【R18*TL短編集】身体も心も吸血鬼の紅い瞳に囚われて（ティーンズラブ）

森のやさしい吸血鬼に本能のままに愛されすぎて快感に溺れてしまうお人好しの薬草師の話（ティーンズラブ）

4. 間違った薬草

夕暮れがゆっくりと訪れる中、ファンリンはユーシェンができるだけ快適に過ごせるよう、慎重に手を尽くしていた。部屋の隅でランタンの薄明かりが揺れ、長い影を壁に落としている。彼が少しでも休めるように、穏やかな気持をもたらす効果のある、ラベンダー、カモミール、バレリアンルートを手に取って、優しい眠りへ導く薬草茶を作ろうとした。
彼女の手は慣れた動きを再現し、薬草を細かく挽いていく。ーーその行動がもたらす危険を知らずに。

静かにハミングをしながら、彼女は小さな器で薬草を焚き、部屋に甘くしっとりとした香りを広げた。煙はゆっくりと上へと立ち上り、ファンリンはそれが空気の中に消えていくのを見守った。

「今は休んでて」彼女は優しく声をかけたが、ユーシェンはすでに目を閉じており、疲れきった体が重く感じられた。「これでよく眠れるはず。」

しかし彼女は、これらの薬草が焚かれることで、吸血鬼に異常な反応を引き起こすことを知らなかった。人間に眠りをもたらすように作られたその成分は、ユーシェンのような存在にはあまりにも強すぎた。吸血鬼は、その鋭い感覚と身体構造のために、人間の体に作用する物質に異なる反応を示す。ユーシェンの場合、薬草の煙は彼女が意図した平穏な眠りをもたらすことはなかった。むしろ、それは彼に予想もしなかった影響を与え始めた。

最初は微妙な変化だった――まるで風が彼の体をかすめるような、わずかな震えだけだった。しかし、その後、彼の呼吸は不自然に深くなり、ぱっと開かれた紅い瞳には、混乱の色が浮かんでいた。

ファンリンはすぐに気づいた。

「...ユーシェン？」彼女は心配そうに声をかけた。手を伸ばして彼を支えようとしたが、彼はその触れ方にビクッと反応し、体が放たれる前にピンと張られた弓のように張り詰めた。

「これは...？」彼の声は低く、ひどく引きつっていた。「...何をしたんだ？」瞳孔は開ききり、彼の肌からは奇妙で、どこか不自然な熱が放たれていた。ーー吸血鬼の肌は、本来冷たいはずなのに。

ファンリンの胸が一瞬止まった。吸血鬼を治療したことなどなかったが、これが普通ではないことはすぐに分かった。彼女は後ろに下がり、頭の中が一気に混乱した。

薬草で間違ったことをしたのだろうか？

自分や他の人には何度も使ってきたが、彼のような存在には――いや、彼のような「何か」に使うのは、初めてだった。

「うぐっ.....」

ユーシェンの体が再び緊張し、喉からかすかな、不安を感じさせるうなり声が漏れた。彼の赤い瞳は焦点が定まらず、薬草の成分が体内を駆け巡る中で、それに抗うように揺れていた。

「ユーシェン、ごめんなさい」ファンリンは慌てた声で言った。彼女は彼のそばにひざまずき、手が震えていた。「知らなかった…ただ、あなたに休んでほしくて。」

彼の視線が彼女に固定され、まるで助けを求めるようだった。「俺に、何をした？」

「薬草が…こんな影響を与えるなんて知らなかった」彼女は慌てて説明し、頭の中で解決策を探しながら言った。「ただ、あなたに休んでほしくて。」

吸血鬼の体が突然硬直し、薬草の影響で彼の力が一瞬にして奪われた。彼はふわりとベッドに倒れ込み、浅く、苦しげな呼吸を繰り返していた。

ファンリンの胸が痛むのを感じながら、彼女は彼の苦しむ姿を見守った。薬草の影響をどうやって取り消せるのか、彼女にはまったくわからなかった。
すべての瞬間が永遠のように感じられ、急がなければならなかった。しかし、彼女の薬草に関する知識は人間のためのものだけで、吸血鬼の特別なケースには対応できなかった。

「お願い、ユーシェン」彼女は息を呑みながら、声を震わせて囁いた。「頑張って、お願い。」

頭の中で、森林の薬草の中でその効果を相殺できるものを思い浮かべようとしたが、何も思いつかなかった。無駄にする時間はなかった。

だが、まるで彼女の動揺を感じ取ったかのように、ユーシェンの手が弱々しくも確かな力で彼女の手を握った。その手は、体に冷気が広がる中で、温かさを持っていて、そして、まだ薬草の影響でぼんやりとした目でありながらも、彼女の目としっかりと絡み合った。

「君なら...俺を助けてくれる」彼の声はかすれていたが、その中には揺るぎない信頼が込められていた。

ファンリンの胸がぎゅっと締め付けられ、彼女はすぐに頷いた。内に湧き上がる恐怖を必死に抑えながら、彼にこう誓った。絶対に彼を苦しませはしない、彼をここに連れてきて、この間違いを犯した自分が必ず何とかすると。どんな手段を使ってでも、道を見つけるのだ。