103 / 190
#103 鰹節の味見と、新メニューの算段。その1
しおりを挟む
壱とサユリは食堂に戻る。
「じいちゃんただいまー。鰹節出来たー!」
ボルテージ高めに2階に上がると、茂造は食堂でゆったりと紅茶を飲んでいた。
が、鰹節と聞いたからか、カップを手にしたまま咄嗟に立ち上がる。
「何と! それは凄いのう!」
「サユリに時間魔法使って貰って、作って来た! これで朝は昆布と鰹の出汁で味噌汁とか和食とか作れるよ! で、サユリ、早速でごめんなんだけど、この鰹節、腐敗とかを止めてくれたら嬉しい!」
「解っているカピよ」
サユリは右前足を上げ、振る。
「これで大丈夫カピ。だが壱、食堂で出すのであれば、きちんと作らねばならないカピよ。味噌も昆布も鰹節も」
「うん、解ってる。問題は味噌だよな。出来るまで1年掛かるから」
壱が考え込むと、サユリも眼を閉じる。
「そうカピな……なら、初めは壱がこの世界に持って来たものを少しずつ我が増やして使うという形にするカピ。少量なら複製出来る事にしているカピからな」
「結構アバウトだな。それで大丈夫なの?」
壱が首を傾げて訊くと、サユリはふんと鼻を鳴らす。
「問題無いカピ。とりあえず壱がこの世界に来た時に、昆布、鰹節、味噌を持っていた事にしておけば、何の問題も無いカピ。あ、米もカピな」
「そっか。だったらそうだな、豚汁が良いかな、具沢山の。昼にスープ出してるだろ? 村人の人たちの味覚に合えば、ローテーションに入れられると思うんだよね」
壱が頷きながら言うと、サユリも頷いた。
「それは今朝壱が作ってくれたものカピな。うむ、なら大丈夫カピな」
「うん。今朝のにきゃべつも入れると、充分ボリューム出ると思う」
「うむ、ならまずは食堂の賄いで、従業員に味見して貰うカピ。それで満場一致なら、お試しで食堂で出してみて、評判が良かったらローテーションに加えるカピ」
「そうだな、うん。じいちゃん、良いかな」
「勿論じゃ。豚汁は旨いからのう。それとの、フレンチトースト、じゃったかの? あれも昼のメニューに入れたいんじゃが」
「あ、うっかりしてた」
壱がこの世界に来て間も無くボニーたちに出して好評で、昼のメニューにしようとしていたのだった。
「明日の昼からかの。儂とカリルに作り方を教えてくれの」
「解った。簡単だから、すぐに出来ると思う。ボニーさんたちに出した時にマユリにも教えたけど、すぐに作れたし」
「おお、そう言えばそうじゃったの」
「でもフレンチトーストをメニューに入れると、パンを焼いてるサントの負担増えない? 大丈夫?」
「大丈夫じゃ。そんなには増やさんしの。どのメニューもそうじゃが、限りはあるからの。ホットケーキは注文が入ってから種を作るから、小麦粉と卵が無くならない限りは無限とも言えるがの」
「そりゃそうか」
当たり前の事である。
「後、ロビンさんに鰹節削るやつ作ってもらった。早速少し削ってみようか」
となると、まずは洗わなければならない。刃を外す事になるが、巧く入れられるだろうか。
「じいちゃん、鉋の刃の調整って出来る?」
「やった事はあるぞい。どれ、木槌を持って来ようかの」
茂造が物置部屋に向かうと、壱は鉋台から刃と金属片を外し、箱ともども洗って行く。水分を布で丁寧に拭き取って。
茂造が木槌を持って戻って来たので、任せる。
「うむ、どれぐらい刃を出せば良いのかの?」
「鰹節ってかなり薄いよね。0.1ミリとかそんな感じ?」
「少し出せば良い感じかの。うむ」
茂造は鉋台に刃を入れ木槌で軽く叩いて嵌め込むと、刃の出方を確認し、鉋台の前や後ろを細かく叩きながら調整して行く。
「うむ、こんなもんでどうじゃろうかの」
「ありがとう。削ってみる」
壱は鉋台を受け取り、箱に嵌める。鰹節の表面を軽く布で拭き、さぁ、削ってみよう。
鰹節は頭側から削る。押す削り方と引く削り方があるが、壱は引いて削る方がやり易いと感じたので、尾の方を手前にして利き手の右で握る。
刃が奥に向かう様に削り器を置き、思い切って削ってみる。
鉋台の上で手前に引く様に動かすと、シュッシュッと乾いた音がする。何度か往復させて、鉋台を外すと、箱の中に薄く削られた鰹節がふんわりと積もっていた。
「わぁ、出来た……!」
「おお、鰹節じゃあ……!」
壱と茂造が箱を覗き込み、感嘆の声を上げる。
「じいちゃんただいまー。鰹節出来たー!」
ボルテージ高めに2階に上がると、茂造は食堂でゆったりと紅茶を飲んでいた。
が、鰹節と聞いたからか、カップを手にしたまま咄嗟に立ち上がる。
「何と! それは凄いのう!」
「サユリに時間魔法使って貰って、作って来た! これで朝は昆布と鰹の出汁で味噌汁とか和食とか作れるよ! で、サユリ、早速でごめんなんだけど、この鰹節、腐敗とかを止めてくれたら嬉しい!」
「解っているカピよ」
サユリは右前足を上げ、振る。
「これで大丈夫カピ。だが壱、食堂で出すのであれば、きちんと作らねばならないカピよ。味噌も昆布も鰹節も」
「うん、解ってる。問題は味噌だよな。出来るまで1年掛かるから」
壱が考え込むと、サユリも眼を閉じる。
「そうカピな……なら、初めは壱がこの世界に持って来たものを少しずつ我が増やして使うという形にするカピ。少量なら複製出来る事にしているカピからな」
「結構アバウトだな。それで大丈夫なの?」
壱が首を傾げて訊くと、サユリはふんと鼻を鳴らす。
「問題無いカピ。とりあえず壱がこの世界に来た時に、昆布、鰹節、味噌を持っていた事にしておけば、何の問題も無いカピ。あ、米もカピな」
「そっか。だったらそうだな、豚汁が良いかな、具沢山の。昼にスープ出してるだろ? 村人の人たちの味覚に合えば、ローテーションに入れられると思うんだよね」
壱が頷きながら言うと、サユリも頷いた。
「それは今朝壱が作ってくれたものカピな。うむ、なら大丈夫カピな」
「うん。今朝のにきゃべつも入れると、充分ボリューム出ると思う」
「うむ、ならまずは食堂の賄いで、従業員に味見して貰うカピ。それで満場一致なら、お試しで食堂で出してみて、評判が良かったらローテーションに加えるカピ」
「そうだな、うん。じいちゃん、良いかな」
「勿論じゃ。豚汁は旨いからのう。それとの、フレンチトースト、じゃったかの? あれも昼のメニューに入れたいんじゃが」
「あ、うっかりしてた」
壱がこの世界に来て間も無くボニーたちに出して好評で、昼のメニューにしようとしていたのだった。
「明日の昼からかの。儂とカリルに作り方を教えてくれの」
「解った。簡単だから、すぐに出来ると思う。ボニーさんたちに出した時にマユリにも教えたけど、すぐに作れたし」
「おお、そう言えばそうじゃったの」
「でもフレンチトーストをメニューに入れると、パンを焼いてるサントの負担増えない? 大丈夫?」
「大丈夫じゃ。そんなには増やさんしの。どのメニューもそうじゃが、限りはあるからの。ホットケーキは注文が入ってから種を作るから、小麦粉と卵が無くならない限りは無限とも言えるがの」
「そりゃそうか」
当たり前の事である。
「後、ロビンさんに鰹節削るやつ作ってもらった。早速少し削ってみようか」
となると、まずは洗わなければならない。刃を外す事になるが、巧く入れられるだろうか。
「じいちゃん、鉋の刃の調整って出来る?」
「やった事はあるぞい。どれ、木槌を持って来ようかの」
茂造が物置部屋に向かうと、壱は鉋台から刃と金属片を外し、箱ともども洗って行く。水分を布で丁寧に拭き取って。
茂造が木槌を持って戻って来たので、任せる。
「うむ、どれぐらい刃を出せば良いのかの?」
「鰹節ってかなり薄いよね。0.1ミリとかそんな感じ?」
「少し出せば良い感じかの。うむ」
茂造は鉋台に刃を入れ木槌で軽く叩いて嵌め込むと、刃の出方を確認し、鉋台の前や後ろを細かく叩きながら調整して行く。
「うむ、こんなもんでどうじゃろうかの」
「ありがとう。削ってみる」
壱は鉋台を受け取り、箱に嵌める。鰹節の表面を軽く布で拭き、さぁ、削ってみよう。
鰹節は頭側から削る。押す削り方と引く削り方があるが、壱は引いて削る方がやり易いと感じたので、尾の方を手前にして利き手の右で握る。
刃が奥に向かう様に削り器を置き、思い切って削ってみる。
鉋台の上で手前に引く様に動かすと、シュッシュッと乾いた音がする。何度か往復させて、鉋台を外すと、箱の中に薄く削られた鰹節がふんわりと積もっていた。
「わぁ、出来た……!」
「おお、鰹節じゃあ……!」
壱と茂造が箱を覗き込み、感嘆の声を上げる。
10
あなたにおすすめの小説
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari@七柚カリン
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる