キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ

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第203話 ルーフテント

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「……こんなものまであんのかよ」

「これならキャンピングカーの外だけれど、周囲全体が見渡せるし、キャンピングカーの上だから魔物の奇襲なんかも防げるよ」

 いったんキャンピングカーの透明化機能を解除して、俺たちはキャンピングカーの車体の上にいる。

 俺がガレンにした提案。それはキャンピングカーの上部にあるルーフテントを使うことだ。

 ルーフテントとは車両のルーフ(屋根)に取り付けて使用するテントだ。地面から離れているため、虫、湿気、魔物へのリスクが少なく、内蔵しているマットレスや断熱材によって地面でのテントより快適になる。

 すでに下の部分は固定されているから設置は簡単で、なにより使わないときは車両の上部に収納でき、車内のスペースを使わないのがありがたい。

「ああ、これなら見張りにも最適だ。ありがたく使わせてもらおう」

「了解だよ。でも車内で寝たくなったらいつでも言ってくれ」

 ガレンもルーフテントで寝ることを了承してくれた。地面にテントを張って野営をするよりも快適に過ごせるだろう。マットレスはついているので、寝袋を渡す。

 ちなみにカルラと出会った際に外で寝てもらった時もこのルーフテントはあったのだが、俺が完全に忘れていたのである。……いや、キャンピングカーを手に入れたら、車内の快適さに目を奪われてこっちは使わなくなるよ。

 キャンピングカーのレベルが3に上がって機能が増えた際に『ルーフテント強化機能』があったのでようやく思い出したのだ。補給系の機能は一通り取ってハーキム村にしばらく滞在したこともあって現在は9Pあるので、1Pだったのでもちろん迷わず取った。

 今のところ他の機能はそこまで必要ないが、『電力消費半減機能』は3Pも使用したから、次のレベルアップに備えてポイントは貯めておくとしよう。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「ホホ~」

「うう~ん、おはようフー太」

 目が覚めると白くてもふもふとした塊があった。大きくなったフー太に包まれていると本当に心地がいいな。

 空間拡張機能によってベッドも広くなったから、落ちる心配もなく本当に快適だ。

「おっと、ガレンは大丈夫だったかな?」

「ホーホー!」

 昨日の夜は特に大きな音もしなかったから大丈夫だと思うけれど、この世界の外で野営をするのは怖いからな。

 朝食を作る前に警戒をしながらキャンピングカーの外に出てみる。

「おう、シゲトか」

 するとすぐにガレンが上のルーフテントから出てきた。もしかするとすでに起きていたのかな。

「おはよう、ガレン。昨日はよく眠れた?」

「ああ。この寝具がだいぶ寝心地良かったぜ。見張り中はあまり熟睡しちゃまずいんだがな」

「よく眠れたのならなによりだよ。もうすぐ朝ご飯ができるからね」

「おう、了解だ」



「……パンとバターだけで食べると味の違いがはっきりわかるな。やっぱりこのパンは最高にうめえぞ。それにこのジャムも甘くて格別だ」

「アイテムボックスで焼き立てのまま保存できるからな。ジャムの方は素材の果物がおいしいんだ」

「ホホーホー♪」

 朝食はパンと目玉焼きとレッドドラゴンのベーコンにサラダだ。

 ガレンは改めて天然酵母パンのおいしさに驚いている。今日は朝早くからスターフェル村へ向かって森の中を進むためパンは焼いていないが、アイテムボックス機能のおかげで以前に焼いたばかりのパンが食べられた。

 フー太もバターとジャムを塗ったパンをおいしそうに頬張っている。

「こっちのレッドドラゴンのベーコンもうまいぜ」

「ええ。ダナマベアのベーコンもおいしかったですが、こちらのレッドドラゴンのベーコンはそのさらに上をいく味ですね」

「ベーコンと目玉焼きと一緒に食べるととってもおいしいよ!」

 みんなもおいしそうに朝食を食べている。以前にガレンも褒めてくれたレッドドラゴンのベーコンは酒のツマミだけでなく、朝食にも最高だ。

 カリッとしたベーコンの塩気と肉の脂の旨みがじわりと口の中に染み込み、目玉焼きのまろやかな黄身の味が舌を包む。そのあとにパンをかじればサクッとした歯応えと焼き立てのパン特有の香りとが全体をまとめ上げた。

 なんとも贅沢な朝食を食べられるようになったものだ。しかし洋食は完璧なのだが、和食の朝食に関しては要となる米がない。なんとかしてスターフェル村で米を手に入れたいところである。
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