【R18】特攻E小隊

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第二章 E小隊・南方作戦

第十九話 ワイズマン

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 つやつやした顔で戻ってきたコトブキが先頭に立ち、下から上がってくる敵兵を吹き飛ばしながら、動力室からの狭い隠し通路を下っていく。何があったのかだいたい想像はつくが今は非常事態だからと、カレンはあまり考えないようにした。
 エルもメグも意識があって、何とか自力で動けてはいるが、体内にマナがほどんどなく体力も消耗しているためか、まったく元気が無く言葉も少ない。
 自分もそろそろマナ量が残り少なくなってきており、ヒールも節約しないといけない。

 一瞬、コトブキの『な・か・だ・し』という言葉が思い出されるが、それだと私も小隊長と……(いやいやいや、それ、絶対ないから! )とすぐに脳内否定する。
 でも、コトブキは、いわばその道のプロなのでまあいい? として、さっき監房の壁を破ったとき、小隊長とエルちゃんはどこまで……そう思うと、ちょっと胸がドキドキしてしまう。

「突破口が開きましたえ。皆さん、用心して進んでな!」
 どうやら、コトブキが潜水艇のあるホールに出たらしい。カレンも、エルとメグと手をつなぎながら、前の推し兵に続いて降りていった。
 潜水艇のあるホールは、来た時は夜だったせいか真っ暗だったが、今は薄明かりが差し込んでいる。あれにさえ乗り込めれば……でも、小隊長はまだ後ろかしら? などど考えつつ、通路からホールに出ようとしたその時、

 ダダダダダダダーン!

 激しい銃声が連続して響き、カレンの足元にあまたの弾丸が撃ち込まれた。

「ひゃっ?」
 すぐに身をかがめ、ホール側の様子を探る。
 すでにホールに出ていたコトブキと推し兵達は、潜水艇の前で隠れるところもなく地面に伏せている。

「はい、皆さん。ここでチェックメイトです。もう少しでしたのに、残念でしたね。武器を捨てて投降して下さい。そうすれば命まではいただきません。あっ、つまらないことは考えないで下さいね。こっちからはそちらを一方的に撃ち放題ですので」

「……ワイズマン……」
 うしろで伏せていたエルが彼をそう呼んだ。

 落ち着いてホール内をみると、壁の二階くらいの高さのところに、細長い通路が作られていて、敵兵が銃をもって並んでいる。昨夜侵入したときは暗くて気づかなかった。まったく国家情報部もあてにならないわねと、カレンは悪態をついた。

「コトブキさん、これはダメですね……」
「そうでんな、マイケルはん。命あっての物種ざんす。それにしてもこれほどまでに裏をかかれるとは……悔しいでありんす」
 コトブキと推し兵たちが両手を上げて立ち上がり、投降の意志表示をした。

「えっと……あれ、少し足りませんね。まだ通路に残っている人がいるようですが、早く出てきて下さい。わたし、あんまり辛抱強くないんで宜しくお願いします」

 くそ! 出ていくしかないか。小隊長はまだ追い付いてこないし、私たちだけでは何も抵抗できない。カレンも観念して、エル、メグとともにホールに出て行った。

「おお、エルさん。そこにいらっしゃいましたか。先ほどのディープキス。堪能させていただきましたよ―。でもせっかくなら、ローアイさんとちゃんとセックスして、監獄ごと吹き飛ばしてしまえば、こんなことにはならなかったと思いますけどね」

「……くそ虫……」
 へえ、エルでもこんな言葉使うんだ……とカレンは思ったが、そうかキスでマナ補給したんだ。中出しはしていない……やだ、こんな状況で私、何ホッとしてるんだろ。

「それじゃ、エルフさん達以外はあんまり用がないし、連れて行くのも面倒なので潜水艇に入っててもらっていいですか。ああ、ご心配なく。どうせ海底の出口はふさいでありますんで逃げたりはできません。エルフさんたちはこちらに集まって下さい」そう言いながら、ワイズマンと敵兵達がホールに降りてきた。

「エルフさんたちは、これから本国のほうへ移送する準備が出来て……あれ、ローアイさんは?」
 その瞬間、ワイズマンの周りの兵達が銃を構え直す。
 多分薄暗がりだったので、近づくまで小隊長がいないのに気付かなかったのだろう。

「小隊長は、まだ動力室あたりにいると思います」
「おや、あなたは確か……カレンさんでしたっけ。ローアイさんは負傷でもされたのですかね。まあ、あの人なら『俺のことはいいから先に行け!』とか言いそうですけど……あなたヒーラーでしたよね? なんで助けてあげなかったんですか? ああ、すいません。ここはマナがないんで思う様に魔力が使えないんでしたね。私とした事が大変失礼なことを……」

 くそっ、やっぱりこいつクソ虫だ!

 マイケル達推し兵が、銃床で小突かれながら、潜水艇に向かっている。
「さっさと入れ!」
 敵兵に促され、マイケルが潜水艇のハッチを開けた。
 その瞬間、

 キ――――――――――ン

 耳をつんざく、ハウリングのような高周波の大音響が響き渡った。
「な、なんですか、これは!」
 ワイズマンも両耳を手で押さえながらあたりをうかがっている。
 次の瞬間、丸い金属製の球体が、しゅぽんっと潜水艦のハッチから上空に飛び出してきた。

 あれは、ポコ?

 そしてその場の全員の眼がポコにくぎ付けなったその時、シェルが爆発し、ものすごい音と閃光に続いて強烈な刺激臭が鼻と口を襲った。

(目晦まし! 催涙ガス?)

 ぱんぱんぱん。銃声が響いた。

「よっしゃ。これで形勢逆転かな」
 ああ―、この声は……小隊長!?

「おっと動くな。お前が親玉だろ。ちょっとでも動くと、頭の風通しがよくなるぞ」
 催涙ガスでくしゃみと涙が止まらず、何も見えないが、どうやら小隊長が、ワイズマンを確保したようだ。
 遅まきながら、腰に付けていたガスマスクを取り出してかぶり、しばらくすると視界が戻ってきた。傍には、ワイズマンのこめかみに銃口をくっつけたローアイが立っている。

「ああ、小隊長……」
 カレンは、思わず飛びつきそうになったが、反射的にシールド張っちゃったりしたらまずいとすぐに思いとどまった。
 よく見ると推し兵たちは、みんなガスマスクを着けている。どういうからくりかはわからないが、みんなこのポコと小隊長の攻勢を予測していたようだ。

「こら―、小隊長はん。わっちらまで巻き添えとは、ひどいでありんす……」
 コトブキもエルもメグも目が真っ赤になっており、涙と鼻水が止まらないようだ。

「いや、すまんすまん。何通りか、こうしたケースを予め想定していてな。ハッチを開ける前、ハッチを叩く回数にあわせてポコと作戦を示し合わせていたんだ。俺が、ホール手前に降りてきたとき、マイケルと眼があったんで、指サインで指示したんだ。No.3ってな」と言いながらローアイは、指三本立てて見せた。

「で、でも、ポコちゃんが爆発しちゃった……」
 エルが涙と鼻水まみれになりながらポコの心配をしている。
「ああ、それなら。ほら……」
 見るとマイケルの肩に、綺麗な羽の妖精さんがのっかっている。

 よかった! 

「もう、みんなマスク取ってもいいだろう。マイケル、状況は?」
「大丈夫です。敵兵の拘束完了しました。で、どうしましょう。
 海底の出口はふさがれちゃったみたいですが。」
「ということは、まだまだ袋のネズミなのは変わらんか。
 でもまあ、このクソ虫が人質になってくれるだろうから表から出ようか。
 なんか、移送の準備してくれていたらしいから……」

 ぷっ、はははは……なんだか笑いが止まらない。
 カレンには、今の小隊長がすごく頼りになるように感じられた。
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