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1章 辺境伯編
21 リオンの帰省と、連れてきた「意外な友人」
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そんな騒がしい日々の中、魔法学園に行っていた長男リオンが、初めての長期休暇で帰省することになりました。
「リオンお兄様が帰ってくる!」
「兄上、強くなったかな!」
ミリアとヴァンは大はしゃぎです。私も、久しぶりに息子に会える喜びで、朝からソワソワと落ち着きません。 ジークフリート様も、表向きは「ふん、ようやくか」とクールに装っていますが、朝から何度も正門の様子を見に行っているのがバレバレです。
そして、ついにリオンを乗せた馬車が到着しました。
「ただいま帰りました! 父上、母上!」
馬車から降りてきたリオンは、数ヶ月見ない間に背が伸び、学園の制服がよく似合う少年に成長していました。
「リオン! お帰りなさい!」 私が駆け寄って抱きしめると、彼は少し照れくさそうに、でもしっかりと抱き締め返してくれました。
「……よく戻った。息災だったか」
ジークフリート様も、不器用ながら息子の肩を叩き、安堵の表情を見せます。
「はい。……あ、そうだ。今日は、学園の友人を一人、連れてきたんです」
リオンが馬車に向かって声をかけました。 「おい、出てこいよ。大丈夫だから」
おずおずと馬車から降りてきたのは、線の細い、眼鏡をかけた気弱そうな少年でした。彼は、私たち……特にジークフリート様を見るなり、ガタガタと震え上がりました。
「は、はじめまして……! ぼ、僕は、王国の……いえ、今は共和国の、商人の息子で、テオと申します……!」
彼は、かつて私を追放した旧王国出身の少年でした。 旧王国は今や解体され、商業を中心とした共和国になっていますが、アースガルドとの関係は未だ微妙なものです。特に、旧王国の人間にとって、「氷の軍神」ジークフリート公爵は恐怖の対象でしかありません。
ジークフリート様の眉が、ピクリと動きました。 「……旧王国の民か。リオン、なぜ彼を連れてきた」
空気が凍りつきます。テオ君は今にも気絶しそうです。 しかし、リオンは堂々と父を見返しました。
「父上。テオは、僕の寮のルームメイトで、魔法薬学の天才なんです。でも、出身のせいで学園で孤立していて……。僕は、母上の教え通り、出自ではなく、その人の本質を見なさいという言葉に従いました。彼を、この辺境の豊かな自然と、母上の錬金術に触れさせてあげたかったんです」
息子の立派な言葉に、私は胸が熱くなりました。 ジークフリート様は、しばらくリオンとテオ君を交互に見つめていましたが、やがてフッと口元を緩めました。
「……そうか。エルナの教えを守っているなら、文句はない」
公爵様は、震えるテオ君の前に歩み寄り、その大きな手を差し出しました。
「ようこそ、グロースハイム公爵領へ。息子の友人は、我が家の家族も同然だ。……安心しろ、取って食ったりはしない」
「は、はいぃぃっ! ありがとうございますぅぅ!」
テオ君は涙目でジークフリート様の手を握り返しました。
その夜の夕食会は、リオンの学園での武勇伝(主にお弁当の自慢)と、テオ君の薬学知識の話で大いに盛り上がりました。私が作った辺境特産・魔獣肉のハンバーグを食べたテオ君が、「こ、こんな美味しいもの、食べたことありません!」と泣きながら完食した時、ジークフリート様は満足げに頷き、彼を完全に「身内」認定したようです。
「もっと食え。男なら、あと三皿はいけるはずだ」
「む、無理です公爵閣下! お腹が破裂します!」
賑やかな食卓を見ながら、私は確信しました。 私たちの撒いた愛の種は、子供たちの中で確実に芽吹き、国境や過去のわだかまりを超えて、新しい絆を紡いでいるのだと。
「リオンお兄様が帰ってくる!」
「兄上、強くなったかな!」
ミリアとヴァンは大はしゃぎです。私も、久しぶりに息子に会える喜びで、朝からソワソワと落ち着きません。 ジークフリート様も、表向きは「ふん、ようやくか」とクールに装っていますが、朝から何度も正門の様子を見に行っているのがバレバレです。
そして、ついにリオンを乗せた馬車が到着しました。
「ただいま帰りました! 父上、母上!」
馬車から降りてきたリオンは、数ヶ月見ない間に背が伸び、学園の制服がよく似合う少年に成長していました。
「リオン! お帰りなさい!」 私が駆け寄って抱きしめると、彼は少し照れくさそうに、でもしっかりと抱き締め返してくれました。
「……よく戻った。息災だったか」
ジークフリート様も、不器用ながら息子の肩を叩き、安堵の表情を見せます。
「はい。……あ、そうだ。今日は、学園の友人を一人、連れてきたんです」
リオンが馬車に向かって声をかけました。 「おい、出てこいよ。大丈夫だから」
おずおずと馬車から降りてきたのは、線の細い、眼鏡をかけた気弱そうな少年でした。彼は、私たち……特にジークフリート様を見るなり、ガタガタと震え上がりました。
「は、はじめまして……! ぼ、僕は、王国の……いえ、今は共和国の、商人の息子で、テオと申します……!」
彼は、かつて私を追放した旧王国出身の少年でした。 旧王国は今や解体され、商業を中心とした共和国になっていますが、アースガルドとの関係は未だ微妙なものです。特に、旧王国の人間にとって、「氷の軍神」ジークフリート公爵は恐怖の対象でしかありません。
ジークフリート様の眉が、ピクリと動きました。 「……旧王国の民か。リオン、なぜ彼を連れてきた」
空気が凍りつきます。テオ君は今にも気絶しそうです。 しかし、リオンは堂々と父を見返しました。
「父上。テオは、僕の寮のルームメイトで、魔法薬学の天才なんです。でも、出身のせいで学園で孤立していて……。僕は、母上の教え通り、出自ではなく、その人の本質を見なさいという言葉に従いました。彼を、この辺境の豊かな自然と、母上の錬金術に触れさせてあげたかったんです」
息子の立派な言葉に、私は胸が熱くなりました。 ジークフリート様は、しばらくリオンとテオ君を交互に見つめていましたが、やがてフッと口元を緩めました。
「……そうか。エルナの教えを守っているなら、文句はない」
公爵様は、震えるテオ君の前に歩み寄り、その大きな手を差し出しました。
「ようこそ、グロースハイム公爵領へ。息子の友人は、我が家の家族も同然だ。……安心しろ、取って食ったりはしない」
「は、はいぃぃっ! ありがとうございますぅぅ!」
テオ君は涙目でジークフリート様の手を握り返しました。
その夜の夕食会は、リオンの学園での武勇伝(主にお弁当の自慢)と、テオ君の薬学知識の話で大いに盛り上がりました。私が作った辺境特産・魔獣肉のハンバーグを食べたテオ君が、「こ、こんな美味しいもの、食べたことありません!」と泣きながら完食した時、ジークフリート様は満足げに頷き、彼を完全に「身内」認定したようです。
「もっと食え。男なら、あと三皿はいけるはずだ」
「む、無理です公爵閣下! お腹が破裂します!」
賑やかな食卓を見ながら、私は確信しました。 私たちの撒いた愛の種は、子供たちの中で確実に芽吹き、国境や過去のわだかまりを超えて、新しい絆を紡いでいるのだと。
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