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エルフの王女と国を再建する

お母さん! シルフの思い!

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 _____ホワイトシーフ王国 中庭」____

 シルフの魔法によってネズミにされたセバスが、小さな隊長のように陣頭指揮を執り避難してきた街の住人達を宮殿内に誘導する。
 子供たちはセバスの姿を見て「ネズミさん可愛い」と指を差しながら笑みを浮かべる。
 それを見た大人たちも自然と笑い、場が和んだ。

 宮殿内には辺りを壁で囲まれた中庭があり、毎日庭師が手入れしている青々とした芝が敷いてある。
 その上に、10人は寝泊り出来るような仮設のテントのようなものが何個も設置され、町の住人が寝泊りするには十分な広さが確保されていた。
 庭の中央には暖を取るために、キャンプファイヤーのように幾つか薪が重なり合い、火が焚かれており、その火を見て、住人達は段々と落ち着きを取り戻していった。

 シルフは自分の部屋のバルコニーからその様子を柔和な表情で見ている。

「なんで、住人達を宮殿に呼んだんだ?」

「ん? なんでだと思う?」

 シルフが金髪をふわっとなびかせ、後ろを振り向く。
 そして、シルフが振り向き終わる前に、俺は問いに対して食い気味に回答した

「_____奴隷にするのか?」

「はあ? あなた、あたしがそんな極悪非道に見える?」

「... ...うん」

 シルフはしかめ面を浮かべたが、俺は心の中で「町をホワイトに破壊させたし、俺を殺す目的でゴーレムの森に追放させたじゃないか!」とシルフの傍若無人っぷりを非難。

「殺すよ?」

 シルフはいつも通りニコッと笑い、いつも通り殺人宣言をする。

「... ...ごめん」

「は? 何がごめんなの?」

「『極悪非道に見える?』って聞かれて『うん』って答えてごめんなさい」

「あたし、傷ついたんだけど」

「だから、ごめんって」

「何その投げやりな感じ」

「... ...」

 俺が何も言わずにいると、シルフは諦めたかのように。

「まあ、今回は許してあげるわ。次、言ったら殺すからね」

 このドSとドMなやり取りも段々と慣れてきた。
 というよりも癖になってきた自分が心にいるのが恐ろしい。
 そして、シルフは俺に手招きをして、バルコニーの手摺の位置まで呼び寄せる。

「町にいる時よりも良い顔してると思わない?」

 下を覗くとそこには、振る舞われたシチューを笑顔ですする街の住人達がいた。
 この表情を見て彼らが避難民と言ったら誰が信じるだろうか。
 彼らは一様に満足げな表情を見せ、まるで、幽閉されていた牢獄から生還したかのような顔つきをしている。

 シルフは夜風に自分の声を乗せるように俺に語る。

「いくら綺麗な町や国があったってそこにいる人の心が荒んでいたら、その美しさは作られた物に見えてくるわ。豊かな国っていうのは人々が生き生きとした表情を浮かべていなければいけないと私は思う。そして、そういう国を私は作っていきたい」

「随分と達観した考えをお持ちで... ...」

 自信に満ちた表情で語るシルフを見て、今の自分との違いを感じ、嫉妬した。
 シルフは王女で王女らしい振る舞いをして、考えも達観している。
 俺よりも若いのに... ...。

 俺は何回も何回も仕事を転々として、結局一番やりたくなかった実家の仕事を手伝っている最中に、この異世界に飛ばされた。
 環境・立場・世界が違うけれども、何故か俺は、国のトップであるシルフといずれは会社のトップになる自分を重ね合わせ、張り合っていたのかもしれない。

 希望や自信に満ちた言葉を聞いて無性に自分が恥ずかしくなった。
 止めればいいのに、シルフにイジワルな質問をぶつけた。

「そういう国を作りたいって言っても、みんなが賛同するとは限らなくないか? 反対の声もあるだろ?」

「え? そう? でも、みんな生き生きとしていた方が幸せでしょ?」

「それを苦痛って感じるやつだっているだろ。幸福感ってやつは人それぞれなんだよ」

 自分が言われた事のあるセリフを夢見る少女に泥をぶつけるように吐いた。
 嫉妬という感情は本当に嫌なもの。
 人も傷つけるし、自分も傷つける、自分をなりたくなかった人間にもさせる魔法の言葉。

「よく分からないわ。それに正直、私は住人達の為に国を作る訳じゃないから。私が見ていて幸せな気分になるならそれで良いのよ」

「ははは! それじゃ、ただの独裁者のようじゃないか!」

「優しい王様も悪魔のような独裁者も本質は一緒よ」

「... ...」
 
 シルフにいくら負の種を蒔いても、芽が出る事はないだろう。
 それほどに、シルフは自分を持っているし、曲げる気持ちもない。
 コンクリートのような心を持っているシルフに、俺は遂に言葉が出なくなってしまった。
 歳が離れている少女に論破されると息が詰まる。

「花島は優しい王様になりたいんでしょ?」

「悪魔のような独裁者よりはマシだろ」

「優しさだけじゃ、男も女もついてこないわよ」

「厳しいだけでもついてこないだろ」

「だから、あなたがシッカリと私をフォローしなさい」

 シルフはいつも通りニコッと笑う。

「そんな顔で俺を見るな。優しい王様はそんな顔を見せられたら断れないんだよ」

「知ってる」

 悪魔のような独裁者に使われる優しい王様も中々、悪くないか... ...。
 と思ってしまう自身のドM体質を恨む。

 しかし、今夜は幽霊の声のように聞こえる風の音が聞こえずにグッスリと眠れそうだ。
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