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義兄の結婚編
3 一悶着
しおりを挟む結婚式の二日前。
ハリエットの呼んでいない母親がやってきた。
彼女の母親は金遣いが荒く、子どもには見向きもせずに若い愛人と遊び暮らしていたという。
ジェイコブの友人であり彼女の兄が、病に倒れた父親に代わり細々と領地を運営して、幼いハリエットが家政を学んでなんとか家の中を整えている状態だったらしい。
父親が亡くなると、男を連れ込んでハリエットの身に危険が及びそうになったことから、母親を追い出そうとしたものの。
逆に毎晩男を連れ込んで寝室から出て来なくなり、色事に疎いハリエットの兄にはどう対応していいかわからなかったという。
ジェイコブに彼女をどこか安全な場所へ出そうかと思うと相談があって、それならと結婚の申し込みをしたそうだ。
もともと面識はあったと言うから、もしかしたら恋が生まれていたのかもしれない。
時々お菓子を持って遊びに行っていたと言うし!
彼女の胃袋から先につかんだのかもね。
そうじゃなきゃ、二人の距離感がおかしいから。
それはともかく、そのすぐ後に若い男と金目のものを持ち出していなくなったらしい。
だけどどこかで聞きつけてきたのか、金の匂いで寄ってきたのか。
彼女の母親は男と別れたんだろうな。
僕だったら、一生に一度の結婚式だからすぐ追い返す!
愛する人を大切にできない家族なんていらないよ?
そもそも、それって家族なのかな?
「まぁ、すてきなところね。これから母親の私もここでお世話になるわ。シーズンが来たら、一緒に王都に連れて行ってね」
当然そうなるものだというように、朗らかに言う。
ジェイコブの顔をそっとみると、笑顔を浮かべていた。
怖い!
黒い笑みだ!
思わず隣にいるアンジーを抱きしめる。
「ヴァル?」
アンジーの顔を見ていたら落ち着いてきた。
あぁ、いい匂い。
僕を癒して。
ジェイコブが味方で本当によかった。
「あぁ、あなたがハリエットの? 邸内は今、雑然としていますし、お疲れでしょうから今夜落ち着いて泊まれる場所へこれから案内させますね」
にこやかだし、好意的な態度に見えるのが怖い。
「まぁ、助かるわ。実はものすごく疲れておりましたの。……でも、大切な娘の姿をまずはこの目で確かめないといけないと思って。……ハリエット、素敵な方とご縁があってよかったわね」
「……はい」
控えめに返事をするハリエットの肩をそっと抱き寄せて、ジェイコブは笑顔で使用人に指示していく。
「こんな機会だから、特別な部屋を用意いたしましょう。では、こちらはまかせてゆっくり休んでください」
ハリエットの母親は、満面の笑みでお礼を言い立ち去った。
きっと、ジェイコブのこと『甘っちょろい若造ね』って、侮っているんだろうと思える表情を浮かべて。
読み間違いは命取りなのに。
それから二人が小声で会話するのが聞こえた。
「ハリエット……式に参列してもらわなくていいよね?」
「はい、もちろんです」
「ちょっと遠くへ行ってもらおうと思うんだ。船で半年ほどかけて異国へ。きっと、その地が気にいるんじゃないかな」
「……はい。ジェイコブ様がなさることはいつも正しいですもの」
僕、怖いー!
でも、二人はとってもお似合いだ‼︎
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