蜜月

絵麻

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蜜月

四話

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「やだぁ・・も、許して」
「美苑・・美苑」
 最奥に、潤弥が射精する。
 激しい交わりのあと、美苑は失神した。
 
「ん・・」
 汗ばむ背中を口づけられ、美苑は震えて泣いた。
「大丈夫、もうしない。休んでろ、あとで送る」
「ん」
 絶頂を何度も迎えた身体は、気怠い眠気に包まれた。
(幸せだった。大好きな人とする初じめての行為は、私を溶けそうなほどに幸せにした)

 目覚めると、そこは執務室の横にある仮眠室だった。
「美苑?」
 書類に目を通していた潤弥が、こちらに向かって来る。思わず、美苑は顔を背ける。

「どうした?」
「なんか・・恥ずかしいです」

 先程、二人は愛し合った。美苑は破瓜を果たし、愛する男の子種を受けた。
「美苑、これを」
 グラスと錠剤が出される。
「何ですか、コレ?」
「避妊薬だ。さっき、出してしまったからな」
「あ」
 躊躇う美苑の前で、潤弥が錠剤と水を口に含む。

 んぅ

「ちょっ・・やだ」
「飲まないと、孕むぞ。オレは構わないが。お前は困るだろ?」
 再び口づけられる。
「ダメ、これ以上されたら」
「もう、しない。今日はな」
「今日はなって」
「ああ、今日で終わりじゃない。口説いたんだから、覚悟しておけ」
 
 一登、洋右、潤弥は同じ部隊で苦楽を共にした同期生だった。その三人が、肉魚類を一切食べない日がある。
「これにて、見送りの儀式を終わる」
 御神水を特攻兵に飲ませる見送りの儀式。その前日から、潤弥達は野菜しか口にしない。
「敬礼!」

 エンジン音が響き渡り、背中に爆弾を背負って、若い兵士が零に乗り込む。
 風を切り、飛び立った直後だった。

 ドゴォォ

 爆発とともに、一機が墜落した。見送りには、家族や親しい友人達も来る。
「高人」
 彼の母親だろうか、名前を呟き気を失った。

「倉田、立派だったぞ」
 腕しか遺らない遺体、頭しか遺らない遺体。その一体一体に、潤弥達は言葉をかける。
「頑張ったな、藤森」
「勇敢だったぞ、杉田」
 その眼差しは優しく、まるで歳の離れた弟に語りかけるようだった。

「潤弥さ」
「来るな」
 血の付いた軍服を見て、美苑はどれほど悲惨な状況か悟る。
「美苑ちゃん、見ないほうがいい」
 一登や洋右も、同じく血に染まっていた。
 
 その日から、潤弥が食堂に姿を見せなくなった。
「あの、長谷川さんは?」
「アイツは食わないって」
「え」
 この三日、潤弥は食事を取らない。美苑は潤弥の執務室へ向かった。


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