キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ

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第205話 現れた人影

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 さらに先へ進んでいる最中も2度ほど魔物に遭遇した。幸いその魔物は2体ずつでそれほど強い魔物ではなかったため、どちらもガレンが対処してくれた。

 本当に他の森を歩いていた時よりも数倍の頻度で魔物に遭遇してしまう。今回は道を見失わないため、道付近にいる魔物を避けて通ることができない。普段は道に沿って歩かずに印をつけながらコレットちゃんの力で魔物を避けて進んでいるから戦闘する割合は低いのだろう。

 それにしてもこの森の魔物の数が多いことは間違いないか。ガレンを護衛として雇うことができて本当に良かった。

「……道の前から誰か来るけれど、もしかすると今度は人かも」

 コレットちゃんが再び待ったをかける。どうやら今回は人の可能性があるらしい。音を聞いて4足歩行か2足歩行かで判断しているらしいが、本当によく分かるものだ。

「ほう、コレットは魔物と人の区別まで付くのか。おそらくはこの森で活動している冒険者だろうな。戦闘になる可能性は低いが、どんな時でも警戒は怠るなよ」

「はい、わかりました」

「了解だぜ」

 冒険者か。この森の入り口までは木々の多い場所を迂回して来たから他の冒険者に遭遇することはなかったが、アルカンの街は冒険者が多い街だし、森の中で冒険者とすれ違うことはよくあるのだろう。

 先日酒場で絡まれた銀狼の刃みたいな変な冒険者じゃなければいいんだが……。

「あれ、ガレンさんじゃないですか」

「なんだ、ダズリンたちか」

 前から現れた冒険者らしき格好をした3人組。先頭を歩く茶髪のダズリンと呼ばれている男性はどうやらガレンの知り合いらしい。

 ガレンが武器から手を離したことによりほっとした。

「もしかして冒険者に復帰したんですか?」

「おお、マジっすか!」

「ちげーよ。まあ、個人的な依頼みたいなもんだ。おっさんはもう身体中にガタがきてんだよ」

「なんだ残念……。ガレンさんなら死ぬまで現役でも大丈夫っすよ!」

「私たちは何度もガレンさんに教えていただきましたからね。冒険者じゃなくても冒険者ギルドの指導員とかなんてどうですか?」

「おいおい、おっさんはもう引退だっての。そういうのはもっと若いもんに任せるぜ……」

 男性2人と女性1人の冒険者パーティと和やかに話すガレン。ガレンは長い間アルカンの街で冒険者として過ごしていたようだし、冒険者に顔がきくんだろうなあ。

「おっと、依頼中に失礼しました。俺たちはこちらで失礼します」

「ガレンさん、今度一緒に飲みに行きましょうね!」

「おう、そういう誘いなら大歓迎だ。帰り道も気を抜くんじゃねえぞ」

「はい、ありがとうございます!」

 3人組の冒険者たちは俺たちに会釈をして道の反対方向へ進んでいった。

 よかった、銀狼の刃とは違ってすごくまともな冒険者パーティみたいだ。

「出会った時は駆け出し冒険者だったあいつらが、今ではもう立派なCランク冒険者だ。時が経つのは早いもんだぜ……。おっと、今のはおっさん臭かったな」

 そんなことをしみじみと言うガレン。

 冒険者ギルドの職員さんや酒場の女将さんに今のような冒険者。あの街で長い間冒険者として活動してきたガレンにはその分人の縁もあるのだろう。そういう縁も実にすばらしいものだ。



「おっ、どうやらスターフェル村が見えてきたみたいだぜ」

「おおっ!」

 何度か魔物に遭遇し、冒険者パーティとすれ違いながら森の中を歩き続けること数時間、ついに村が見えてきたようだ。

 森の木々の隙間から開けた場所が現れ、大きな木の柵が顔を出す。これまで訪れてきた村よりもしっかりとした柵やバリケードがあるのは魔物が多い土地だからだろう。

「……というか今更だけど、なんでこんなに魔物の多い場所に村を作ったんだろうね?」

 森でだいぶ魔物に遭遇したこともあって、ついそんな素朴な疑問が出てしまう。これじゃあ街へ行くのにも一苦労だ。

 ハーキム村からオドリオの街へ行くよりも距離はないかもしれないが、これだけ魔物に遭遇するのなら大変だろうに……。

「いや、逆だ。この村はアルカンの街ができるよりもずっと昔からあったらしい。そのころは魔物の数も今ほど多いわけじゃなかった」

「なるほど」

 どうやら魔物が増えた時期の方が後だったらしい。この柵とかも時間をかけて少しずつ強くしていったのだろう。

「シゲトが欲しがっている特産品の米ってやつも昔からあの村でずっと育てられていたらしいな。そこまで量がないらしいから、街まで卸してはねえみたいだが」

 ふむ、確かに元の世界でも米は世界中かつ遥か昔から育てられていた。

 そして稲作や作物を育てていく際は時が経つほどより強く、よりおいしいものを選別して育てていくものなので、多少は味の向上にも期待ができるというものだ。はたしてこの村で育てられている米はどんな味なのだろう。
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