キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ

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第202話 シンプルな晩ご飯

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「かあああ~うまい! この肉と野菜の炒めものの味付けも初めての味だし、パンもふわふわな食感だ。サラダには酸味がありつつまろやかな味がついているし、なによりこのウイスキーって酒が最高だな!」

「簡単な料理だけれど、気に入ってくれてよかったよ」

 今日の晩ご飯はシンプルに肉野菜炒めとサラダ、丸パンだ。

 簡単な料理ばかりだが、野菜はハーキム村で育てていたおいしい野菜だし、味付けはアウトドアスパイスと俺の世界の焼き肉のタレを使い、パンはこのキャンピングカー内のオーブンで焼いた贅沢な料理である。

「シゲトお兄ちゃんのご飯はおいしいよね!」

「ああ。こんな料理は街でもそう簡単に食べられるもんじゃねえぞ。このパンだって、街で売っているパンとは別もんじゃねえか!」

「パンは自分たちで焼いているからな。いつでも焼き立てのパンが食べられるのはありがたいよ」

「……いや、焼き立てとか関係なくこんなに柔らかいパンは初めてだ。料理屋だけなじゃなくて、パン屋でもやっていけそうだな」

 どうやらアルカンの街には天然酵母を使ったパンは売っていないらしい。

 冒険者の多い街だし、あまり賞味期限のもたないパンや値段が少し高くなるパンは売りにくいのかもしれない。いや、ガレンみたいに高ランクの冒険者もいることだし、少し高くて期限が短くても売れる気はする。

 キャンピングカーでいろんな場所へ行き終えたら、どこかの街で料理屋やパン屋などの店を開くのもありかもしれない。

「それにあのシャワーってやつはすごかったな。まさか川のない場所で野営をしながら水浴びができるとは思わなかったぞ。そもそも旅をしながら飲み水を確保するのが普通はどれだけ大変なんだって話だよ」

「確かにあれは便利ですよね。いつでも水を確保できるのは本当に助かります」

 改めてガレンに指摘されてみるとキャンピングカーでの旅は本当に快適だよな。こういうのは慣れてしまうと人から指摘されないとわからないものである。

「それにこんなうまい酒を毎日飲めるなんて、あまりに良すぎる依頼で罰が当たりそうだぜ……」

 ウイスキーの入ったグラスを揺らしながらそんなことを言うガレン。

「俺たちの方こそ護衛に加えて鍛錬の指導までしてもらって助かっているよ」

「ホホ~」

 結局カルラとジーナの戦闘指導だけでなく、俺やコレットちゃんやフー太の指導をしてもらった。

 もっとも、俺たちは直接戦う想定ではなく、いかにカルラとジーナをサポートするかの立ち回りである。特に魔物との戦闘が豊富だったガレンの経験は実に的確だった。ぶっちゃけ依頼料が少し安かった気もするが、ガレンがそう言ってくれるのなら嬉しい限りだ。

「だけどおっさん、驚くのはまだはええぞ。シゲト、今日はデザートもいいだろ?」

「ああ。ここ2日は街の宿に泊まっていたから食べてなかったからな。ちょっと待っていてくれ」

「おっ、もしかして冒険者ギルドの酒場でもらった果物か? あれは甘くて本当にうまかったな」

 ガレンは幻のオアシスで精霊さんたちにもらった果物はとてもおいしそうに食べていた。

 確かにあの果物もおいしいが、珍しさはこっちの方があるだろう。

「なんだこりゃ! 甘くて冷たくて口の中で溶けていくぜ!」

「これはアイスクリームという俺の故郷のお菓子だよ。ホワイトミルブルの乳に砂糖を加えてたまに混ぜながら冷やしていくとこんな感じで固まるんだよ。こっちの色がついているアイスクリームは例の果物のペーストを加えているんだ」

「しかもこっちの白い方と味が全然違うんだな。こんなうまい菓子は初めて食べたぜ!」

 アイスクリームにも満足してくれたようだな。

 ちなみに果物入りのアイスクリームは何度も試行錯誤を繰り返して果物の種類にあった砂糖の量などを調整し、複数の果物を組み合わせたアイスクリームも目下開発中だ。旅をしていると日の暮れたあとは結構時間があるから、むしろいい時間つぶしになるのである。

 ガレンも満足そうにしていたので何よりだ。



「……本当に外でいいの?」

「おう、こういったことはきっちりと区別しねえとな。今日の昼間みたいに音や匂いに敏感な魔物もいるし、俺は外で護衛の役割を果たすぜ」

 晩ご飯を食べ終わり、就寝の時間になった。

 俺としてはガレンもキャンピングカーの中で寝てもらうつもりだったのだが、ガレンは外で寝るつもりらしい。

「このキャンピングカーはかなりの強度があるし、ベッドも数があるから遠慮しなくても大丈夫だよ」

 これまでのキャンピングカーだったらフー太を入れて6人はなかなか窮屈だが、キャンピングカーのレベルが上がって空間拡張機能が追加されたので十分にスペースはある。

 車体強化機能もあるし、コレットちゃんが音に敏感だから大丈夫だと思うんだがな。

「気持ちだけもらっておくぜ。冒険者としても依頼人との距離はきっちりしねえとな。それに俺は寝ていても魔物の気配には気付けるから安心してくれ」

 なるほど、さすが元Aランク冒険者だ。依頼をするうえでもより安心できる。

「わかったよ。そしたらちょうどいいものがある」
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