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おじさん♡そうなんです
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ヴィクトール♡
これは、生命の暴発だ!
Ω女王は突如として発情を召された。
そして彼の内から溢れ出た愛は、瞬く間に人々を飲み込んでしまった。
過剰なる熱量は、ひとの身体の障りとなる。
王の間に集いし客人方の殆どが上位者に値するαだった。
故に何とか堪え退避する方もおいでだ。
だが、乱心を催す者や昏倒者が続出し、宴は阿鼻叫喚の様相を呈した。
そして現在、あれ程に賑わっておったのが嘘の様に…
王の間は伽藍堂となり果てている。
リリィは御無事だ。
私の隣りに今も御座りである。
女王の侍女たるブレンダリー殿を中心に、女官方の堅い御守りが取り巻いている。
この場には最早、私とアレクサンドール以外の男性は居ない。
弟は『従順』の術中に在り、また既に女王の夫でもあるが為かこの状況下に捨て置かれている。
そして、余は女王の婚約者である。
その為にこの場に居残る事を許されておるが…
女性方が、私から…
女王を護らんと身構えておられる事は言わずもがな、伝わってくる。
…潮時であろう、な。
もう腰を上げ、立ち去らねばなるまい。
婚約は失敗に終わった。
リリィは余を拒んだ!
その様な全く予想外の顛末により、余は女王の夫になり損のうた。
所詮、茶番に過ぎ無ぬ宴であったのだ。
いっそ気持ちが良い程、滑稽に事は終始した。
これは案外と救いなのやもしれぬ。
余は一生涯、この珍事に傷付くだろう。
…だが、それも良い。
何故なら余は、この人が結局は好きなのだ。
もう、愛してしまっている。
全く!
訳の分からぬ事だが真実、余は、君に首ったけだ。
何故かは分からぬが、それでも良い。
君に恋をせぬままの人生を過ごすより、ずっと良い。
…さて、本当におさらばである。
我が愛しきリリィの、可憐で無垢なるかんばせにはひとつの曇りも無い。
このお人形の何が良いのか、我ながら不思議だ。
だが、やはり、見れば見る程に愛しい。
…しかし、何か、気に入らぬ。
余はΩの発情を知ら無い。
知識としては解しておるが、実際にはどの様な現象であるかを識らぬのだ。
Ωの発情とは性交を促がす衝動であり、精食を摂る際にのみ発動する生理であるはず。
しかし、其れでは今のリリィの状況に合致し無い。
只今のリリィが発情をもよおす筈が無いのだ。
このΩ女王は、常識に外れている。
『西欧のΩ女王』の規格からも、大きく外れている。
では君は、何だ。
君は一体、誰だ。
「視作生を返して下さい!」
思いもよらぬ方から、思いもかけぬ声がした。
操り人形である筈の弟も、また予想外の状況にあるようだ。
お前は、いつから正気であったのか!
あの女傑の術を逃れるとは、其方に何が起こったというのだ。
「視作生を、解き放って下さい!」
アルクサンドールよ…
お前は今、リリィを何と呼んだが。
「…お下がりなさいませ、若君」
弟の姉が、彼の前に立ちはだかった。
彼女には珍しく、憤怒の面も露わにその能力を激高させている。
しかし、効かぬ。
弟は、彼らしく、真摯な眼差しのままだ。
「姉上!そして皆、皆様も!…もう、…とっくと、お判りの筈です」
…何の、話だ。
「兄上。貴方様も、お判りで御座いましょう」
アレクサンドールは、厳しい表情を切な気に歪ませた。
「この方はΩ女王では無い!」
…何という、事だ。
では、やはり。
「西欧に『リリィ』は還りません」
我々は…
我々の元よりの…
元来の番いを永遠に失ったと、お前は言うのか。
「西欧のΩは絶滅致した。それでも、彼が来て下さった!」
…それでは、この人は『Ω女王』では無く、『リリィ』でもない。
「それは…、それこそが!奇跡でしょう」
そうだ。
そうであるならば、これは確かに奇跡だ。
Ωを絶やした西欧のαは、滅亡する運命であったのだろう。
「そも、彼は西欧のαに縁無く、そして何の義務も無いのだ!」
それでも君は、救う。
君の愛に、我々は救われる。
だからこそ君をこの地で、お幸せにして差し上げねばならない!
新しきΩの君を戴いたのであれば、変わるのは此方の方であろう。
君を幸せにしたい。
それはおそらく、『Ω女王』であっては成らぬ事だ。
「視作生は、視作生だ!間違えてはいけない」
君は、視作生か。
君は、君だ。
それは、そうだ。
女王でもリリィでもない、君は視作生で在る。
そうであったか、承知致した!
\\\٩(๑`^´๑)۶////
これは、生命の暴発だ!
Ω女王は突如として発情を召された。
そして彼の内から溢れ出た愛は、瞬く間に人々を飲み込んでしまった。
過剰なる熱量は、ひとの身体の障りとなる。
王の間に集いし客人方の殆どが上位者に値するαだった。
故に何とか堪え退避する方もおいでだ。
だが、乱心を催す者や昏倒者が続出し、宴は阿鼻叫喚の様相を呈した。
そして現在、あれ程に賑わっておったのが嘘の様に…
王の間は伽藍堂となり果てている。
リリィは御無事だ。
私の隣りに今も御座りである。
女王の侍女たるブレンダリー殿を中心に、女官方の堅い御守りが取り巻いている。
この場には最早、私とアレクサンドール以外の男性は居ない。
弟は『従順』の術中に在り、また既に女王の夫でもあるが為かこの状況下に捨て置かれている。
そして、余は女王の婚約者である。
その為にこの場に居残る事を許されておるが…
女性方が、私から…
女王を護らんと身構えておられる事は言わずもがな、伝わってくる。
…潮時であろう、な。
もう腰を上げ、立ち去らねばなるまい。
婚約は失敗に終わった。
リリィは余を拒んだ!
その様な全く予想外の顛末により、余は女王の夫になり損のうた。
所詮、茶番に過ぎ無ぬ宴であったのだ。
いっそ気持ちが良い程、滑稽に事は終始した。
これは案外と救いなのやもしれぬ。
余は一生涯、この珍事に傷付くだろう。
…だが、それも良い。
何故なら余は、この人が結局は好きなのだ。
もう、愛してしまっている。
全く!
訳の分からぬ事だが真実、余は、君に首ったけだ。
何故かは分からぬが、それでも良い。
君に恋をせぬままの人生を過ごすより、ずっと良い。
…さて、本当におさらばである。
我が愛しきリリィの、可憐で無垢なるかんばせにはひとつの曇りも無い。
このお人形の何が良いのか、我ながら不思議だ。
だが、やはり、見れば見る程に愛しい。
…しかし、何か、気に入らぬ。
余はΩの発情を知ら無い。
知識としては解しておるが、実際にはどの様な現象であるかを識らぬのだ。
Ωの発情とは性交を促がす衝動であり、精食を摂る際にのみ発動する生理であるはず。
しかし、其れでは今のリリィの状況に合致し無い。
只今のリリィが発情をもよおす筈が無いのだ。
このΩ女王は、常識に外れている。
『西欧のΩ女王』の規格からも、大きく外れている。
では君は、何だ。
君は一体、誰だ。
「視作生を返して下さい!」
思いもよらぬ方から、思いもかけぬ声がした。
操り人形である筈の弟も、また予想外の状況にあるようだ。
お前は、いつから正気であったのか!
あの女傑の術を逃れるとは、其方に何が起こったというのだ。
「視作生を、解き放って下さい!」
アルクサンドールよ…
お前は今、リリィを何と呼んだが。
「…お下がりなさいませ、若君」
弟の姉が、彼の前に立ちはだかった。
彼女には珍しく、憤怒の面も露わにその能力を激高させている。
しかし、効かぬ。
弟は、彼らしく、真摯な眼差しのままだ。
「姉上!そして皆、皆様も!…もう、…とっくと、お判りの筈です」
…何の、話だ。
「兄上。貴方様も、お判りで御座いましょう」
アレクサンドールは、厳しい表情を切な気に歪ませた。
「この方はΩ女王では無い!」
…何という、事だ。
では、やはり。
「西欧に『リリィ』は還りません」
我々は…
我々の元よりの…
元来の番いを永遠に失ったと、お前は言うのか。
「西欧のΩは絶滅致した。それでも、彼が来て下さった!」
…それでは、この人は『Ω女王』では無く、『リリィ』でもない。
「それは…、それこそが!奇跡でしょう」
そうだ。
そうであるならば、これは確かに奇跡だ。
Ωを絶やした西欧のαは、滅亡する運命であったのだろう。
「そも、彼は西欧のαに縁無く、そして何の義務も無いのだ!」
それでも君は、救う。
君の愛に、我々は救われる。
だからこそ君をこの地で、お幸せにして差し上げねばならない!
新しきΩの君を戴いたのであれば、変わるのは此方の方であろう。
君を幸せにしたい。
それはおそらく、『Ω女王』であっては成らぬ事だ。
「視作生は、視作生だ!間違えてはいけない」
君は、視作生か。
君は、君だ。
それは、そうだ。
女王でもリリィでもない、君は視作生で在る。
そうであったか、承知致した!
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