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第6話 機能拡張
しおりを挟む「とりあえず、ゴブリンかなんかに襲われた様子はないみたいだな。それにしてもこんな状況で寝られるとは、我ながらだいぶ図太いみたいだ」
キャンピングカーの周囲に何もいないことを確認してから、外に出てみた。今日はちゃんと昨日いた森にある川の隣にキャンピングカーはある。そして昨日のゴブリンに殴られてできたと思われるキャンピングカーの凹み以外は他に大きな傷はない。昨日の夜は何かに襲撃された様子はなくてほっとした。
それにしても、突然異世界へやってきたというのに、その日にもぐっすりと寝られるとは我ながら図太いとは思う。昔から一人でキャンプしたり野宿したりしても普通に寝られたもんな。
「……おお、ちゃんと補充されているぞ」
運転席へ行き、キャンピングカーの燃料メーターを見ると、昨日と一昨日で走って少し消費していた燃料が満タンになっていた。
これは昨日新たに1ポイントを使用して拡張したキャンピングカーの機能である『ガソリン補給機能』のおかげだ。当然だが、この異世界ではガソリンなんて手に入れることができない。間違いなく必須の機能である。
「同じく水のタンクも満タンになっているな」
そして同様に1ポイントで拡張した『水補給機能』により、キャンピングカーに積まれている水タンクも満タンになっていた。飲み水については川の水などを補充できるかもしれないが、補充に手間もかかるし、何より川の水を煮沸するのが面倒で、何か身体に合わないものが入っていてもおかしくない。
この森にあった川の水はとても澄み切っていて透明だが、一見安全そうに見えても微生物や細菌などが含まれており、大量に飲むとお腹を壊す可能性もある。医療技術がどうなっているか分からないこの世界では安全に飲める水の確保はとても大事だ。
「あとは補給されるタイミングを知りたいところだな。ほんの少しずつ補給されているのか、時間ごとに一気に補給されるのかも知っておきたい」
昨日は寝る前にこの機能を拡張したから夜中に補給されていたようだが、何時に補給されたかまでは把握できていない。今日は定期的にメーターを確認してどのタイミングで補給されているかを確認していくとしよう。
「ホ~……」
「ああ、ごめんなフー太。すぐに朝ごはんにしよう」
フー太がしょんぼりした様子で俺を待っていた。いろいろと確認をしていたらお腹が空いていた様子だ。俺も昨日のご飯は少なめにしていたから、お腹が空いている。食料の確保についても早くなんとかしたいところだ。
「ホー♪」
「おっ、うまいか。これはホットサンドというんだ。いろんな味があるからな」
今日の朝食はホットサンドだ。ホットサンドとは食パンに具材を挟んで両面を焼いた料理である。最近ではホットサンドメーカーといって、2枚のフライパンを重ねて簡単に作れるキャンプギアも販売されている。
パンに具材を挟んで焼くだけなので、とても簡単に作ることができ、具材を変えることにより様々な味が楽しめるようになっている。今回は定番のハムとチーズ、スクランブルエッグにケチャップをかけたもの、イチゴのジャムを入れた3種類を作った。
それに合わせて野菜のサラダと牛乳を用意してある。フー太はホットサンドやサラダを食べ、お椀に入れた牛乳を器用に飲んでいた。
「俺はハムとチーズが好きなんだよな。ザックリと焼けたパンにハムと溶けたチーズがたまらないんだよ。フー太はどれが好きだ?」
「ホー!」
どうやらフー太はイチゴのジャムのホットサンドが好きなようだ。普通のジャムもうまいのだが、温かいジャムもこれまたうまいのである。
「さあ、朝ご飯を食べ終わったら、近くにある村を目指してみよう」
「ホー! ホー!」
「はは、すごいだろ。空を飛べるのもすごいけれど、このキャンピングカーはこれくらいのスピードで走れるんだ」
朝食を食べ終わって、いろいろと準備をしてからキャンピングカーで出発する。目指すは近くにある村だ。
小さな村よりも街の方がいいのかとも思ったのだが、一旦村によって街の情報を集めてからにすることにした。街へ入るためにお金が必要な可能性もあるし、この世界の文明レベルやどんな住人がいるかを予め確かめておきたい。
フー太は俺の隣の助手席にちょこんと座っており、しっかりとシートベルトをお腹の部分だけ付けている。そもそも道が悪くてスピードを出せないが、障害物などは多いから、俺が急ブレーキをかける可能性もあるからな。
「おっと、たぶんこれは道だな。こっちの方へ行ってみよう」
「ホー」
目的地までの村に向けてしばらく走っていると、カーナビの画面に道のようなものが見えた。少し進むとそこには地面を踏み固められて作られた道のようなものが見えてきた。
「ふむふむ。カーナビによると、こっちの道を右に進んでいくと目的地の村で、左に進むと街へ通じているらしいな。予定通り右の村に進むか」
カーナビを操作して付近の道を確認すると、どうやらこの道は今から行く村と街をつなぐ道らしい。予定通り右に進んで村へと向かっていった。
「ホー!!」
「んっ、何かあったのか? うわっ!」
順調に道を走っていたところ、フー太が突然声を上げ、道の先を見ると突然人影が現れた。すぐにブレーキをかけて急停車する。
バチンッ
「うおっ!?」
そしてその人影から何かが放たれたと思ったら、キャンピングカーのフロントガラス衝突して弾かれた。
「ビ、ビックリした! これはナイフか?」
フロントガラスに衝突した物体が前方の地面に落ちている。どうやら金属製のナイフのようだ。元の世界のように綺麗な形をしたナイフではなく、少し歪な手作業で作ったようなナイフである。
「あっぶね~キャンピングカーの車体を強化しなかったら、フロントガラスが割れていたかもしれない」
キャンピングカーの機能拡張により、『車体強化機能』を2ポイントで取っておいて本当に良かったぜ。自動修復機能とどちらを取るか迷ったが、危険が多そうなこの世界ではまずは身の回りの安全からということでこちらを取って正解だったようだ。
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