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ツムギ

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6人台本

『アイオーンに祝福を』(女6)約50分

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登場人物(女:6)

・アイ/女
明るく元気な天使。ミシュエルの弟子。

・イラ/女
少しクールな悪魔。ルシュエラの弟子。

・ミシュエル/女
心優しい天使の国の長。

・ルシュエラ/女
強気な性格の悪魔の国の長。

・カミュー/女
野望を持ったミシュエルの側近、副天使長。

・ゾーラ/女
ルシュエラを慕うルシュエラの側近。

【時間】約50分
【あらすじ】
天使の国アイリシュ。悪魔の国ゴルオーン。二つの国はかつて大きな戦争が起きていた。今は争いはなく平和だが、多くの犠牲を出した事により国同士の仲は良くはない。しかし、時を経た今二つの国は手を取り合うべきだと天使のミシュエルは主張する。



【本編】



アイ「黒色の羽だ!」

イラ「え?」

アイ「貴方、誰?アイリシュ国の宮殿の前にいるなんて、何か用?」

イラ「…そっちこそ、誰?」

アイ「あ、ごめんなさい!私はアイ。ここ、アイリシュ国の天使!」

イラ「アイリシュは天使の国でしょ。そんな白い羽、アイリシュの天使以外にいないよ」

アイ「そうか…私、天使以外の人初めて見たの。確か、黒い羽って隣国の悪魔だよね?黒い羽、すっごくかっこいい~!」

イラ「…私はイラ。悪魔長のルシュエラ様にアイリシュの宮殿で会議があるから、終わるまで外で待ってる様に言われたの」

アイ「そうなんだ。私も天使長のミシュエル様にお外で遊んでる様に言われたんだー。大人の会議ってとっても長いんでしょ?」

イラ「みたいだね」

アイ「ねぇ、良ければ一緒に遊ばない?私暇なんだ~」

イラ「え、でも…私悪魔だよ?」

アイ「何か問題があるの?」

イラ「…いや、別に……」

アイ「じゃあ遊ぼう!あっちに綺麗な庭園があるの」

イラ「あ、待って!」


会議室。

ミシュエル「来てくれてありがとうございます、ルシュエラ、ゾーラ」

ルシュエラ「畏まらなくていい、ミシュエル。それで今日は何故、我々悪魔が天使の国の宮殿まで呼び出されたんだろうな」

ゾーラ「隣国とは言え、我ら悪魔はここに長居したくありません」

カミュー「分かってますよゾーラ。今は我らが主君の会話中。側近とは言え、あまり余計な口を出さない方がよろしいですよ?」

ゾーラ「なんだと、カミュー!?」

ルシュエラ「やめろ、二人とも。…で、何の用だ?ミシュエル」

ミシュエル「…先日送った手紙は読んで貰えたでしょうか?」

ルシュエラ「その手紙は送り返した。……私と君の仲だ…お前が直接話し合いたいと言って来たから、来てやったまでだ」

ミシュエル「分かってます。…ですが、やはり天使の国アイリシュと悪魔の国ゴルオーンの和平を認めてくれませんか?」

ルシュエラ「またその話か?国としてはそれぞれ小さいが、種族が違う我々はいがみ合いが続いているんだぞ?」

ミシュエル「そんな事…」

ルシュエラ「私達を忌み嫌ってるのはお前達だろう?ここへ来る途中、何度もこの黒い羽を見られては怪訝な顔をされた」

ミシュエル「それは、みんな貴方達を誤解しているんです!天使と悪魔が争いあっていたのは遥か昔。今は争いもなく穏やかな日々が続いています。我らは争うのでなく、手を取り合い新たな道を突き進むべきなのです」

ゾーラ「お言葉ですがミシュエル様。貴方の望む未来への希望は素晴らしいものと思われますが、それは夢物語。今更悪魔と天使が共に歩むと言う選択肢は、選びがたいものと思われます」

ルシュエラ「その通り。長きに渡るいがみ合いの末、我らの間には亀裂が残った。それを今更変えることは出来ない」

ミシュエル「変えようとしないままでは亀裂は埋まりません」

ルシュエラ「…そうまでしてその亀裂を直したいのか?」

ミシュエル「手を取り合う道はあるはずです。昔の様に…そうではありませんか?」

ルシュエラ「……ないな。これ以上は話の無駄だ。行くぞゾーラ」

ゾーラ「は、はい!」

ミシュエル「待って、ルシュエラっーー」

カミュー「ルシュエラ殿は何に怯えてらっしゃるのですか?国を奪われると思っての抵抗ですか?…はたまた凶暴な本性を隠すためでしょうか?」

ミシュエル「カミュー?」

ルシュエラ「何が言いたい副天使長」

カミュー「いえ、悪魔とは元は凶悪な存在。その内に秘められし凶暴性が暴走した事により、大昔の戦争が勃発したのではなかったですか?」

ゾーラ「過去の話だ。今はそういった理性を飛ばす奴はいない。過去の出来事を持ち出し、いつまでも我々と対立しようとするのはそっちの方だろう?」

カミュー「悪魔と言う凶暴な存在に怯えて何が悪いんでしょうか?」

ゾーラ「貴様、やはり我ら悪魔を愚弄してるだろう!?」

ルシュエラ「落ち着けゾーラ。そいつの言う事にいちいち突っかかるな」

ゾーラ「しかし、ルシュエラ様…」

ルシュエラ「喧嘩なら私に直接言え。そのくらい買ってやる」

ミシュエル「カミュー、私の前で悪魔に無礼を働くなと、以前も注意しましたよ?何故約束を破るのですか!?」

カミュー「すみません…ただ、私はアイリシュの為に発言したまでですので」

ルシュエラ「腹の立つ腹心だが、言ってる事は一理ある。だが、和平を結ぶにはそういう奴がいる限り難しいだろうな」

ミシュエル「…どうしても、ですか?」

ルシュエラ「…どうしてもだ。あと、カミュー」

カミュー「はい?」

ルシュエラ「怯えてるのは我々に対してか?」

カミュー「はぁ?」

ルシュエラ「行くぞ、ゾーラ」

ゾーラ「あ、お待ちください!ルシュエラ様」

カミュー「……」



アイ「えー、悪魔の国ってマシュマロないのー?」

イラ「むしろアイリシュには激辛ラーメンってないの?ありえないんだけど」

アイ「イラちゃんって辛いの好きなの?私も大好き、カレーは辛口だよね?」

イラ「カレーは甘口でいいよ…」

ルシュエラ「イラ、こんな所にいたのか?表の方に居ないから探したぞ」

ゾーラ「宮殿の裏にはこんな庭園があるんですね。これは美しい」

イラ「ルシュエラ様、ゾーラ様!お疲れ様でございます」

ルシュエラ「うん、待たせてしまってすまなかったな」

イラ「大丈夫です、アイと一緒にいましたので」

ゾーラ「…天使?」

アイ「あ、アイです!ミシュエル様の弟子でございます!」

ルシュエラ「ミシュエルの…そうか、君が……。私はゴルオーン国の悪魔長、イラの師匠でもあるルシュエラだ。こっちはゾーラ」

アイ「あ、貴方が悪魔長…。凄い、イラちゃんより大きくて綺麗な黒い羽…!」

イラ「っ、私だってもっと大きくなったらルシュエラ様みたいな羽になれるもん」

ゾーラ「おやおや、何をルシュエラ様と張り合ってるんだい、イラ?」

イラ「そういうわけでは…」

アイ「私、イラちゃんの羽も好きだよ?」

イラ「……そう?」

アイ「うん!」

イラ「私も、アイの羽…綺麗で好き」

アイ「本当?嬉しい!」

ゾーラ「随分仲良くなったんだね?今日会ったばかりだろう?」

アイ「そうなんです!でも、イラちゃんと話すのとっても楽しい!ねぇ、まだ遊べる?」

イラ「え、……あ…」

ルシュエラ「あー、今日はもうゴルオーンに帰らなくちゃいけないんだ」

アイ「えー、遊べないの?」

イラ「ルシュエラ様、次此処に来るのはいつですか?」

ルシュエラ「うーん、そもそもアイリシュに来る事自体滅多になかったからなぁ。イラも私の弟子だから連れて来ただけで、毎回連れて来るとも限らん」

アイ「じゃあ次いつ会えるか分からないって事?」

イラ「そんなぁ…」

ゾーラ「思ってるより仲が良くなってしまったみたいですね」

ルシュエラ「だな…引き離すのが可哀想になってきたよ」

アイ「イラちゃん…」

イラ「アイ…」

ルシュエラ「はぁ、仕方ない。あそこを教えてやるか」

アイ「あそこ?」

ゾーラ「…ルシュエラ様、まさか」

ルシュエラ「そのまさか。着いておいで、二人とも…そう遠くはない」

イラ「は、はい…」

アイ「はーい!」

ゾーラ「…全く、イラに甘いのですから…」



イラ「ルシュエラ様…此処は森の中ですよ?」

アイ「空気が気持ちいいね!あ、開けた所に湖がある」

ルシュエラ「此処はゴルオーンとアイリシュの境界にある森だ。普段は別の場所から行き来は出来るが、此処は木々に覆われてるから人気(ひとけ)は少ない。悪魔と天使が仲良くしてると気にするやつが多いだろ?その点この森はこっそり遊ぶには打って付けだ」

イラ「そんな場所…教えて良いのですか?」

ルシュエラ「構わない。私も此処を使ってた事があるからな」

アイ「そうなんですか?って事は、ルシュエラ様にも天使のお友達が?」

ルシュエラ「まぁ、そんな所だ…。因みに、ミシュエルもこの場所を知っている。それぞれの国の長として、悪魔と天使が会う事が出来る場所の存在は把握してないといけないからな。アイ、帰ったらミシュエルにイラとこの場所の事を伝えるんだぞ?和平を望むあいつはきっと喜ぶはずだ」

アイ「分かりました!」

ルシュエラ「そして、この森で会う時は必ず、それぞれ私とミシュエルに事前に報告しておく事、いいね?」

アイ「はい!」

イラ「はい」

ゾーラ「…いーんですか?こんな場所を子供達に教えて…」

ルシュエラ「私もこの子らと同じ時に此処を使ったから、いいんだよ」

ゾーラ「…ルシュエラ様がいいというなら私は目を瞑ります」

ルシュエラ「ありがとう、ゾーラ。…そうだ、アイ。これをあげよう」

アイ「なんですか?…わっ、綺麗な羽細工…!」

ルシュエラ「これは私の羽を使って作った羽細工だ。此処は悪魔の国と天使の国の境目だが、ぎりぎりゴルオーンの敷地内だ。ミシュエルの許可とこの羽細工を持ってれば大きなトラブルは起きないだろう」

アイ「ありがとうございます、ルシュエラ様!見て見てイラちゃん、すっごく綺麗だよ!」

イラ「私も持ってるよ、ルシュエラ様の羽細工はどれも素敵なの」

ルシュエラ「さぁ、今日は遅いしもう帰ろう。遊ぶのはまた日を改めな」

イラ「分かりました」

アイ「はい!…早速明日遊ぼう、イラちゃん」

イラ「え、明日?急だね…私は遊びたいけど…」

ルシュエラ「いいよ。アイ、忘れずにちゃんとミシュエルに話すんだよ」

アイ「はい!早速お伝えに行ってきます!ばいばい、またねイラちゃん!」

イラ「ば、ばいばい!」

ゾーラ「賑やかな子ですね」

ルシュエラ「元気があって良いじゃないか。イラの友達になってくれたんだし」

イラ「とも…だち?」

ルシュエラ「おや?違ったかな?」

イラ「…私とアイは友達って言っていいのですか?」

ルシュエラ「いいと思うぞ。誰が見ても同年代の友達が出来たんだと思うさ。な、ゾーラ」

ゾーラ「えぇ、あまり親しい相手がいなかったイラが…天使とは言え友達を作るなんて…。それにあの子とても良い子そうじゃない」

イラ「そっか…アイと友達…明日アイにも教えてあげなきゃ」

ルシュエラ「ふふ、そうしなさい。さて、帰ろうか二人とも」

イラ・ゾーラ「はい」(それぞれのタイミングで、被らなくて良い)


数日後。

アイ「それでですね、この間イラちゃんが持ってきてくれた激辛グミがすっごく美味しくて!私今まであんなに辛い食べ物食べた事なくてびっくりしたんですよ!」

ミシュエル「ゴルオーンの食べ物って辛い物が多いですよね。私は辛いのが苦手だから、アイは凄いですね」

アイ「ミシュエル様も辛いの苦手なんですか?イラちゃんも辛いの得意じゃないって言っててね、私があげたマカロンに凄く喜んでくれたんです!」

ミシュエル「そうなんですか?良かったですね」

アイ「今日もこれから遊ぶ約束してるんです!遊びに行っていいですよね?」

ミシュエル「もちろんですよ。午前の授業も頑張ってましたから」

アイ「ありがとうございます!」

ミシュエル「…ところでアイ、あれを見せてくれませんか?」

アイ「え、またですか?いーですよ、はい!」

ミシュエル「ありがとうございます」

アイ「ルシュエラ様から頂いた羽細工、なんでそんなに何度も見たがるんですか?ルシュエラ様にお願いして、ミシュエル様にも同じ物が作れるかイラちゃんに聞いてみましょうか?」

ミシュエル「…いいんです。お願いしたところでルシュエラは私の為に羽細工は作ってくれません」

アイ「…何でですか?ルシュエラ様、お優しいのに」

ミシュエル「…優しいんです。私以外には……」

アイ「…ミシュエル様、一体何をやらかしたんですか?」

ミシュエル「あはは、手厳しいですね。…そろそろ行かなくていいんですか?」

アイ「あ!本当だ、いってきまーす!」

ミシュエル「行ってらっしゃい」

カミューが入ってくる。

カミュー「失礼します、おっと!」

アイ「あ、カミュー様!ごめんなさい、急いでて!」

カミュー「アイ、急いでても廊下を走るんじゃない!…まったく」

ミシュエル「ふふ、元気ですよね…アイは」

カミュー「元気すぎますよ。あの子は未来の天使長と言う立場なのに…」

ミシュエル「まだまだ子供なんですから、大目に見てあげて下さい。カミュー」

カミュー「貴方は甘すぎます。そんなんだからルシュエラ殿にあしらわれるんですよ」

ミシュエル「あはは…そうですね…。アイリシュとゴルオーン…種族は違えど平和な世界を望む想いは同じはずなのに…どうしても私の言葉ではルシュエラに届きませんね…」

カミュー「…ミシュエル様、和平以外の選択肢は望まないのですか?」

ミシュエル「和平以外…?」

カミュー「例えば…ゴルオーンへの進行…」

ミシュエル「カミュー、笑えない冗談は嫌いですよ」

カミュー「冗談?おかしな事を…国同士の和平を向こうが望まないなら手中に収めてしまえばいい。これもアイリシュが他国に認められる方法です」

ミシュエル「他国に認められる…それは大切な事ではありますが、また争いを起こして傷付く者が増えるなんて許されません」

カミュー「我が軍が負けるとお思いで?」

ミシュエル「どの国だろうと民が傷付くのは許さない」

カミュー「…出過ぎた真似をお許しください。我が国のためにした発言で御座います」

ミシュエル「…貴方の気持ちは理解出来ます。ですが、強硬手段は取らない。誰も血を流さない方法を取りたいんです。だから私は、何度断られてもルシュエラに和平の交渉を望むのです」

カミュー「はい……」



イラ「アイ!」

アイ「お待たせ、イラちゃん!」

イラ「全然待ってないよ。それよりこれ、この間アイが気に入ってた激辛グミ。ルシュエラ様にアイがこれを気に入ったって話したらね、いっぱい買ってくれたんだよ。私辛いの得意じゃないからあげる」

アイ「本当!ありがとう、ルシュエラ様にもありがとうって伝てくれる?」

イラ「うん、いいよ。それで、今日は何して遊ぼっか?」

アイ「湖があるし、水遊びしない?今日暑いしさ」

イラ「うん!」



ルシュエラ「それで、水遊びをして来たと…」

ゾーラ「頭からつま先までびしょ濡れじゃないか…風邪引くぞ」

イラ「…楽しくてつい…」

ルシュエラ「…まぁ、仲が良いようで安心だね。シャワーでも浴びて来なさい」

イラ「はい、失礼します」

イラ、去る。

ゾーラ「…ルシュエラ様、アイは和平交渉を望むミシュエルの弟子ですよ。あちらはこれを機に交渉を進めようなど思ってませんよね?」

ルシュエラ「ミシュエルはそんな事考えないよ。純粋に自分の弟子が新しい友人を作った事を喜んでるだろうさ。私だって同じ気持ちだ」

ゾーラ「ですが、それぞれ悪魔長と天使長の弟子。長の弟子は将来長となり、国を治める立場になる。その弟子が仲良くなってしまったら、ミシュエルが望む和平交渉が成立してしまいませんか?」

ルシュエラ「…そうなったらそうなっただ。私だって好きで和平を断ってる訳じゃない。ただ、心配なだけなんだ。ミシュエルはお人好しだろう?悪い事に流されてしまうかもしれない。その弟子であるアイも危険な立場だと思ってる。それを理解するまで、私が長である限りはアイリシュとの和平は望まない」

ゾーラ「…固い意志があるのなら、私は何も言いません」

ルシュエラ「そうしてくれ…」



アイ「ただいま帰りましたー!」

ミシュエル「おや、おかえりなさい」

カミュー「!?…何で全身水浸しなんだい?アイ」

アイ「イラちゃんと湖で遊んでました」

ミシュエル「ふふ、風邪を引きかねませんね、早く着替えないと」

カミュー「イラ?…悪魔長の弟子か?」

アイ「はい、あれ?カミュー様には話してませんでしたっけ?この間、悪魔のルシュエラ様達が来ていたじゃないですか、その時イラちゃんと仲良くなったんです!それからルシュエラ様に教えていただいた場所で遊ぶ様になったんです」

ミシュエル「そう言えばカミューに話すのを忘れてましたね…」

カミュー「…ルシュエラ殿が、悪魔長の弟子と会える場所を教えた…?」

アイ「はい、それからよく遊んでるんです!あ、今日激辛グミをいっぱい貰ったんです!カミュー様もいります?」

カミュー「…っ、私は辛いのは苦手だからいらないよ」

アイ「そうですか?美味しいのに…くしゅんっ!うぅ、体冷えて来ちゃった…」

ミシュエル「あらあら、早く体を拭いて着替えなさい」

アイ「はい、失礼します。ミシュエル様、カミュー様!」

カミュー「……」

ミシュエル「まったく、元気なのは良いですが少々心配してしまいますね…そうは思いませんか?カミュー」

カミュー「…そうですね」

ミシュエル「……羨ましいものですね…」

カミュー「…ミシュエル様?」

ミシュエル「あ、いえ…なんでもありませんよ……」



アイ「イラちゃーん!」

イラ「アイ。……と、誰を連れて来たの?」

アイ「え?」

イラ「後ろ、その木の陰に誰かいるよ」

ミシュエル「…気付かれてしまいましたか?」

アイ「ミシュエル様!?」

イラ「え、天使長の…?」

ミシュエル「こんにちは、ミシュエルです」

イラ「い、イラと申します…」

アイ「何でミシュエル様が此処にいるんですか?」

ミシュエル「えーっと、アイがいつもイラちゃんの事を楽しそうに話すから、どんな事をして遊んでるのか気になってしまって…アイの跡をつけて来てしまいました」

アイ「え?じゃあミシュエル様も一緒に遊びたかったんですか?」

ミシュエル「そう…言うわけではありませんが…」

アイ「じゃあ今日はミシュエル様も一緒に遊びましょう?ね、良いよねイラちゃん?」

イラ「うん、いいよ」

アイ「やったー!じゃあ今日は~……あ!イラちゃんにあげるマカロン持ってくるの忘れてた!ひとっ飛びして取って来るから待ってて!」

イラ「え、そんな大丈夫だよ」

アイ「この間激辛グミをいっぱいくれたんだからお返し!すぐに戻ってくるから」

イラ「う、うん…」

アイ「あ、ミシュエル様これ!」

ミシュエル「ん?…ルシュエラの羽細工ですか?」

アイ「ルシュエラ様に此処にくる時はこれをお守りとして持っておかないといけないって言われたんです。なので私が戻って来るまで持っておいてください」

ミシュエル「え、あぁ…」

アイ「では、行って来ますねー!」



ミシュエル「…私はこれがなくても問題ないのに…」

イラ「…天使長なのにお一人でゴルオーンの領地に来て大丈夫なんですか?」

ミシュエル「アイリシュとゴルオーンに国境問題は特にありません。それにそう言った問題を問い詰めるのは私達ですから、ルシュエラと私が許可を出してるこの場所を誰も咎める事は出来ませんよ。まぁ、職権濫用と言われてしまえばそれまでですが…」

イラ「何でアイに許可を下さったんですか?この場所を教えてくれたのはルシュエラ様ですが、ミシュエル様は反対なさらなかったんですか?」

ミシュエル「反対はしてません。だって可愛い弟子が友達と遊ぶと聞いて反対なんてするはずがありません。日々の授業さえ真面目に受けてくれれば私はそれで満足ですから」

イラ「…ルシュエラ様も似た様な事を仰られてました。そのおかげで、アイと友達になれたんです」

ミシュエル「ルシュエラも…そうですか…」

イラ「……アイから聞いてたんですけど、ミシュエル様の羽、大きくて真っ白で…とても綺麗ですね!この間アイリシュに行った時、天使の羽を見かけたんですけど、どれも白くて綺麗で…でも、ミシュエル様の羽は一層美しいです!」

ミシュエル「私の羽が綺麗?…ありがとう。でも、私は君の様な黒い羽がかっこよくて素敵だと思いますよ。ルシュエラの黒く艶(つや)やかな羽…、私はそっちの方が好きですけどね」

イラ「アイと同じ事を仰いますね。私は白い方が好きだけどなぁ」

ミシュエル「ふふ、好みもそれぞれ違いますからね…」

イラ「でも、私もルシュエラ様の黒い羽が一番ですかね。力強くてかっこよくて、憧れです」

ミシュエル「…イラちゃんはルシュエラが大好きなんですね」

イラ「はい!」

ミシュエル「元気なお返事ですね、…私も昔はそうやって素直にものを言えたのに…」

イラ「…何かあったんですか?」

ミシュエル「…大人のお話です」

イラ「…難しい話ですか?」

ミシュエル「…そうですね、でも、いずれ君もこういうお話をするでしょうね」

イラ「それは、悪魔長になるから?」

ミシュエル「……私はね、アイリシュとゴルオーン、二つの国の平和を望んでいるんです。争い傷つけ合った過去があれど、それはもう過ぎた話。でも、それを忘れた訳ではない。それを踏まえた上での和平…手を取り合ってこの先、二つの国が永く続く様に……」

イラ「…ミシュエル様」

ミシュエル「難しい話でしたね、すみません」

イラ「いえ。…でも、素敵な考えだと思います。私も喧嘩するより仲良くする方が絶対良いと思いますから」

ミシュエル「イラちゃん…」

イラ「将来の事はまだ分からないですし、ルシュエラ様は和平提案に積極的ではないんですよね。いつか私がルシュエラ様を納得させて、アイリシュと仲良く出来る未来を見つけます!…だから、そんな顔をなさらないで下さい、ミシュエル様。アイが帰って来た時、びっくりしちゃいますよ?」

ミシュエル「…そうですね、ありがとうイラちゃん。…でも、和平を望むのは私の意志ですから、君が必要と思ったら提案をしなさい。まだまだ覚えなきゃいけない事はたくさんあるんですから」

イラ「はい」

ミシュエル「ところで、今日は何をして遊ぶつもりだったんですか?」

イラ「今日はですねー……?誰?」

ミシュエル「え?」

銃声。

ミシュエル「っ?」

①①
背中を撃たれて、倒れ込むミシュエル。

イラ「え?」

ミシュエル「うっ!?がはっ」

イラ「ミシュエル様!?」

カミュー「馬鹿馬鹿しい…」

ミシュエル「何で……かみゅ……!?」

カミュー「アイの後を追って、ゴルオーンに繋がる森に行くと言うから、何をするのかと思えば…、悪魔の子供にくだらない理想を語って…呆れたものだ」

イラ「貴方…、確か副天使長の…?」

カミュー「えぇ、カミューと申します。未来の悪魔長、イラ」

イラ「な、何でミシュエル様を銃で撃ったんですか!?」

カミュー「…その天使が甘えた事を抜かすからだ。我が国は弱い。しかし秘めた軍事力はある。ゴルオーンを乗っ取れる程のな」

イラ「っ、戦争をするつもりですか!?」

カミュー「最初はそうしたくなかったさ。しかし、ミシュエルが和平和平としか抜かさないのに腹が立ってきてな」

イラ「…それが、ミシュエル様を撃った理由!?」

カミュー「……理由はそれだけじゃない。ミシュエルはルシュエラを慕っている。もし和平が成立しても我がアイリシュ国はゴルオーン国の下になる。私はそれが許せないんだ」

イラ「和平とは、過去のいざこざを共に乗り越え、新たな道を歩み続ける為のもの。何故上とか下があるんですか?」

カミュー「子供には分かるまい。並び立つと言う選択肢は難しいものなんだよ」

イラ「出来るか分からないのに何で否定するんですか!」

カミュー「出来るなら既にやってるさ!出来ないと分かってるから、ルシュエラも和平に賛同しないんだろう」

イラ「そんな…」

カミュー「だから、私が指揮権を握る。邪魔な存在は全て消す。それが正しい国の在り方だ」

イラ「国のトップである天使長を撃ち抜いて、何が国の在り方だ…!」

カミュー「ふん、減らず口を叩けるのは今の内だぞ。私はこの状況を得られて感動している。撃たれたミシュエル、私とお前だけで目撃者はなし、お前を黙らせる方法は幾らでもあるし、お前をミシュエル殺しの犯人に仕立て上げる事も出来る」

イラ「え!?」

ミシュエル「やめ…ろ…」

カミュー「まだ生きてたのか、死に損ない。まぁいい…アイも大好きな師が死んで、その疑いが悪魔の友達だと知ったらなんて顔をするだろうなぁ?」

ミシュエル「か、みゅー…!」

カミュー「アイは私の傀儡となる。そうすればこの国は私の物だ」

ミシュエル「そんなこと…許す、はずがない…!」

カミュー「許されたいと誰が言った?」

ミシュエル「君は…、そんな事……しちゃ、いけないっ」

カミュー「っ!うるさい!その頭撃ち抜いてやる!」

イラ「やめてぇ!」

①②
イラとミシュエルの前にルシュエラとゾーラが降り立つ。

カミュー「っ!?」

ルシュエラ「それくらいにしときな、カミュー」

カミュー「ルシュエラ!?」

ゾーラ「イラ、大丈夫!?」

イラ「ルシュエラ様、ゾーラ様…?何で…」

ルシュエラ「私があげた羽細工はね、持っている者に危害が加えられたら私の下に連絡がくるものなの。だからすっ飛んで来た。まさかミシュエルが持ってるとは思わなかったけど…」

カミュー「くそっ!」

ゾーラ「ミシュエル、ミシュエルしっかりして!」

ミシュエル「う、…私は…もう…」

イラ「ダメ!死なないでミシュエル様!」

ルシュエラ「っ…、カミュー…てめぇ、凶暴性を抑えれてねぇのはどっちだ!ミシュエルのおかげで副天使長と言う立場に居るくせに、何故ミシュエルを殺そうとした!?」

カミュー「ミシュエルのおかげ?…はっ、私は私の力で此処まで来た。ミシュエルに感謝なんてするわけがない」

ルシュエラ「だが、お前の立場で副天使長になれたのは、ミシュエルがお前を選んだからだろ?」

カミュー「私の実力だ!」

ルシュエラ「…くそっ、半分我が種族の血が流れてるのに、争い合うつもりか?」

イラ「え?」

カミュー「私を捨てた国なんぞ、アイリシュの支配下になれば良い。あくまでアイリシュの方がマシと言うだけだがな」

ゾーラ「え…今の発言はどういう事ですか?」

ルシュエラ「…カミューは悪魔の父と天使の母の間に生まれたハーフなんだ。見た目や羽の色は天使寄りだが…」

ゾーラ「え!?」

カミュー「その見た目のせいで父とゴルオーン国に捨てられた。母は天使長とも繋がりのある忙しい人だった。だが、女手一つで私を育ててくれ、母の立場もあり、私は今や副天使長にまでなれた。…しかし、結局そこまでだ。…私はしたいんだよ、ゴルオーンへの復讐を…」

ミシュエル「だめ……そんな、こと…、私達は…和平…を」

カミュー「っ、まだそんな事を抜かすか死に損ない!さっさと死ねぇ!」

ルシュエラ「やめろ!カミュー」

ミシュエルの前に立ち塞がるルシュエラ。

カミュー「邪魔だ、お前から撃ち殺すぞルシュエラ!」

ルシュエラ「ここで戦争を起こしたくない。今すぐその銃をおろして降伏しろ。さすればミシュエルを撃ったとしても命までは助けてやる」

カミュー「こんな命、今更どうなったって良いさ!私はゴルオーンへ進軍さえ出来ればいいからな」

ルシュエラ「力尽くで拘束するしかないか…銃は抜きたくなかったが…」

カミュー「私と早撃ち勝負でもしようって言うのか?」

ルシュエラ「悠長な事はしてられん…ミシュエルの命も危ないしな」

イラ「ルシュエラ様…」

①③
アイが現れる。

アイ「ごめーん!イラちゃんにあげるマカロン何処に置いたか分かんなくなって探してたら遅く…なった……?」

イラ「アイ!?」

アイ「え、ど、どうしたのみんな?何でカミュー様やルシュエラ様達がいるの?…え、ミシュエル様?」

ルシュエラ「アイ!来るんじゃない!」

カミュー「チャンス!死ね、ルシュエラ!」

ルシュエラ「っ!?」

ゾーラ「ルシュエラ様、危ない!」

ルシュエラを庇い、脇腹を撃たれるゾーラ。

ゾーラ「がはっ!?」

ルシュエラ「ゾーラ!」

カミュー「ゾーラがルシュエラを庇ったか。しかし、今度はこっちがお留守だぞ!」

ミシュエルの腹部を撃つカミュー。

ミシュエル「あがっ!?」

イラ「ミシュエル様!」

アイ「え?」

ルシュエラ「…!?…カミュー!!」

カミューの胸を撃つルシュエラ。

カミュー「っ!?ぐうぅ…!がはっ!」

アイ「え、え!?」

カミュー「ふ、ふふふっ…これで、ミシュエルは今度こそ…ふふふ、ふ…ふ………」

ルシュエラ「……クソ野郎」

トドメをさす為、もう一発心臓に撃つルシュエラ。

アイ「カミュー様…?」

イラ「ゾーラ様!ミシュエル様ぁ!」

ゾーラ「っ、私は…無事だ…ミシュエル…は?」

ルシュエラ「ミシュエル…」

ミシュエル「ルシュ…エラ…うっ、私……」

ルシュエラ「……助けられなくてごめんな…ミシュエル…」

ミシュエル「…いい、んです…。私は…甘い考え、しか…持ち合わせて…ないの…です…から」

ルシュエラ「…私が和平を認めてれば、お前は死なずに済んだと思うか?」

ミシュエル「…カミュー…は、許さない…と、思います…」

ルシュエラ「…そうだな」

ミシュエル「ルシュエラ…アイを…アイリシュを……」

ルシュエラ「……勿論だ」

ミシュエル「私の、最後の…お願い……貴方の羽細工を…もう一度…私に…」

ルシュエラ「うん、うん…作る。作ってやる。昔お前が大事にしてくれた物と同じ物を…いや、もっと美しい物をお前の為だけに作ってやる…!」

ミシュエル「やった…ありがとう、ルシュエラ…お姉ちゃん……」

ルシュエラ「っ……」

①④

アイ「ねぇ、一体どういうこと?…ミシュエル様、どうしちゃったの?カミュー様?」

イラ「アイ!」

アイ「…イラちゃん…何があったの?…何で、何が起こったの?」

イラ「私、何も出来なかった…ごめん、ごめんなさい…」

アイ「…何でイラちゃんが謝るの?何で泣いてるの?…ねぇ、どういう事?」

ルシュエラ「…カミューが反乱を起こした。カミューなりに考える所はあったんだろうが、ミシュエルを撃ち殺した事に変わりはない。それに対して私がカミューを殺したまでだ…。怖い場面を見せてしまったな…」

ゾーラ「内に秘めた凶暴性を隠せなかったのは、カミューの方でしたね…」

ルシュエラ「副天使長になれたのは確かに実力だが、少なからずミシュエルのおかげでもあったのに…馬鹿野郎が…」

アイ「…ミシュエル様が撃たれた…、カミュー様も死んだ?」

ルシュエラ「アイ…酷な事だと思う。しかし、現実を受け入れないといけない。天使長、副天使長が亡くなった今、国は必ず動く」

アイ「嘘だ…」

ルシュエラ「嘘じゃない。そして、未来の天使長である君は必ずそれに巻き込まれる」

アイ「嘘だぁ!ミシュエル様が…カミュー様が死んだなんて…ねぇ、起きて下さい!ミシュエル様、ミシュエル様ぁ」

ルシュエラ「静かにしないか」

アイ「でも!」

ルシュエラ「静かにしろ」

アイ「っ…」

イラ「!……ルシュエラ様が……泣いてる」

ルシュエラ「今は静かに、ミシュエルとカミューを弔ってやらないといけない…声を荒げるな…。ミシュエルが心配で逝けないだろ」

アイ「う、うぅぅぅ……」

ルシュエラ「……何が、お姉ちゃんだ。今更、昔の呼び方をするんじゃねぇよ…」

①⑤
数日後。

ルシュエラ「体調はどうだ、ゾーラ」

ゾーラ「ルシュエラ様、お見舞いに来てくださりありがとうございます。調子も良いですよ」

ルシュエラ「なら、良かった。あの時、君にはカミューの銃弾に体をはって庇って貰ったからね。感謝しても仕切れないよ」

ゾーラ「そんな…主君を護るのが私の務めですから」

ルシュエラ「…私まで死んでたらと思うと、それはそれで恐ろしいな」

ゾーラ「……ルシュエラ様、アイリシュとの合併を本気でお考えなんですか?」

ルシュエラ「あぁ、アイも納得している」

ゾーラ「あれほど和平を反対していたのに、いきなり合併なんて…」

ルシュエラ「…それがアイを守れる方法だからだ。私がアイの一番近い所にいてやる。それがミシュエルへの弔いでもあるからな…」

ゾーラ「…ミシュエルはルシュエラ様の事を姉の様に慕ってましたからね。昔はあの森でよく遊んでらしたんでしょう?」

ルシュエラ「あぁ、子供の頃は何も考えずに無邪気に遊んでいた…。イラとアイの様に…。しかし、大人になり、国を統べる立場になると余裕なんてなくなった。その中でも変わらず平和を貫こうとするミシュエルは、私より立派だったな…」

ゾーラ「ルシュエラ様も周りからどう思われようと、互いの国のために裏で動いていたではありませんか。だからこそ、今回の合併の話がスムーズに進み出したのではないですか?」

ルシュエラ「ミシュエルが死んで、アイが新たな天使長になる。あんな幼い子が大人の世界に揉まれて壊れてしまわないように私がアイを導く。互いの国の為になれるか分からないが、少なくともアイとミシュエルの為になるだろう」

ゾーラ「…国の名は、決まってるのですか?」

ルシュエラ「……アイオーン」

①⑥

イラ「アイ、大丈夫?」

アイ「…うん、色々起こって頭が追いつかないけど」

イラ「…天使長になるんだもんね」

アイ「いつかなるものだと思ってたけど、もうなっちゃうんだもん。びっくりだよね」

イラ「アイ…」

アイ「ミシュエル様がいつも言ってた。天使長は国の為、民のために頑張らないといけないんだって。ルシュエラ様も居てくれるみたいだし、私…頑張らないと……」

イラ「一緒に頑張ろう!」

アイ「え…?」

イラ「ルシュエラ様もいるけど、私だっている!いつか私も悪魔長になるんだから、私だってアイに負けないくらい頑張って、アイと一緒にアイオーンを素敵な国にしたいと思ってる!二人で…みんなで、一緒に…ね?」

アイ「…うん、うん…!」

イラ「だから、一人で頑張ろうとしなくてもいいんだよ…」

アイ「うん、一緒に…頑張ろう。一緒にいて…イラちゃん…!」

イラ「一緒にいる。ずっと一緒に…!」

二人の泣き声が響く。(約5秒)

①⑦
廊下。

ルシュエラ「…イラ、アイの所に行ってたのか?」

イラ「あ、はい…ルシュエラ様」

ルシュエラ「目が赤いけど、大丈夫?」

イラ「はい…」

ルシュエラ「…少し、いいかな。私の部屋で話したい事がある」

イラ「…はい」

移動する二人。

ルシュエラ「すまないね。そこのソファに座りなさい」

イラ「失礼します」

ルシュエラ「…」

イラ「それで、お話とは…」

ルシュエラ「……大した事ではない。これの出来を見てくれないか?」

イラ「…羽細工?…すごく綺麗…!」

ルシュエラ「ミシュエルに捧げる羽細工だ。今までで一番気合いを入れて作った」

イラ「…ミシュエル様もお喜びになると思います」

ルシュエラ「…ミシュエルはな、私の親友だったんだ。妹の様に可愛い奴だった」

イラ「…ルシュエラ様と仲の良かった天使って、ミシュエル様?」

ルシュエラ「うん、お前とアイの様に仲が良かったんだよ。今は、私だけになってしまったがな…」

イラ「…そうだったんですか」

ルシュエラ「意外だった?私とミシュエルの仲が良かったって」

イラ「え?」

ルシュエラ「大人達の目を盗んであの森でよく遊んでいた。大人になるにつれ、気が付けば遊ばなくなり、国の長として対立する立場…。あいつは大人になっても子供の頃の様に手を取り合って仲良くする方法を探してたと言うのに…。私は無駄だと突っぱね続けた…なぁイラ、私は間違っていたと思うかい?」

イラ「…分かりません、ミシュエル様の命が無事でも、カミューさんはミシュエル様の考えを反対していました。既に和平を結んでいようと、カミューさんの様な危険な思想を持った者達が裏で集まりでもしたら内部抗争は起こり得る。それは今も危うい状況ですが…」

ルシュエラ「だよなぁ…はは、これから大変になるな…」

イラ「そうですね。でも、ルシュエラ様は…ルシュエラ様もお一人ではありませんから」

ルシュエラ「……うん、お前やアイ、ゾーラ達がいる……ミシュエルもアイオーンの行く末を見守ってくれるだろう…」

イラ「はい、私もアイに負けないくらい…ルシュエラ様の様にお強く、ミシュエル様の様にお優しい長を目指します」

ルシュエラ「うん、うん……ありがとう、イラ。……ミシュエル、見ていてくれ。君の望んだ二つの国の平和…目指してみせるよ」


ミシュエル「私が愛したこの国を、私が愛した親友を、子供達を…民を…貴方達になら託せます。だからどうか、あの国が永く幸せに包まれますように。あの人にあの子達に……アイオーンに祝福を……!」

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