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第48話 護衛
しおりを挟む「見ているだけもとても面白かったですね!」
「ああ、本当にいろいろな魔道具があって面白かったな。また別の街に行ったらのぞいてみよう」
「ホー♪」
結局魔道具屋でもなにも購入せずに店を出た。
戦闘用の魔道具なんかもあったが、かなり高額だったし今はどちらにせよ購入できない。手に届く値段だと調理用の魔道具なんかがあったが、キャンピングカーにあった調理道具の方が高性能だった。
魔道具にはとても興味をそそられたから、何かひとつくらい購入したいけれど、手ごろでほしい魔道具がなかったからな。とはいえ、魔道具屋を見るのはとても楽しかったし、別の街に行った時も時間があれば寄ってみるとしよう。何か掘り出し物なんかがあるかもしれない。
「それじゃあ市場へ行って、いろいろと必要なものを買っていくか」
「はい」
「ホー!」
これでこの街で行きたいところは一通り見て回った。あとは市場で食材や必要な物なんかを購入しつつ、また屋台街で腹ごしらえをしてこの街を出るとしよう。
「それにしてもこの街は人が多いな」
「ええ、さすが大きな街ですね」
「ホー!」
この街のそれぞれの通りはかなり広くて人通りが多い。さすがに元の世界の都会なんかと比べたらそこまでではないが、それでも多くの人が行き交っている。
「はっ!」
「ぎゃああああ!」
「えっ、ちょっ!?」
「ホー!?」
突然隣にいたジーナが動いて、俺の背後に向けていきなり剣を振るった。
そして後ろから男の大きな悲鳴が付近に響いた。
「痛え、痛えよお……」
「ちょっと、ジーナ。いきなりどうしたの!?」
振り向くとそこにはひとりの男が地面にのたうち回っていた。その男の両腕は明らかにおかしな方向へと曲がっていた。あれはどう見ても折れている。
「この男がフー太様を襲おうとしておりました。剣を抜いても良かったのですが、村長からなるべく街中では剣を抜かないように言われておりましたので、とりあえず鞘で打ったのですがこれでよかったでしょうか?」
「……へっ?」
ジーナがいきなり何をしたのかと思ったが、どうやら後ろからフー太を襲おうとした盗人からフー太を守ってくれたようだ。この男がのたうち回っている横には大きな袋があった。おそらく背後からフー太をあの袋に入れて連れ去ろうとしたらしい。
街を歩いている間はジーナとフー太は注目されているから、比較的大きな通りを歩いてきたのだが、まさかこんな白昼堂々フー太を攫おうとするやつがいるとは思わなかった。
「あ、ああ……剣は抜かなくて大丈夫だよ、ありがとう。それにしてもいきなり後ろから襲ってきたのによく気付いたな」
「これでもシゲトとフー太様の護衛ですからね! それに森の中では気配を消した魔物が襲ってくることもありますから」
「………………」
すごいな、俺には誰かが近付いてきたことすらも気付いていなかった。ジーナの戦闘を見るのはディアクと戦って以来だが、対人戦だとこんなに強かったのか……
その割に森で迷ったり、抜けているところが多いから、とてもそうは見えないんだよね……
剣を抜いていたら、間違いなくこの男の両腕はスパッといっていただろう。この国の法律がどうなっているか分からないから、いきなり腕を斬り落としていたらまずかったかもしれない。
そして何より、いきなり腕を切断なんかしたら俺がドン引きなところだった。腕が変な方向へ曲がっているだけでも若干引いているところだからな……村長さんグッジョブ!
「ホー♪」
「フ、フー太様!」
フー太が俺の肩からジーナの方に飛び乗り、頭をジーナに寄せている。たまに俺にもやってくるが、あれは嬉しい時や感謝している時の行動だ。
どうやらフー太は俺の言葉からジーナが助けてくれたことが分かったらしい。
「ううう……」
……さて、両腕が折れてのたうち回っているこの男はどうしたものかな。
「よし、必要な物も買えたし、次の目的地まで移動するとしようか」
「はい!」
「ホー!」
あのあと、周りにいた人へ話を聞いたところ、これくらいの怪我なら問題なく、フー太を攫おうとしていたところを見ていた人もいたので、問題なくこの街の衛兵に盗人の身柄を引き渡した。
話を聞いたところ、腕をぶった切っていたとしても問題はなかったそうだ。う~ん、やっぱりこの文明レベルの世界だと、犯罪者にはだいぶ容赦がないらしい。まあ、当然と言えば当然なのか……
そしてそのまま市場へ寄って、食料や必要な物を購入してきた。街の中ではキャンピングカーを出してアイテムボックスに収納することができないため、持ってきていたリュックに入れ、街を出て離れたところでキャンピングカーを再び出した。
もちろん、あんなことがあったから、尾行には十分に気を付けて街を出る。やっぱりウッズフクロウのフー太は狙われるということだし、俺ひとりじゃなくて本当に良かった。
「それじゃあ次の目的地はフェビリーの滝だ」
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