
 うん。黒い笑みだ。
 彼は敵に回しちゃ、いけないな。
 わかっているけど焼きもち焼いちゃうんだ!
 アンジーの兄だってわかってるけど!

「じゃあね、ヴァル。妹をよろしくお願いします」
「はい、任せてください」

 僕が頷くと穏やかに微笑んだ。
 その顔はアンジーとよく似ていて、兄妹だなぁと思う。
 次はもう少し仲良くなりたいな。

 そのうちアンジーの幼い頃の話とか聞かせてほしいし、もっと『お義兄さん』と呼んだほうが自分のためにも気持ちを切り替えられていいのかもしれない。
 
「見送りはいらないから、ここで失礼するよ」

 アンジーが渡したほろ苦い飴の入った瓶を持って立ち上がる。

「道中気をつけて、お義兄さん」

 僕の言葉にほんの少し口角を上げて笑った。

「アンジーの部屋はそのままだから、今度二人で泊まるといいよ」

 お義兄さん⁉︎
 いいの?
 僕の俺が黙ってないよ!
しおりを挟む
感想 195

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

醜女の私と政略結婚した旦那様の様子がおかしい

サトウミ
恋愛
この国一番の醜女である私と結婚したイバン様。眉目秀麗で数多の女性と浮き名を流した彼は、不祥事を起こしたせいで私なんかと結婚することになってしまった。それでも真面目な彼は、必死に私を愛そうと努力してくださる。 ──無駄な努力だ。 こんな色白で目と胸の大きい女を、愛せるはずがない。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...