蜜月

絵麻

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蜜月

十二話

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「ご挨拶が遅れて、申し訳ございません。長谷川潤弥と申します」
 潤弥が挨拶に訪れたのは、美苑が女学校を卒業した翌日だった。

「いや、まさか美苑に恋人がいたとは」
「写真を見て、驚きました」
 夫妻は嬉しそうに笑った。

「泣くな」
「すみません、嬉しくて」
 美苑は涙を拭い笑った。
「戦争も終わった、もう誰も死ぬことはない」
 死ぬことはない。
 そう呟く潤弥の横顔は、酷く悲しくて。美苑の脳裏には、立花一登の姿が浮かんだ。

「そんな、立花さんが?」
「亡くなったよ、病気だったらしいな」
 智志の言葉に、美苑たち三人は言葉を失くした。
「戦争が、やっと終わったのに」
 一登の受け持った豫科練組は、雪杜と智志を含めて十名が出撃を免れた。

「潤弥さん、生きていてくれて。ありがとうございます」
「・・・」
「潤弥さんなしで、私の幸せはありません」
「ああ」
 オレもだ、潤弥の頰を涙が流れ落ちた。


「んぁ・・」
 口づけが繰り返される。帯が解かれ、襦袢だけの姿になる。
「美苑」
 挨拶の日から三ヶ月後、二人は結婚した。
「潤弥さ」
 
「今日は安全な日か?」
「え」
「冗談だ」
 避妊具を取ろうとした手を、美苑が止める。
「えーーと、このまま」
「いいのか?もう、薬はないぞ」
 軍人を辞めた潤弥は、教員資格を取った。
「はい」
「覚悟しろよ」

 美苑を犯すように、潤弥は美苑を抱いた。
「だめ・・も、だめぇ」
「美苑」
 布団に突っ伏し、美苑は身体を震わせる。何度も注がれ、何度も絶頂を迎える。
「抜いてぇ、お願い」 
 力が入らない腕で、潤弥の胸を押す。
「狂う・・狂うから」
「いいよ、なればいい。オレだけの美苑でいてくれ」
 深く口づけられ、涙があふれる。

(これじゃ、すぐ赤ちゃんが)
 式の日から、潤弥は毎晩のように美苑を抱いた。周期を計算する暇もなく、子種を仕込まれたのだ。

「うっ」
 それは三ヶ月を過ぎた頃だった。強烈な吐き気に、美苑はふとカレンダーを見やる。
「まさか」
 
「顔色が悪いな」
 潤弥が心配そうに見つめる。
「気分が悪いの、うっ」
「一度、医者に」
「行ってくる。朝ごはん、食べたら」

 二時間後、美苑の予想は的中していた。
「三ヶ月」
「これからは、万事に気をつけて」
 頰が熱い。
 どうやら、初夜で出来ていたのだ。

「本当か」
 潤弥は瞬く。
「はい、三ヶ月だそうです」
 考えて見れば、いつ出来ても不思議はなかった。
「・・」
 反応がない潤弥に、不安になる。

「あの、産んで良いんですよね?」
 美苑の言葉に、潤弥はハッとする。
「あ、当たり前だ」
「良かったぁ」
「いや、お産で死ぬ人は少なくないからな、ちょっと心配になっただけだ」
 美苑の目に、涙がにじむ。
「大丈夫です、私は死にません」
 美苑は笑顔を見せた。
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