淑女のための短編官能小説集『逆転恋愛』

露木阿乱

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「夫の浮気で欲求不満の私に、友人夫婦が提案してくれた淫らなアイデア」

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1

 久しぶりに伊織と琴葉夫婦に、新宿で会った。二人は、高校時代の同級生で、相当ヤバイ遊びを楽しみ、秘密を共有した仲間だった。グループのメンバーは六人ほどいたが、高校を出てからは全国に散らばり、時折、顔を合わせるのは、三人だけになってしまった。
 秘密を共有したヤバイグループといったが、周りからは大人しいグループと見られていた。裏では無修正のネット動画に出演したり、仲間たちを集めて乱交パーティを開いたりする、セックスに奔放な仲間たちだった。考えてみれば、今、普通に暮らしていられるのは、薬や暴力事件、窃盗などに関わっていなかったからだと思っている。

「セックスに奔放なグループ」といったが、当然のように、グループ内はフリーセックスで、琴葉の旦那の伊織とは、幾度も肌を合わせたことがあった。当然のように、体内に精液を受け入れたこともあった。また、琴葉と三人で、セックスを愉しんだこともあった。ただ、私が結婚してからは、三人で愉しむことは控えるようにしていた。
 三人とも、たとえ夫婦であっても、セックスは自由であるべきだと考えていた。しかし、そのためにはルールがあった。

「フリーセックスを配偶者が容認していること」

「妊娠を避けること」

 などに責任を持つことだった。
 伊織と琴葉は、相変わらずフリーセックスを愉しんでいるようだった。

「久しぶりに、三人で愉しまない」

 伊織が私の手を握り、熱い眼差しで迫ってきたが、琴葉が「やめなさい」という顔つきで、その手を払った。

「ところで、夏菜子たち夫婦はうまくいってるの?」

 琴葉が、私に聞いた。琴葉には、私が何となく憂鬱な表情をしていることが、気にかかったらしい。彼女の推察通りだった。夫の慎介に対する不満が日毎に高まり、我慢の限界が近づきつつあった。

「慎介の女遊びがひどいの。そのクセ、私が他の男性と話すのを極端に嫌がる。独占欲が強すぎるの。付き合った頃は、それが嬉しかったけど」

「セックスはどうなの?」

「最近は、週二回というところ」

「かわいそう。夏菜子は普通よりも性欲強いからね。身体が疼いて眠れないでしょう?」

「だから、今日、うちに泊まろうよ。明日は休みだから、朝まで寝ないでやろう」

 伊織が、再び迫ってきた。
 その日、伊織にはしつこく迫られたが、結局、帰宅することにした。最近、セックスはご無沙汰だったため、後ろ髪を引かれる想いはしたが、夫のことが気になって帰りを急いだ。このところ、夫には新しい女ができたようなのだ。自分が諦めると、夫との関係が早晩、壊れてしまいそうな気がしていた。

「別れちゃえば。夏菜子ならいくられでも相手はいるよ。子供もいないし」

 伊織からは、そう勧められたが、女のことを除けば、夫の慎介は文句のつけようのない存在だった。何よりも、女と付き合っても、一度もトラブルを起こしていなかった。仕事もできて、自分が働かなくても食べていけた。思いやりもある。両親も彼のことを気に入っていて、離婚など言い出せる雰囲気ではなかった。とにかく、ルックスもセンスも趣味も自分にピッタリなのだ。自分の方が、慎介に惚れすぎていることもあった。加えて、慎介には、私と別れる気は全くないようだった。
 私と慎介の関係は、微妙にお互いの歯車が狂っているような気がする。何となく噛み合わないのだ。どこか修正すれば、すべてうまくいくもうな気がする。
 慎介が、女遊びを控えるか、私を束縛するのをやめてくれればいいのだが、それはできないらしい。女遊びを控えてほしいとたのむと、本気じゃないから心配するな、という。その通りで、どの女も遊びらしく、長続きはしない。今では珍しい骨董品の亭主関白といったところだった。あれだけ、セックスに奔放だった自分が、時代遅れの性意識に固まった男と結婚するなど、いただけないジョークのような現実だと感じていた。
 帰宅してみると、案の定、慎介は家にはいなかった。新しい女とホテルで愉しんでいるのだろうと悔しくなった。

2

 ベットに入り、なかなか眠れずにいると、十二時を過ぎた頃に慎介は帰ってきた。シャワーの音が聞こえて、すぐにベットに入ってきた。抱きついてキスすると、

「何だ、まだ起きてたの」

 と優しい声が帰ってきた。女といたのか、と追及したかったが、厳しい言葉を吐き出せなかった。悔しかった。男を手玉に取っていた、昔の自分はどこに行ってしまったのか? 
 身体を反転させると、慎介の股間に顔を近づけ、下着の中から男根を引っ張り出した。あまり勢いがなかった。

(やはり、女と愉しんできたんだ!)

 そう思うと憎らしかったが、言葉には出さず、柔らかい亀頭を口に咥えた。肉幹をしごきながら唾液を絡めていくと、少しずつ男根の感触が確かなものになってくる。

「疲れてるんだ。今日は眠らせて」

 身体を反転させ、愛撫から逃れようとしたが、私はそれを許さなかった。どうしても、今夜は慎介と一つになりたかった。身体を起こすと、急いで着衣を脱ぎ去り、全裸になると、慎介の下腹部にまたがった。ようやく屹立(きつりつ)しつつある男根を握りしめると、蜜液をたたえた裂け目へと捩(ね)じ込んでいった。
 その夜は、二人とも朝日を浴びながら、四肢を絡め合って眠った。

 琴葉たちと会ってから十日が過ぎた頃、伊織から電話がかかってきた。要件は、私たち夫婦のことだった。新宿で会った際、塞ぎがちな私のことが気になって、その後、二人でいろいろと考えたらしい。その結果の結論は、

「昔の夏菜子に戻れ」

 だった。

「昔から男は、相手が自分に惚れてると思うと安心してしまう。甘えてしまうんだ。夏菜子も、慎介にゾッコンだろう。あいつが他の女に手を出しても何も言えない。琴葉も夏菜子らしくないと心配してた。そこで、今日は提案があって電話した」

 伊織の提案は、突飛なものだったが、このままでは慎介との関係が破綻しそうな不安を感じていた。

「ショック療法だよ」

 電話の向こうで慎介が笑った。

3

 それから1か月ほど経った土曜日の夕刻、私たち夫婦は琴葉たちの家を訪れた。中野の駅近くのマンションの、3DKに二人は住んでいる。慎介には、琴葉たちの家でパーティがあるから、と適当な口実をつくって誘った。慎介と琴葉たち夫婦は旧知の仲だった。結婚式で出会ってから、幾度か顔を合わせる機会はあったが、それほど深い関係に発展することはなかった。
 琴葉たちの家には、すでにもう一組の夫婦が訪れていた。二人とは、以前、琴葉の紹介であるイベントに参加したことがあった。仕事仲間だと言ったが、それだけの関係ではないような気がしていた。

 パーティの名目は、琴葉が仕事関係の難しい国家資格に合格した、そのお祝いということだったが、明らかに伊織たちには別の目的があることが確かだった。そのプランについて、夏菜子は重要な部分について説明を受け、思案の結果、了承していた。夫の慎介には、その内容について全く話していなかった。だから今日、慎介はよくある飲み会程度の気持ちで参加していた。
 最初は、普通の飲み会だった。六人でそれぞれ好きな場所に座って酒を飲んだりしいたが、気がつくと琴葉と、その友人の旦那、樹(いつき)の姿が消えていた。

「琴葉はどうしたの?」

 私が慎介に尋ねると、

「隣の部屋で酔っ払って寝てるんじゃないか」

 伊織は、笑いながらそう答えると同時に、琴葉に淫らな眼差しを投げかけてきた。その眼差しの意味はわかっていた。隣の部屋には、布団が二組敷かれていて、今夜は、三組のカップルで、組んず解れつの乱行パーティーを開く計画だった。

「夏菜子は、慎介が他の女とセックスすることは問題ないんだろう。つまり、自分が仲間外れにされるのがいやなんだ。それなら、夏菜子の目の届くところで、慎介とセックスを共有できる仕組みをつくればいい」

 慎介は、ただ独占欲だけが強く、自分の妻が、他の男と話をするのも嫌な、自分勝手な男かも知れなかった。

(それなら、結局、慎介との仲は長くは続かないだろう)

 と考えた。私は、普通の女より、性欲が強いのかもしれない。実は、慎介に相手にされなかった夜は、通販で買った性具で自らを慰めているほどだった。ただ、確信はなかったが、伊織のこのプランはうまくいくような気がしていた。
 私が、慎介を誘って琴葉の様子を確かめに行こうとした時だった。隣の部屋から、艶かしい琴葉の喘ぎ声が聞こえてきたのだった。
 慎介がけげんな顔つきで、私を見つめた。伊織が、立ち上がって部屋のドアを開くと、二枚敷かれた布団の片方で、全裸になった琴葉と友人の旦那の樹が、お互いの性器を愛撫しながら絡み合っていたのだった。
 その性獣と化した二人の姿を目の当たりにした慎介は、ショックを受けたのか、ポカンと大きく口を開けている。今度は、その慎介のズボンのベルトにてをかけた樹の妻の架純が、下着の中から男根を取り出そうとしていた。

「俺たちは、久しぶりにベットで愉しもうか!」

 伊織が、琴葉たち夫婦のベットに、私を伴って行こうとした時、

「これは、どういうことなんだよ」

 慎介が少し気色ばんだ声を張り上げたが、架純の唇がその声を止めていた。

 その日、理解できないまま、慎介もこの乱交に参加し、架純だけでなく、琴葉の体内にも白濁液を放出していた。
 当然、私が慎介と樹の男根を口に咥えたり、膣内に受け入れ、淫猥な喘ぎ声をあげている姿を目にしていた。嫉妬心で全身が爆発しそうになっていたはずだった。しかし、自分も他人の妻を抱いて、思う存分、欲望を吐き出していた。悔しいが、何も言えなかった。それよりも、これから妻とどう接すればいいのかわからなかった。
 普通の主婦のように考えていた、愛する妻が、自分の目の前で、何の躊躇いもなく、他の男の膨張した男根を、嬉しそうに体内にも受け入れたのだった。
 性欲のありったけを吐き出した後で、シャワー浴び、三組のカップルで話し合った。琴葉夫婦、架純夫婦は、自分たちはセックスを共有する仲間だと話した。ついで、私も、これまでの性体験や性意識について、あからさまに打ち明けた。もちろん、慎介に対する偽ることない愛情についても告白した。慎介は、何も言わず、静かに聞いていた。
 
 その夜、帰宅するまで慎介は黙ったままだった。食事の際、テレビを見ながら世間話を交わしたぐらいで、ほとんど会話はなかった。しかし、ベットに入ると、猛烈な勢いで性欲を爆発させていた。これまでに経験したことのないほど、激しい勢いで、幾度も私を責め立てた。
 それから、慎介から他の女の気配はしなくなった。ただ、次のパーティの予定をしつこく聞いてくるようになった。近いうちに、琴葉たち夫婦を自宅に呼ぼうと考えている。

(終)
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