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【6】VSゴブリン
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〇―――――――――――――――――――――――――――〇
【名前】ゴブリン 【年齢】4 【Lv】7 【種族】ゴブリン
【HP】72/72 【MP】4/4
【能力】力:20 防:11 魔:3 速:20 運:10
【スキル】
〇―――――――――――――――――――――――――――〇
どうやら、変異種ではなさそうだし、長年生き抜いてきた強者って訳でもなさそうだな。
通常ゴブリンはMPが低いこともあって魔法を覚えない。ただ、同じゴブリンだとしても変異種になってくると話が変わってくる。変異種ともなると魔法を使う者や異様に能力の高い者がいるため、その魔物が変異種じゃないと決めつけて戦うと痛い目に合ってしまう。
まぁ、鑑定眼持ちの俺は戦闘の前に能力が見れるから有利なんだけどね。
「グギャー!!」
俺の存在に気が付いたゴブリンがこちらに突っ込んでくる。
敵の両手には粗雑な棍棒、それに対して俺は剣。明らかにリーチはこちらの方が有利なのに愚直に突っ込んでくるか……。攻撃を躱す自信があるのか、それともそれほど戦闘経験が無いのか……。
色々考えを巡らせてみるが、結局のところ相手が何を考えているのかは分からない。こればかりは鑑定眼でも見えない。ゴブリンといえども多少の知能はあり、戦闘で学習することがあるため侮るのは危険だ。
「……まぁ、やることは決まってるけど」
徐々にこちらとの距離が詰まってくるゴブリンに剣を構え直す。
「ギャギャ!!」
後1、2mで剣の間合いに入るといったところで、ゴブリンが左手に持っている棍棒を投げてきた。視界に勢いよく迫ってくる棍棒を避けると、さっきまで目の前にいたゴブリンが消えていた。ほんの一瞬思考が止まってしまったが、落ち着いて視線を上げる。
「グーギャー!!」
振り下ろしてくる棍棒を後ろに飛んで避ける。棍棒は空を切り、勢いよくゴブリンの体と共に地面に勢いよく叩きつけられた。
なるほどね。そうやって生き残ってきたってことか……。どうりで力と速が異様に高いわけだ。
他のゴブリンに比べて力と速が高いとこういった戦い方をするのかと学びを1つ得たところで、上段に構えた剣を勢いよく振り下ろす。
「紫電一刀!!」
振り下ろされた剣の刀身は紫色の光を放ちながら、真っすぐゴブリン目掛けて落ちていく。
「ギャ……」
ゴブリンは何かを言おうとしていたが、最後まで言い終わることなく体が2つに分かれた。息絶えたゴブリンの体を見ていると、ふとある疑問が浮かんでくる。
……ゴブリンって言葉で意思の疎通を図るって聞いたことあるけど、グとギャとしか言ってるように聞こえないんだよなぁ。どうやって会話しているんだろう……。
そんなことを考えながら、剣に付いた血を拭きながらアシリアの元に戻る。当のアリシアはというと子猫のことを眺めながら、その小さな体を優しく撫でている。恐らく戦いの最中も一切こちらのことは見ていなかったのであろう。
「あら、終わりましたか?」
こちらに気が付いたアリシアがようやく顔を上げた。
「……うん」
どこか納得いかない部分を感じながらも剣を鞘に戻す。
「ラベオン様。この子の名前決めましたよ」
「……俺が戦っている間、それしか考えていなかっただろ」
「そんなことありません。と言いたいところですが、どうせラベオン様が勝つと分かっておりましたので」
そう言われると、言い返すことができない。
「はぁ、そうですか」
嬉しいのやら悲しいのやら……。
「それで、何て名前にしたの?」
「この子の名前はですね。リシアンです」
そう言ってアリシアは子猫の両脇を抱えて腕を突き出した。子猫はどうやら目を覚ましていたようで、つぶらな瞳を輝かせながらこちらを見つめてくる。
「リシアン……。何でその名前にしたんだ?」
「私たち2人で育てるとのことでしたので、2人の名前から付けました」
「2人の名前ということは、ラベオンのンとアリシアのリシアってことか……。ってほとんどアリシアの名前からじゃないか!!」
「仕方ありません。2人の名前を入れるとなるとこれがバランスが良かったので」
変な考えは一切ありませんとでも言いたそうな様子のアリシアをじーっと見つめる。
「……本当か?」
「本当ですよ」
「だったら、ベリアンとかでも良かったんじ……」
「それだとバランスが良くありません」
俺が言い終わる前に遮るように否定してくるアリシア。
「じゃあ……」
「じゃあも何もありません。この子はリシアンです」
そう言って子猫を再び抱きかかえたアリシアを見て、これ以上何か言っても意見を変えるつもりはないだろうなと悟った。
「……分かったよ。その子猫はこれからリシアンだな」
「はい」
王城から抜け出して半日も過ぎていないというのに、新たに仲間が増えて総勢3名の旅となった。こんなことになるとはまったく予想していなかったが、1人で旅をするよりも楽しくなるだろうし、まぁあいいかと納得することにした。
「リシアンも元気になったようだし。ゴブリンで足止めされた分急ぐつもりだけど……大丈夫そう?」
「もちろんです。どこまでもラベオン様に付いていきますよ」
そう言うと、アリシアは荷物をまとめて立ち上がる。
「よし、それじゃあ早くこの森を抜けることにしよう」
森を抜けて街に向かうためその場を後にした。
森の中を歩いている最中、コッソリアリシアのステータスを見てみる。
〇―――――――――――――――――――――――――――――〇
【名前】 【年齢】△□□ 【Lv】-2 【種族】エルフ
【HP】??? 【MP】???
【能力】力:T 防:B 魔:M 速:S 運:U
【スキル】△□△□△□
〇―――――――――――――――――――――――――――――〇
やっぱり、変わってる……。
アリシアはステータスを見るたびに書かれていることが変わっていた。例えば、全てが空欄になっていた場合、ステータスを隠すために隠蔽魔法やそれに近しい能力のスキルが使われている可能性が挙げられる。ただ、アリシアのように様々な形でステータスが隠されているため、何が使われているのか全く分からない。
それに……。
「ラベオン様。そんなにステータスを見られると恥ずかしいです」
何故か俺が鑑定眼を使ってるのがバレる。
「あぁ、ごめん」
……意味が分からない。本来鑑定眼が使われているかどうかは気づかれないものなのだが、アリシアは何故か俺が鑑定眼を使っているのが分かるみたいだ。
この旅の目的は、王族としての生活から抜け出して世界の色々なことを見て回るといったものだったのだけれども……。
「なぁ、アリシア。どうやってステータスを隠しているんだ?」
「それはですね……。乙女の秘密です」
アリシアは妖しげにそう答える。
……決めた。そんなに隠したいんだったら、望むところだ。この旅の間に絶対ステータスを見てやる!!
旅の目的がもう1つ追加されるのであった。
【名前】ゴブリン 【年齢】4 【Lv】7 【種族】ゴブリン
【HP】72/72 【MP】4/4
【能力】力:20 防:11 魔:3 速:20 運:10
【スキル】
〇―――――――――――――――――――――――――――〇
どうやら、変異種ではなさそうだし、長年生き抜いてきた強者って訳でもなさそうだな。
通常ゴブリンはMPが低いこともあって魔法を覚えない。ただ、同じゴブリンだとしても変異種になってくると話が変わってくる。変異種ともなると魔法を使う者や異様に能力の高い者がいるため、その魔物が変異種じゃないと決めつけて戦うと痛い目に合ってしまう。
まぁ、鑑定眼持ちの俺は戦闘の前に能力が見れるから有利なんだけどね。
「グギャー!!」
俺の存在に気が付いたゴブリンがこちらに突っ込んでくる。
敵の両手には粗雑な棍棒、それに対して俺は剣。明らかにリーチはこちらの方が有利なのに愚直に突っ込んでくるか……。攻撃を躱す自信があるのか、それともそれほど戦闘経験が無いのか……。
色々考えを巡らせてみるが、結局のところ相手が何を考えているのかは分からない。こればかりは鑑定眼でも見えない。ゴブリンといえども多少の知能はあり、戦闘で学習することがあるため侮るのは危険だ。
「……まぁ、やることは決まってるけど」
徐々にこちらとの距離が詰まってくるゴブリンに剣を構え直す。
「ギャギャ!!」
後1、2mで剣の間合いに入るといったところで、ゴブリンが左手に持っている棍棒を投げてきた。視界に勢いよく迫ってくる棍棒を避けると、さっきまで目の前にいたゴブリンが消えていた。ほんの一瞬思考が止まってしまったが、落ち着いて視線を上げる。
「グーギャー!!」
振り下ろしてくる棍棒を後ろに飛んで避ける。棍棒は空を切り、勢いよくゴブリンの体と共に地面に勢いよく叩きつけられた。
なるほどね。そうやって生き残ってきたってことか……。どうりで力と速が異様に高いわけだ。
他のゴブリンに比べて力と速が高いとこういった戦い方をするのかと学びを1つ得たところで、上段に構えた剣を勢いよく振り下ろす。
「紫電一刀!!」
振り下ろされた剣の刀身は紫色の光を放ちながら、真っすぐゴブリン目掛けて落ちていく。
「ギャ……」
ゴブリンは何かを言おうとしていたが、最後まで言い終わることなく体が2つに分かれた。息絶えたゴブリンの体を見ていると、ふとある疑問が浮かんでくる。
……ゴブリンって言葉で意思の疎通を図るって聞いたことあるけど、グとギャとしか言ってるように聞こえないんだよなぁ。どうやって会話しているんだろう……。
そんなことを考えながら、剣に付いた血を拭きながらアシリアの元に戻る。当のアリシアはというと子猫のことを眺めながら、その小さな体を優しく撫でている。恐らく戦いの最中も一切こちらのことは見ていなかったのであろう。
「あら、終わりましたか?」
こちらに気が付いたアリシアがようやく顔を上げた。
「……うん」
どこか納得いかない部分を感じながらも剣を鞘に戻す。
「ラベオン様。この子の名前決めましたよ」
「……俺が戦っている間、それしか考えていなかっただろ」
「そんなことありません。と言いたいところですが、どうせラベオン様が勝つと分かっておりましたので」
そう言われると、言い返すことができない。
「はぁ、そうですか」
嬉しいのやら悲しいのやら……。
「それで、何て名前にしたの?」
「この子の名前はですね。リシアンです」
そう言ってアリシアは子猫の両脇を抱えて腕を突き出した。子猫はどうやら目を覚ましていたようで、つぶらな瞳を輝かせながらこちらを見つめてくる。
「リシアン……。何でその名前にしたんだ?」
「私たち2人で育てるとのことでしたので、2人の名前から付けました」
「2人の名前ということは、ラベオンのンとアリシアのリシアってことか……。ってほとんどアリシアの名前からじゃないか!!」
「仕方ありません。2人の名前を入れるとなるとこれがバランスが良かったので」
変な考えは一切ありませんとでも言いたそうな様子のアリシアをじーっと見つめる。
「……本当か?」
「本当ですよ」
「だったら、ベリアンとかでも良かったんじ……」
「それだとバランスが良くありません」
俺が言い終わる前に遮るように否定してくるアリシア。
「じゃあ……」
「じゃあも何もありません。この子はリシアンです」
そう言って子猫を再び抱きかかえたアリシアを見て、これ以上何か言っても意見を変えるつもりはないだろうなと悟った。
「……分かったよ。その子猫はこれからリシアンだな」
「はい」
王城から抜け出して半日も過ぎていないというのに、新たに仲間が増えて総勢3名の旅となった。こんなことになるとはまったく予想していなかったが、1人で旅をするよりも楽しくなるだろうし、まぁあいいかと納得することにした。
「リシアンも元気になったようだし。ゴブリンで足止めされた分急ぐつもりだけど……大丈夫そう?」
「もちろんです。どこまでもラベオン様に付いていきますよ」
そう言うと、アリシアは荷物をまとめて立ち上がる。
「よし、それじゃあ早くこの森を抜けることにしよう」
森を抜けて街に向かうためその場を後にした。
森の中を歩いている最中、コッソリアリシアのステータスを見てみる。
〇―――――――――――――――――――――――――――――〇
【名前】 【年齢】△□□ 【Lv】-2 【種族】エルフ
【HP】??? 【MP】???
【能力】力:T 防:B 魔:M 速:S 運:U
【スキル】△□△□△□
〇―――――――――――――――――――――――――――――〇
やっぱり、変わってる……。
アリシアはステータスを見るたびに書かれていることが変わっていた。例えば、全てが空欄になっていた場合、ステータスを隠すために隠蔽魔法やそれに近しい能力のスキルが使われている可能性が挙げられる。ただ、アリシアのように様々な形でステータスが隠されているため、何が使われているのか全く分からない。
それに……。
「ラベオン様。そんなにステータスを見られると恥ずかしいです」
何故か俺が鑑定眼を使ってるのがバレる。
「あぁ、ごめん」
……意味が分からない。本来鑑定眼が使われているかどうかは気づかれないものなのだが、アリシアは何故か俺が鑑定眼を使っているのが分かるみたいだ。
この旅の目的は、王族としての生活から抜け出して世界の色々なことを見て回るといったものだったのだけれども……。
「なぁ、アリシア。どうやってステータスを隠しているんだ?」
「それはですね……。乙女の秘密です」
アリシアは妖しげにそう答える。
……決めた。そんなに隠したいんだったら、望むところだ。この旅の間に絶対ステータスを見てやる!!
旅の目的がもう1つ追加されるのであった。
応援ありがとうございます!
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