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第111話 決着

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「ぐぬぬ……たかが新参者の治療士が……」

「残念だけど、他の治療士の倍の治療費を取って、獣人の治療を受け入れなかったり、身体を要求したりするような治療士であるあなたとソーマ様は全然違うんだよ。他のみんなもそれが分かっているだけさ」

「くそっ、ターリアめ! こんなことをして貴様は冒険者ギルドを潰したいのか! もしもこいつがここにいなければ、私の全権限を使って冒険者ギルドを潰していたぞ!」

「ふんっ。その時はワシが全責任を負えばいいだけだ」

 ティアさんもターリアさんもすごく嬉しいことを言ってくれる。それにどうやらこの屋敷の周りには俺を心配した人達が来てくれているようだ。

 そんな状況でないのは分かっているのだが、感極まって泣きそうになってしまう。

「それに今回はちゃんとした騎士団からの要請もある正式な調査だ。ここにソーマ殿のいることが分かった時点で、騎士団とワシら冒険者ギルドから正式に依頼した冒険者が貴様の屋敷に踏み込んでも問題はない」

「馬鹿な、騎士団だと! そんなはずはない! 騎士団の上の者や貴族の者は私が抑えているはずだ!」

「残念だがそれよりも上のお方からの指示さ。キュリオ=レイチェル伯爵様、この街で唯一伯爵位を持つお方だよ」

「なんだとっ!?」

 アグリーが今日一番の驚きの声を上げる。

 しかし、なんたってそんな偉い貴族の人が俺の味方を? でもレイチェル伯爵ってどこかで聞いたような名前のような気もするぞ。

「以前にソーマ殿がレイチェル伯爵様の子供を治療したことがあったようでな。ソーマ殿が連れ去られたとお伝えしたところ、全力で捜査に協力してくれたのだ」

 思い出した!

 確か事故に遭って血だらけになっていた男の子を治療したことがあったな! その母親が貴族の偉い人だったはずだ。貴族なのにとても淑女的な人だったから覚えている。この街で偉い貴族だったんだ……

「付け加えるのなら、ソーマ殿は王都からも最大限の擁護をするようにも伝えられている。すでに王都へも連絡を入れたから、どのみち貴様はもう終わりだ」

「馬鹿な……そんな馬鹿な……」

 がっくりとうなだれて膝をつくアグリー。どうやら勝負がついたようだ。

「ア、アグリー様!」

「貴様も終わりだな、ランコット。今回のソーマ殿の拉致だけでなく、孤児院の襲撃についても詳しい話を聞かせてもらうとしよう。……まったく、貴様も馬鹿な真似をしなければ、ソーマ殿からの温情が得られたものを」

 確かに例の回復魔法をかけたポーションの販売をランコット商店にもお願いしようとしていた。おとなしくしていれば、あれだけ効果のあるポーションを販売する権利を得て、これまでの不利益以上の利益を得ていただろうに……

「今すぐ武器を捨てて投降せよ! さすれば今は命までは取るまい! もしも逃亡および抵抗しようとするならば、今ここで真っ二つにしてくれる!」

 ターリアさんが巨大な大剣を構える。それと同時にティアさんも斧を構え、他のみんなも武器を構えた。戦闘が素人の俺でも感じるようなものすごい威圧感である。

 少しの怪我や傷が命取りになるこの世界では犯罪者に対する姿勢も日本とは異なるのだろう。ただでさえこいつらは毒物も使っていたし、何かをされる前に殺す気でいかなければならないのは当然か。

「ま、まだだ! おい、貴様ら。こいつらを全員殺せ! 金ならいくらでもくれてやる!」

「「「………………」」」

 アグリーの命令には誰も従わず、後ろにいた手練れの手下達が黙って武器を捨てた。

「おい、言うことを聞け! 金ならいくらでもあるのだ!」

 どうやら抵抗したり、逃亡を図ろうとする者はいないようだ。相手も手練れなだけあって、みんなの強さと状況の悪さを察したのかもしれない。

「くそおおお!」

 とりあえず最後の最後でお互いが正面衝突することは避けられたようだ。

 ……しかし最後は俺自身が何もしていないのに、周りのみんながすべてを解決してくれた。それにしてもエルミー達もティアさん達もターリアさんも本当に格好良かった。彼女達こそが本物の主人公とでもいうのだろうな。





「おらっ、さっさと歩け!」

「ちっ……」

 拘束されたアグリーの手下達が次々と連行されていく。この屋敷には使用人や警備の者などが大勢いた。これだけの人を雇うのにはかなりのお金が必要だっただろうな。

 幸いなことに俺を救い出そうとしてくれた冒険者や騎士団の人達の怪我はすべて治すことができた。俺なら大抵の怪我は直せることがわかっているため、とにかく致命傷だけは負わないようにみんな立ち回っていたようだ。

「………………」

 そんな中で探していた両手を拘束された茶色い髪をした例の女の子を見つけた。

「あっ、ちょっと待って!」

「……っ!?」

 実際のところ、彼女にこんな拘束は意味をなさない。もしかすると途中で逃亡を図ろうとしていたのかもしれない。

 いや、おそらくはそうするつもりだったのだろう。なにしろ、彼女には何としても逃げ延びないといけない理由がある。

「ソーマ、どうしたんだ?」

「……こいつはソーマが攫われた時にいた女か?」

 エルミー達が俺を心配して近くに来てくれている。だけど彼女にはもう俺に害を与える気なんてないだろう。

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