獅子の末裔

卯花月影

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16.伊勢の黒雲

16-4. 遊興の果て

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 話は七年前、三九郎が日野の忠三郎のもとに滞在していたころまで遡る。

 日野中野城の一角にある忠三郎の居室がある三の丸館。立派な屋敷が並ぶその一帯は、重々しい雰囲気に満ちていたが、三九郎はあまりそこへ近づこうとはしなかった。
 忠三郎の行動は何とも掴みどころがない。加えて、忠三郎は暇さえあれば義太夫と共に館を抜け出し、都へ足を運んでいるというのだから、ますます謎めいていた。

(一体、二人で何をしておるのであろうか)
 疑問を抱くのも当然だった。義太夫は滝川家の家老だというが、どうにもあの陽気で剽げた男が家老に相応しいのか、三九郎には疑問だ。父・一益がなぜあのような男を側近に置くのか、腑に落ちない。

 ある日、三九郎はついに不審を抱えきれず、忠三郎に問いただしたのだ。
「義太夫殿と二人で、何をしに都へ行っておる?」
 すると、意外な返答が返ってきた。
「三九郎も共に参るがよい」
 忠三郎は満面の笑顔でそう誘ってきた。さらに義太夫が一層意味深な顔でこう続けた。

「おぉ、三九郎様も都の女子に興味がおありとは。されど、集まるのは都の女子ばかりではありませぬが、よろしいか?」
(都の女子?なんのことか…)
 不審な顔をする三九郎に、義太夫が事と次第を話し始めた。
「ひと月ほど前、桑名で怪しい老女とその従者十名を捕らえました。捕えてみると、この老女、国中で見目麗しい女子を見つけては騙してさらう、人さらいでござりました」

 その話に三九郎は眉をひそめた。戦乱が絶えなかった北伊勢ならば、こういった不届き者がいてもおかしくない話だ。ところが義太夫はその人さらい集団を解き放ったと言うから、なんとも解せない。
「なにゆえに、そのようなことを?」
 義太夫は辺りを見回し、声を潜めた。
「これはくれぐれも内密に願いますぞ…。なんと、この老女が上様の命令で女子をさらっておると申しまする」

「上様の?!」
 三九郎は驚愕した。
「当初は老女が苦し紛れに言っているのだと思い、調べさせたところ、驚くべきことに事実でござりました。老女は北勢だけではなく、各地を巡って見目麗しい女子を騙したり脅したりして京へ送り届けておったのでござります」
「それで?」
 三九郎が不信感を募らせたまま尋ねると、義太夫は少し困った顔をして続けた。
「咎めるわけにもいかず、致し方なく取引をいたしました。北伊勢では女子をさらわぬこと、それとさらに条件をつけて、解き放った次第で」

「取引?」
「はい。京へ参った際には、さらわれた中から数人を滝川家の京屋敷に連れてくるよう手配いたしました」
 三九郎は顔色を変え、
「それはまずいではないか。女遊びや博打は固く禁じられておる」
 家中の風紀の乱れを厳しく取り締まるはずの義太夫が、都の屋敷に女を連れこむとは如何なることか。
 すると義太夫は軽く手を振り、
「いやいや、傾城町に行くわけではありませぬ。我が家の屋敷で密かに行うことで」

「屋敷であれ、父上に隠し通せるものではなかろう」
 三九郎が厳しい口調で言うが、義太夫は涼しげに微笑み、
「そこは家人どもにも口止めしておりまする」
 と答えるが、そんな口止めに爪先ほどの意味があるとも思えない。
(父上は義太夫に甘いからな…)
 三九郎は不安が拭えなかった。どうせ一益に知られても構わないと思ってのことだろう。

「万一、その老女の口から上様に漏れたら如何する?」
 信長の耳に入れば命はない。そう考えるだけでも冷や汗が出たが、忠三郎はそんな不安をよそに笑いながら言った。
「案ずるな。老女にはたんと金を払うておる」
 義太夫も笑いながら、
「それもこれも、冷たい奥方に見向きもされぬ鶴のために熟慮したことにて」 とからかうように言った。
 忠三郎は少し照れたように、
「義太夫、わしのためばかりではなかろう。おぬしも独り身ゆえ、人肌恋しくて仕方がないなどと申して…」
 と返す。
 ふたりの呆れた会話は終わりが見えないかのように続いていたが、三九郎はもうすっかり聞く気を失っていた。聞くに堪えない内容に、心の中ではため息をつくばかりだった。

 しかし、話はそれだけでは終わらなかった。都で信長の目を盗んで豪遊していた忠三郎と義太夫であったが、驚くべき事態が待っていた。なんと、例の老女が連れてきた美しい娘の中に、信長のお気に入りの娘が含まれていた。そして、その娘が懐妊していることが発覚したのだ。

「これはただ事ではすむまい…」
 忠三郎と義太夫は、顔を真っ青にして互いを見つめ合った。豪遊どころの話ではなくなった二人は、すぐに事態を一益に打ち明けざるを得なかった。

 殊勝な態度で頭を下げる忠三郎と義太夫を前に、一益は顔色ひとつ変えることなく、じっと二人を見つめていたが、やがて
「致し方あるまい」
 と短く言うと、娘を岐阜の屋敷に引き取ると言い出した。そして、生まれてくる子を一益自身の子として育てるという大胆な策を講じたのだ。忠三郎と義太夫は、心底驚きつつも、一益の冷静な判断に深く感謝し、再び頭を下げた。

 ところが更に、話はこれだけでは終わらなかった。
 いきなり岐阜の屋敷に懐妊した若い娘が現れ、面倒を見るようにと言われた正室の風花は怒り心頭で三九郎を呼び出した。
「殿はなにもお話くださらぬ。これは一体、如何なることか」
 風花の理不尽な怒りの矛先はすべて三九郎に向けられた。
「義母上は何もお聞き及びではないので?」
 にしても、なぜ、一益に直接問うのではなく、自分に言うのか。
(父上の前ではあれほどしとやかで、別人のような女子であるが…)

 心の中でそう呟きつつも、三九郎は風花の激しい怒りを受け流し、平静を保とうと努める。とはいえ、忠三郎と義太夫の軽率な行動の結果がこんなことになってしまった今、どう対処すべきか考えあぐねていた。
 忠三郎の正室は風花の妹であり、更に二人の父親はあの信長だ。迂闊なことを口にすれば、それこそ騒動が大きくなる。そう考えると風花に事の詳細を説明するわけにはいかない。しかし誤解を解こうと試みるも、一益が遊女を連れこんだと思い込んでいる風花の苛立ちは一向に収まらない。

 風花の厳しい詰問に、ついに三九郎は答えに窮して真実を話した。火に油を注ぐ結果を想像していたが、話を聞いた風花は予想に反し、手のひらを返したように、にこやかな笑みを浮かべた。
「そのようなことか。殿の女子ではないのか」
 三九郎は風花の変わり身の早さに驚きつつも、ようやく怒りが収まったことに胸を撫でおろした。思わず手にした帛紗ふくさで汗を拭いながら、風花の笑顔に内心の安堵を隠せなかった。
(怒るどころか、笑みさえ浮かべるとは…。女子というは分からぬものじゃ。そうであれば最初から真のことを話せばよかった)
 三九郎は再び汗を拭う。
「されど、全く呆れた父上じゃな。その父上が選んだ婿が忠三郎殿というのも納得のいく話じゃ」
 と風花は苦笑いを浮かべ、再び穏やかな表情に戻った。思いもかけず、矛先がそちらに向けられ、三九郎はホッと胸をなでおろした。

 生まれた子は男子だった。九郎と名付けられ、同じ年に風花が生んだ六郎とともに育てられた。
 九郎は幼い頃から賢い子で、生まれつき目が見えない六郎を支えるように、寄り添い、日常のあらゆることを一緒にこなしている。といっても二人を見ているとその関係は対等であり、二人にとっては六郎の目が見えないことは当たり前のことのようだった。周囲の者たちも、二人の自然なふるまいに微笑み、九郎と六郎が共に育つ姿を暖かい目で見守っていた。
 
 月日は巡り、騒乱が続いた北勢にようやく泰平が訪れた。一益は長島城の修復後に風花と子供たちを伊勢・長島城に迎え入れた。
 新たな城での生活が始まると、二人の面倒は家臣の木全彦一郎と息子の彦次郎が任さた。
 特に年若い彦次郎は忙しい一益や三九郎に代わり、九郎と六郎の面倒をよく見た。年齢も近く、まるで兄弟のように接し、二人と打ち解けた関係を築いた。
 彦次郎は六郎の目が見えないことにも自然に対応し、二人の遊びや学びの時間を共に過ごした。九郎と六郎もまた、彦次郎を兄のように慕う。子供たちが笑い合いながら日々を過ごす姿は、長島城にもたらされた新しい平穏な日々だった。

 九郎が成長するにつれて、その非凡な才は一段と際立ち、皆が一目置く存在となっていった。しかし、その容姿が一益にまったく似ていないことが、密かに噂話の種になり始める。
 秘密というのはどこからどう漏れるものなのか。人々は陰で
「なんというても幼き頃に鳳の雛と呼ばれた方のお子ゆえに…」
 と囁き合い、その噂は次第に城の中に広がっていった。

 風花はその話を耳にすると、激怒した。風花にとって、先に生まれた八郎や六郎同様、九郎は大切な我が子であり、九郎を侮辱するような噂を聞き流すことはできなかった。以後、風花の前ではその話題を口にすることは絶対に禁じられ、家臣たちもそのことを深く理解していた。

 さらに、風花は噂話を懸念し、忠三郎と義太夫が一益の私邸に出入りすることを厳しく禁じた。特に義太夫の軽口が新たな波紋を広げることを恐れた風花は、彼ら二人が私邸で無駄話をすることを防ぐため、館の奥にある一益の私邸への立ち入りを制限したのであった。

 何も知らない子供たちは、長島城で伸び伸びと元気に育っていった。特に、木全彦次郎が連れてきた山犬たちは彼らの日常に新たな彩りを添えた。彦次郎は山犬使いであり、城に連れてきた数匹の山犬を子供たちに紹介し、彼らを慣れさせていった。
 
 中でも六郎は、山犬に特別な親しみを感じたようで、次第にその絆は深まっていった。目が見えない六郎にとって、山犬たちは頼りになる存在であり、時には六郎の目となり、道を案内することさえあった。山犬と共に寝起きするほどの親密さを育み、六郎は幼いながらも、彦次郎に教わって山犬を自在に操る術を身に付けていった。

 山犬たちは六郎に絶対の忠誠を示し、六郎の声や身振り一つで瞬時に動き出す。その見事な統率ぶりを目の当たりにした城の者たちは、驚きと感嘆を隠せなかった。六郎が山犬たちを巧みに操るその様子は、もはやただの技術ではなく、特別な才能と呼ぶべきものだった。

「もはや、山犬使いで六郎様の右に出る者などおりませぬ」
 彦次郎は嬉しそうに声を上げ、六郎の成長を心から誇らしく思った。未だ幼く力弱い盲目の少年が、山犬たちを自在に操る存在へと変わりつつある。彦次郎の胸には、六郎が次第にその才能を開花させていく姿に、深い感慨と喜びが湧き上がっていた。

 そんな平穏な日々が続いたある日、思いもよらない事件が起きた。風花にとって叔父にあたる信長の弟、信包の使者が長島城に現れ、予期せぬ知らせを告げた。
「家臣、細野藤敦に謀反の嫌疑がかかっております。殿はこれを咎め、細野の城を襲い、討ち取ると申しております」

 この報せに風花は驚きと怒りを隠せなかった。なぜなら、細野藤敦の城には、風花と一益にとって第一子である八郎がいる。かつて細野を織田家に恭順させるため、八郎を養子に出すという苦渋の決断をした過去があった。
「八郎がおる城を攻めるとは、叔父上はなにゆえそのような無体な真似をなさるのじゃ!」
 風花は使者を前にして泣き叫んだ。信包はおそらく善意から、あらかじめこの知らせを伝えるために使者を送ったのだろうが、裏目に出る形となった。
 
 子供たちは尋常ではない風花の叫び声を聞いて慌てて駆け付けた。普段から気丈な風花がここまで取り乱すことなどなかったため、何か大変な事態が起きていることを直感的に悟ったのだろう。
「そうお嘆きあるな。まだ八郎様のお命が失われたわけでは…」
 使者は風花をなだめようと、慎重に言葉を選びながら話しかけたが、風花はその言葉に一層激しく反応した。
「戯言を申すな!城を攻めれば、細野殿が怒りに任せ、八郎を殺めるであろう!それが分かっていて、叔父上は兵を差し向けるというのか!」
 風花は目に涙を浮かべ、激昂して使者を睨みつけた。

 子供たちは、風花の取り乱す姿に動揺し、兄・八郎が危険に晒されていると強く思い込んでしまった。そして、使者として現れた二人を「兄の命を奪う者」と認識した。
「あの二人を生きて返せば、兄上は二度とは戻らぬ。なんとしても兄上を取り戻すのじゃ」
 九郎が冷静さを失い、怒りを滲ませて言い放つと、六郎はその言葉に反応し、すぐに山犬に合図を送った。山犬たちは六郎に忠実で、風のように速く動き、使者たちの首元に噛みついた。

 それは瞬く間の出来事だった。近侍も、風花も、まさか子供たちが山犬をけしかけるなどとは露も思わず、誰一人として止めることができなかった。

 二人いた使者のうち、一人は山犬の鋭い牙がその首元に深く食い込み、息をする間もなくその場で命を落とした。
 もう一人もまた、山犬の攻撃により深い傷を負いながらも、どうにか命からがらその場を逃げ出した。春の風が冷たく感じられる夜、息も絶え絶えに安濃津城の信包のもとへ辿り着いた。

 傷口から血が滲み出るなか、震える唇で恐怖に満ちた報告を告げると、信包はその様子をじっと見つめ、事の重大さを徐々に悟っていった。使者の顔には未だに恐怖の影が色濃く残り、山犬たちの凶暴さと、二人の少年が引き起こした凄惨な事件が、信包の耳に生々しく響いた。
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