キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ

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第206話 スターフェル村

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「ん? おおっ、ガレンの旦那じゃねえか!」

「本当だ。」

「久しぶりだなジョナス、ミロン。またお邪魔させてもらうぜ」

「ああ、もちろんだ。おお~い、ガレンの旦那がまた来てくれたぞ」

「今門を開けるから、ちょっとだけ待っていてくれ」

 スターフェル村の立派な柵の入口へ回ると、そこには冒険者のようにしっかりと武装して番をしていた30代くらいの男性が2人いた。2人ともガレンの顔見知りらしい。

 そしてそのまま同行者である俺たちにもなんのチェックもなく、門が開いて村の中へ入れてくれた。ガレンは冒険者ギルドの依頼などで何度かこの村を訪れたことがあるようだが、だいぶ信頼もされているようだ。

「うわあ~大きな村だね!」

「畑なんかもだいぶ広えな」

 コレットちゃんとカルラの言う通り、この村はこれまで訪れてきた村よりもかなり広い。

「魔物が多い分、何かあった時のために畑なんかをだいぶ広く耕しているらしいぜ。村の中でもいくつか柵で区切っているのはそのためだ」

「なるほど。私の村よりもだいぶ過酷なようですね……」

 外から見た柵以外に村の中にも柵で区切られている。魔物が多い土地で暮らすというのは本当に大変なのだな。

 そしてまだ村の入り口からは見えないが、あのいずれかの柵の先に俺が探し求めていた田んぼがあるのかもしれない。

「よう、旦那。前に冒険者を引退したと挨拶に来てくれたが、もしかして冒険者に復帰したのか?」

「いや、冒険者はもう引退だ。ただ、今回はちょっと特別な依頼があってこっちの依頼人の護衛をしてきた」

「初めまして、シゲトと申します。こちらの村で育てられている米を購入させてもらいたく、ガレンさんに頼んでここまで護衛してもらいました」

 ガレンに紹介され、ジョナスさんとミロンさんと握手をする。俺と同年代くらいなのに手の皮がとても分厚く、身体付きも筋肉質でとても鍛え上げられているといった印象だ。この過酷な魔物の多い場所で生活していく以上、魔物と戦闘になる機会が多いのだろう。

「ジョナスだ。よろしくな」

「ミロンだ。米のためにわざわざあの森を通ってここまで来たのか。随分と変わっているな。それにそっちの肩に乗っているのは魔物か?」

「フー太といいます。大人しくて可愛い魔物なので大丈夫ですよ」

「ホーホー!」

「ほう、随分と人懐っこい魔物だな」

 フー太は俺の方へ頭をこすりつけてくる。この可愛らしさを見て危険な魔物と判断されることはまずないだろう。さすがフー太である。

 そのあとは順番に俺以外のみんなも自己紹介をする。翼と尻尾のあるカルラは特に驚かれたが、ガレンから聞いていた通り種族には偏見のない村らしい。ハーキム村もそうだったが、街から離れた村なんかにはあまり人族以外は立ち寄らないから、そこまで種族の壁というものは存在しないみたいだ。

 みんなも外套を身に付けず村を回れることができて安心している。



「ガレン殿、お久しぶりでございますな」

「ああ。村長も前と変わらず元気そうで何よりだぜ」

 見張りをしていたジョナスさんに案内されて村の畑の中を通り、家が立ち並ぶ中の一際大きな家へとやってきた。

 とある一室に案内されてしばらくすると、数人が部屋の中へ入ってきた。その中でだいぶ筋肉質な男性が前に出てきて、ガレンと握手をする。

 ……高齢っぽいのだが、ムキムキでだいぶ若々しく見える。他のこの村にいた男性たちもみんな身体を鍛え上げているようだし、この村にいる男性はとても逞しそうだ。

「ガレン殿には冒険者ギルドでの依頼を受けていただき、何度も助けてもらいましたな。冒険者を引退されてとても残念です」

「この森には金になる魔物も多いからな。そのついでだからあんまり気にしなくていい。今回もこんなに魔物の素材を手に入れたし、酒代の足しになるぜ」

 そう言いながら、この森を通ってきた時返り討ちにした魔物の素材を見せるガレン。たった1日森の中を通ってきただけでこれだけの魔物と遭遇するのだから、本当に魔物が多い。

「ふっふ、それならわざわざ森の奥にあるこの村まで来る必要はありませんよ。それにガレン殿が紹介してくれた冒険者の方が先日挨拶しに来てくださいました。この村の今後のことまで考えていただき、本当にありがとうございます」

「……まあ、そんなこともあったな」

 ガレンは顔を背けて少し照れているようだ。

 まさか、こんなすぐにこの村へ来ることになるとは思ってもいなかったんだろうな。
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