job!!World 〜僕が輝く方法〜

染夜 こころ

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『job!!World』。このゲームはRPGの大型オンラインというよくあるジャンルではあるが、職業の多彩さが群を抜いており、僕は生愛者ブリーダーを選んだ。




僕はこの世界ではSNoWという名前だ。本名の雪からとった。
僕は争いを望まない、生愛者。生愛者というのはモンスターを倒すことなく、心を通じ合わせる職業だ。人と話すことは苦手でも、モンスターなら別らしい。

「SNoW様ー!!!」

僕はこの世界ではトップの生愛者。洗練されたアバターとその実力でファンも多い。
人と話さない(本当は話せないのだが。)というのはクールであるということになり、僕にとっては願ったり叶ったりだ。

「やぁピークス。元気にしていたかい?」

僕の相棒は龍のピークス。移動手段であり、いい友達だ。
ピークスはゴロゴロ喉を鳴らし僕に頬ずりした。

今日はアップデートした次の日ということで街は賑わっていた。この世界には鍛冶屋という職業もあるため、プレイヤーが店を開いている場合も多い。
アップデートにより増えた素材で新たな武器が生まれたようで、活気溢れた雰囲気である。
僕も新しい装備のためにお金であるパーズを貯めておいた。単位としては1円=1パーズで、金銭感覚はリアルと同じだ。
僕が通う装備屋は最初の街、「アルナルカ」の裏路地にある陰気な店だ。見た目にそぐわない品質の良さで、贔屓にしているところだ。

「やぁ!こんな店で出会えるなんて思わなかったよ、勇者さん。」

普段は寡黙でクールな店主が見たこともないような明るい表情、声色で話している。
その相手は…端麗な顔の女プレイヤー。店主へのちょっとした失望感に襲われつつ彼女を見る。
白い肌に赤色の目。銀色の髪をひとつに結い上げてあり黒いタンクトップと白いカーゴパンツを合わせ、そこに立派なマントを羽織っている。

「あれ…あんたもここの買い物客か?変わったヤツだな。」

少女は可愛らしい声とは対照的な言葉と共に大剣を背負った。
僕は声に出さず、頷いて応えた。僕の名前を知るプレイヤーは多いし、僕が話さないこともみんな知っている。

「なんだよ…感じ悪いな。ってか、あたしの事知らないのか?」

少女は怪訝な顔をして、首を傾げた。いやいや逆に僕の事も知らないのか、と溜息を零し、僕はさっさと買い物を済まそうとカウンターに立った。

「チッ…腹立つな…」

少女は苛立った様子で店を出た。
と、その瞬間少女の叫び声が聞こえる。そしてピークスの警戒した声が低く響く。いつもは人がいないのでピークスは道において買い物をしている。僕は会計もせず外へ駆け出した。

そこには少女が買ったばかりの大剣をピークスに向けていた。

「なんでここに龍がいるんだよ!討伐クエストなんて聞いてねぇぞ!」

ピークスは低く唸っているが、目は怯えている。龍と言えど生愛者の相棒ともなれば人間を信じきっていて、言ってしまえば仔犬同然なのだ。

少女は大剣を振りかぶり、斬り掛かろうとしていた。

やめろやめろ、

「やめろ!!」

自分でも驚くような低い声。少女と龍は目を丸くして僕の方を見た。
怯えきったピークスの元へ走る。

「おい、バカ!喰われるぞ!」
少女が僕の裾を掴もうとするが振り払う。

「こいつは僕の相棒だ。僕は生愛者。間違っても殺すなよ」

「生愛者…龍が相棒…?」
少女の目にはハテナが映るようだった。

すると少女はいきなり僕の肩を掴み、
「いいじゃねぇか!あたしと行こうぜ!鏡のクエスト!!」


「はぁ…?」
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