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第56話 昼食
しおりを挟む「お昼はホットサンドだよ。たくさん作っておいたから一杯食べてね」
「うう……すみません、シゲト」
「ホー♪」
フェビリーの滝の前にある広場へリュックに入れてあったシートを敷いて、お皿を取り出しその上に朝たくさん作っていおいたホットサンドをのせる。フェビリーの滝の場所によっては道中で食べる予定だったが、ちょうど昼過ぎくらいに到着できたのでちょうどよかった。
ジーナは先ほど自分のお腹が鳴ったのがよっぽど恥ずかしいようで、まだ顔を赤くしながらお腹を押えている。もう今更だからあまり気にしないのにな。
理想を言えば、昼食時にホットサンドメーカーへ具材を挟んでバーナーで焼いて熱々のうちに食べたかったのだが、これだけの人数分のホットサンドを焼くのは地味に時間が掛かるからな。
ホットサンドメーカーを2つ買っておけばよかったのだが、さすがに異世界にやって来るとは思ってもいなかったから仕方がない。それにバーナーをあんまり見られたくもないというのもある。まあ、この世界には魔道具があるらしいし、バーナーは魔道具だと言い張れば大丈夫だとは思うが。
「コレットちゃんもこっちに座ったら?」
シートの上にジーナとフー太が座ったが、コレットちゃんは座ろうとしなかった。
「いえ、僕が座ったら汚れちゃうので、僕は気にせずどうぞ」
案内役としてそう言うのも分かるが、さすがにまだ幼いコレットちゃんを立たせたまま俺たちだけで食事をするのはさすがに気まずい。
「俺たちは全然気にしないから一緒に座ってくれると嬉しいな。それに汚れたとしてもすぐに洗えるから大丈夫だよ」
「……分かりました。ありがとうございます」
「うん、どうぞ。コレットちゃんのお昼はあるの?」
「いえ、僕はお腹が空いていないので大丈夫です。皆さんは遠慮なく食べてください」
「いっぱいあるから、お腹が空いていたらコレットちゃんも少し食べない?」
「い、いえ、大丈夫です! ……でも、本当にありがとうございます!」
「……そっか。でも食べたくなったら遠慮なくいってね」
コレットちゃんはブンブンと首を振る。少しやせているように見えるけれど、あんまり無理強いはしない方がいいか……お昼は食べない習慣の可能性もあるからな。
「それじゃあいただきます」
「いただきます!」
「ホーホー!」
今日のホットサンドは3種類を用意してある。まずはこっちのホットサンドから頂こう。
「うん、まあまあいけるな」
ひとつ目はポテトとほうれん草ソテーのホットサンドだ。ジャガイモを茹でてマヨネーズを加え、それと茹でたほうれん草のバターソテーを一緒に挟んでホットサンドにしたものである。
マヨネーズとバターがあるだけでどんな野菜でもホットサンドにすれば大抵うまいんだよね。マヨネーズやバターなどの調味料があるだけで、料理の幅がぐっと広がるのはいいよな。
今回のホットサンドは冷めてもおいしく食べられるものを優先してある。
「シゲト、こっちのジャムのホットサンドはとてもおいしいです!」
「自家製のジャムだけど、なかなかいけるね。とはいえ、やっぱり出来立てのジャムには勝てないかな」
2つ目はジャムのホットサンドだが、このジャムは昨日作ったばかりのジャムだ。
ロッテルガの街で購入したリンゴのような果物を細かく切って砂糖を加えて鍋でじっくりと煮込んで完成だ。砂糖の分量についてはアバウトで、味見をしながら少しずつ加えてちょうどいいくらいの味に仕上げた。
砂糖の量のメモは取ったので、今後また作る時はこのメモを見て作るとしよう。こうやって異世界で料理を作って自分でレシピを作っていくのはなんだかおもしろいかもしれない。
とはいえ、ジャムは作り立ての方が温かくてうまかったな。パンもサクサクとした歯触りでおいしいが、やはりホットサンドはできたてが一番おいしいものである。
「ホーホー!」
「おっ、こっちはなかなかいけるな」
3つ目のホットサンドは生姜焼きのホットサンドだ。ディアクの肉を薄く切って生姜焼きのタレに少しつけておく。それを焼いてレタスと一緒にパンに挟んでやいたものだ。
生姜焼きのタレは元からキャンピングカーに積んでいたものだ。焼き肉のタレで食べるのもうまいが、生姜焼きもたまには食べたくなるんだよなあ。
生姜のような野菜も街で売っていたのだが、ぶっちゃけ自分で生姜焼きのタレを作るよりも市販のタレの方がおいしい。たまに生姜焼きのタレに追加ですりおろした生姜を加えて生姜マシマシにして作った生姜焼きも結構好きなんだよね。とはいえ、ジーナやフー太は初めてだから、今回は普通の生姜焼きにしてみた。
生姜焼きのタレがパンにもしみ込んでなかなかいける。今回作ったホットサンドの中ではこれが一番おいしいかもしれない。もちろん温かいできたてのホットサンドがうまいことは間違いないんだけどね。
「絶景を見ながら食べるご飯もいいものだな」
ドドドドドッと滝の落ちる音を聞きながら、広大な異世界の自然を眺めながら食べる昼ご飯はなんだかいつもよりもおいしく感じた。
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