キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ

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第201話 組み手

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「おっさん、すげ~な! あまりにも速すぎて動きがほとんど見えなかったぜ」

「ええ。私もガレン殿の動きが目で追えませんでした」

 シルバーウルフの3体が一目散に逃げ出して戦闘が終わり、ジーナとカルラがガレンを称賛する。

 みんなの目には多少ガレンが見えたようだが、俺には一瞬で目の前から消えたようにしか見えなかった。以前に酒場でCランク冒険者を大人しくさせた時にも速いと思ったが、あの動きはまだ全然本気じゃなかったらしい。

「驚いたよ。人ってこんなに速く動けるもんなんだな」

「ホホーホー!」

「ガレンおじちゃん、すごかったよ!」

「まあ、こんなもんだ。高い依頼料の分はきっちりと働かねえとな」

 もちろん俺たちもとても驚いている。なるほど、高ランク冒険者の依頼料が高額になる理由も頷ける。

「ガレン殿、ぜひ私に戦い方を教えてください!」

「おっさん、俺もだ。組手ってやつをやろうぜ!」

「ああ、俺もうまい飯と酒の分はもうちっと働かねえとな。だけどそいつはあとだ。血の臭いにつられて他の魔物が集まってくるかもしれねえし、先に解体をして先へ進もうぜ」

 圧倒的な力でシルバーウルフを追い払ったというのに周囲の警戒を怠らずにすでに先のことを考えている。さすが元Aランク冒険者だ。

 短い期間とはいえ、旅をするうえで学ばなければならないことがたくさんありそうだな。



 シルバーウルフの解体を終え、冒険者ギルドで買い取ってもらえる毛皮と牙を回収し、残りを埋めて先へ進む。

 ガレンは解体の経験も豊富で、解体しながらもいろんなアドバイスを俺たちにしてくれた。そのあとも魔物が多い地域ということもあって、キャンピングカーで何度か魔物に遭遇したが、戦闘があったのはこの1回だけであった。

「……よし、予定通りの場所へ到着した。明日からは森の中を進んでいくよ」

 アルカンの街を出てからだいぶ進んできたが、遠回りをしたこともあって、直線距離ではそれほど進んではいない。そしてここからはキャンピングカーで進んでいくことはできないので、少し早いが今日はここまでにして、明日からは歩いて森の中を進んでいく予定だ。

「それにしても、このキャンピングカーってやつはとんでもない速さだったな。前にもらった酒やつまみにも驚いたが、今日はそれ以上に驚いたぜ」

「それはお互い様だ。俺もガレンが強いのは知っていたけれど、まさかあそこまでとは思わなかったよ」

 まだ1日目なのだが、お互いに驚かされたようだ。

「おっさん、早く組手をしようぜ」

「私もお願いしたいです」

「若いもんは元気だね~。シゲト、ちょっと相手をしてやってもいいか? もちろん護衛はしっかりと続けるからよ」

「ああ、俺からもぜひ頼むよ。晩ご飯の方はこっちで用意しておくからさ」

 俺たちからしてもぜひお願いしたいところだ。いつもより時間は早いから、洗濯などはあとでみんなでやるとしよう。

「今日の晩ご飯は俺一人でも大丈夫だから、フー太とコレットちゃんも外で見ていて大丈夫だよ」

「ホホー」

「えっ、いいの!」

「もちろん」

 フー太とコレットが嬉しそうにしている。

 やっぱり2人ともガレンの動きを見たかったようだ。俺も時間があればあとでのぞかせてもらうとしよう。



「今日の料理は完成っと。まだガレンに鍛えてもらっているみたいだし、晩ご飯はもう少し後でいいか。いったんアイテムボックスにいれておこう」

 そこまで手間の掛からない料理を作り、アイテムボックスに保存してキャンピングカーの外に出た。

「せいっ!」

「いい踏み込みだ。だが、身体の使い方に少し無駄が多い。我流でやっているやつの多くはそうなんだが、もっと意識をして身体を動かした方がいいな」

「はい!」

 外ではジーナがガレンに打ち込んでいた。もちろん真剣ではないが、鞘に差したままの剣で危なくないかと少し心配になる。

 ただよく見るとジーナは打ち込んでいるだけで、ガレンは攻撃をしていない。がんがん前に出ているジーナの攻撃をいなしていくガレン。Aランク冒険者というのは本当にすごいんだな。

「シゲト、やっぱりあのおっさんは相当つええぞ」

 カルラはキャンピングカーの上に座っていた。汗をかいているところを見ると、ジーナの前はカルラが組み手をしていたのだろう。

「やっぱりカルラでも敵わなかった?」

「ああ。武器やブレスなしの素手で戦ったんだが、手も足も出なかったぜ」

「カルラお姉ちゃんの攻撃を軽々と受け止めちゃったんだよ!」

「ホーホー!」

「それはすごいな」

 カルラの爪は鋭い武器となるがそれなしでも俺の何倍も力が強く、空を飛んで勢いをつけた拳や足はこれまで敵を何度も吹っ飛ばして来た。しかし、それでもガレンさんはそれ以上に強かったようだ。

 そんな人に護衛だけでなく指導までしてもらえるのだから、この依頼をガレンさんに引き受けてもらって本当に良かった。

 よし、せっかくの機会だし、あとで俺も大盾の使い方を教えてもらおう。
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