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【第二章 他国との交流編】

お母さん! 魔法の道具と新たな敵!

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  ◇ ◇ ◇

 そして、現在____。

 ヴァ二アルをマネージャーみたいなポディションに置くと作業効率は比較的に上昇した。
 部活をやっていた経験上、辛い練習も女の子に応援されたりするといつもより頑張れた気がした。
 それを国の復興にも応用した訳だ。

「うおー!!! 力がみなぎる!!!」
「仕事を頑張って、ヴァ二アルちゃんに褒めてもらうぞ!!!」

 男たちはいつもの3倍いや、5倍くらいのスピードで作業をこなしている。
 
「ふぁ・ファイトー! みなさん頑張って下さい!」

 俺はというと重たい物を持つのは苦手なので、応援しているヴァ二アルの揺れる乳を見ながら現場を監督しているような雰囲気を出していた。
 
「ヴァ二アルちゃんすごいね! みんな、すごいヤル気になってるよ!」

「ああ。そうだろう。この調子で行けば数年かかると思っていた国の復興が一年経たずに終わるかもしれん」

「うん。そうだね。早く戻るといいね」

 ホワイトは悲しそうに言った。
 シルフの命令もあってなのだが、この国を瓦礫の帝国にした張本人であるホワイトは責任を感じていたのだろう。
 現にホワイトは休みをほとんど取らないで作業に没頭していた。
 早くこの国を復興させるのはみんなの思いなのだが、それを一番望んでいたのはこのホワイトなのかもしれない。

「そうだ。ホワイト。お前もこれ飲め」

 俺はホワイトにコップに入った白い液体を差し出す。

「ん? これってヴァ二アルちゃんがみんなに配ってたやつ? 何か変な色... ...」

「これは元気になる飲み物だ」

「えー。何か胡散臭いな」

 まあ、確かに胡散臭さ抜群だ。
 疑いながらもホワイトは差し出した飲み物に口を付けると。

「んっ!? す・すごい! 本当に体の底から力がみなぎってくるみたいだよ! 花島! これ、なに!?」

「ふふふ。それは企業秘密だ」

「えー。気になる」

 そう。
 何を隠そう。
 これはヴァ二アルの身体から採取した液体を水で薄めたもので、若干の魔力を含む代物なのだ。

 ◇ ◇ ◇

 ____前夜。

「折角、魔力を沢山吸えたのに... ...」

 魔力を返したヴァ二アルはお菓子を取り上げられた子供のように悲しげな表情でポツリと嘆く。

「魔力を吸わせて貰えただけでも感謝しろみそ! あたしは絶対にあげないみそ!」

「え~。ゴーレムちゃんのも美味しそうなのに... ...」

「しゃらくせえみそ」

 これだけ枕元で騒いでいるにも関わらず、シルフは目を覚ますことがなく、ぐっすり眠っている。
 それだけ、魔力を吸収されるということは体力を消耗するのだろう。

「それにしてもヴァ二アル、お前、サキュバスだったんだな。サキュバスって種族は女だけだと思ってたから意外だったわ」

「うん。黙っててごめんね。驚くと思って... ...」

「後でシルフにも謝っておけよ。だらしない姿を見せたからあいつそういうのうるさいから」

「うん。そうする」

 こうやって話すと他の種族や人間との違いは分からない。 
 どこにでもいる気の弱そうな、スタイル抜群の女の子に見える。
 でも、こいつは元々男という事実は忘れてはいけない。

「おい。お前、どうやって今まで生き延びたみそ?」

 ヴァ二アルにゴーレム幼女が詰め寄る。
 確かに、先ほどのゴーレム幼女の話しぶりだと魔力がない環境だとこいつらの種族は生きていけない。
 
 だとすると、今までヴァ二アルは魔法使いと一緒にいないと生きていけなかったということ。
 新たな魔法使いの出現は吉報ではない。
 脅威である。

「あ・ああ。これがあったから... ...」

 ヴァ二アルはこの国に来た際に着ていた服から一本の小さなナイフを取り出し、俺とゴーレム幼女の前に差し出す。

「... ...ナイフ? にしか見えないが」

 俺が疑問を呈すると同時に横にいたゴーレム幼女は「なるほど」と呟き。

「これは魔具まぐだみそ。これから魔力を吸っていたみそね」

「う・うん。少ししかないからいつもお腹空いていたんだけど... ...」

魔具まぐ? 魔力がある道具の事か?」

 どうみても人間の俺には普通のナイフにしか見えないが... ...。

「まあ、過去の異物のようなものみそ。魔術師が長年使用したり、魔力がある生物が魔力を注いで作った物には稀に魔力が宿る。この世界で伝説の三大魔具くらい知っているか?」

 ゴーレム幼女は首を横に振る前に俺が何も知らないのを察した。

「... ...はあ。一つは”大剣ブラス”こいつは数百年生きたと言われるドラゴンが死ぬ際に落ちた牙だと言われ、三大魔具の中でも一番古い代物みそ。二つ目は”マンティコラの瞳”数千もの魔具を掛け合わせ、歴史上最高の魔術師であり、魔具職人でもあった”ヴァ二アル・クック”の最高傑作と言われているが能力どころか姿形すら不明みそ。そして、三つ目は花島もよく知ってる奴が持ってるみそ」

 サラッと出たけど、ヴァ二アル・クックってヴァ二アルと同じ名字... ...。
 血縁か何かなのか?

「え? そんな伝説級の代物見た記憶ないけど......」

 そんなもん見たら素人目でも分かるはずだが......。

「お前はもっと洞察力磨けー。ほれ、魔法少女達が持ってたあれみそ」

 あれ... ...。

「___あっ! 便所の棒!?」

「んあ? 便所の棒ってのは知らんみそが、あいつらの持ってた杖で間違いないみそ。あたしも初めて見た時は偽物だと思ったけどみそ」

 うそだろー!?
 あんなの、ウチの実家にもあるよ!
 こいつ、無知な俺を騙そうとしてるんじゃないか!?

 ゴーレム幼女の発言に疑問を感じていると横にいたヴァニアルがサッと図鑑のようなものを開き、俺に見ろと言わんばかりに差し出す。

「... ...これは?」

 本には”8首の多頭龍の首”という文字とともにイラストが描かれており、そのイラストは紛れも無い魔法少女達の持っていた”便所の棒”であった。

「これは魔具が書かれている図鑑だよ。この世界には数千の魔具があって贋作も多いから僕は持ち歩いているんだ。まぁ、魔力が強い魔具はこの本を見なくても分かるけど、弱い物は本で確認した方が確実だからね」

 まぁ、少ない食料を得るためにヴァニアルにとってこの本は必需品なのだろう。
 何かサバイバルの時に利用するキノコ図鑑みたいなもんだと思った。

 しかし、あの便所の棒がとんでもないお宝だったとは... ...。
 確か、寝ぼけて蹴飛ばしたり、ゴーレムマンションの便所が詰まった時に使っちゃったぞ... ...。

「因みに私が変身する時に着ていた白い服も特一級魔具・・・・・だみそ」

 とゴーレム幼女が得意げに鼻を鳴らすがその特一級とやらの価値が分からん。
 俺が困惑しているとヴァニアルがテンション高めで。

「特一級!? えー!? 凄い凄い! 特一級なんて国宝クラスじゃないか!」

「ほほう。お前はちょっとは知識があるみたいみそ」

「凄い! 見せて見せて!」

 ヴァニアルは五歳児くらいのテンションではしゃぐ。
 そうか。
 こいつ、シルフの魔力を吸うのに夢中で変身した姿を見てなかったんだな。

「そう言われると何か見せたくないみそ」

「えー! いいじゃん! 見せてよー」

「ダメだみそー」

 そんなに凄い代物なのか... ...。
 それにしても、こんなにも魔法を使える奴らが集まる地域があって、かつ、その場所に異世界から来た奴が現れるなんてどんだけ異常事態だよ。

 どう考えても偶然の一致とは思えない。
 ハンヌ戦から抱く複数の疑問。
 思い過ごしなら良いのだが......。

 ペラペラと本をめくるとゴーレム幼女の持っている服がたしかに特一級のページにあった。

 ほう。
 どうやら、嘘じゃないみたいだ。
 ページの上には魔具の名前が書いてある。
 ゴーレム幼女が持っている魔具の名前は何だろうと気になって目をやると。

 ”リンちゃんの普段着”
 と書かれていて何か悲しい気持ちになった。

 ◆ ◆ ◆

 ___ゴーレムの森」___

 薄暗い森の中を駆ける複数の人影。
 隊列を崩さず、障害物を避けながら森を一直線に進む様はまるで大きな蛇が動き回っているようだ。

 先頭の人間が森を抜け、それを確認し、他の三名も茂みから飛び出す。

「... ...あそこか」

 茂みに身を隠す為か四人は緑色の服を身に纏い、目のあるラインだけ皮膚が見え、その姿はまるで忍びを連想させる。

 森を抜けた先から見えたものはホワイトシーフ王国。
 四人は顔を見合わせ、ホワイトシーフ王国を目指して再び歩みを進めた。
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