本の薬棚

新社会人の皆さんへ

4月に社会人となったばかりの人へ。
特に営業職として目標の数字が肩にのしかかっている人へ

この物語の主人公、咲野花はオフィスの不動産仲介を扱う営業マンとして働く新社会人だ。
5月にビギナーズラックかと思われた大きな案件が潰れ、それ以来1つの実績も出せていない彼女の頭には絶えず“退職”の2文字がチラつく。
上司になんて切り出すか、頭の中で文章を練りつつ、“無”のまま仕事の時間をひたすらやり過ごす。
家に帰れば出来合いの惣菜を食べ、そのまま畳で寝落ち、気がついたら朝になっている。
彼女は等身大のよくいる新社会人だ。
彼女の持っていた唯一の案件が潰れた時、彼女は特務室に飛ばされる。
早乙女という不思議な人とそこで出会い、少しづつ社会人として成長をしていく。これはそんなストーリーだ。

現実は物語のように上手くはいかないかもしれない。左遷はあくまで左遷であってそこから這い上がれる人はほとんど居ない。
今まで何も成果が出せなかった人がある日突然努力が報われるなんてことも無い。全てを見透かしたような上司も普通はいない。

でも、新社会人となって壁にぶち当たっている人に、この物語は咲野花はほんの少し希望を与えてくれる。
通勤途中にでも開いて見てほしい。
きっと、とりあえずあと1日頑張ろう。
そんな気持ちが湧いてくるはずだ。

『このビル、空きはありません! オフィス仲介戦線、異常あり』森ノ薫   オレンジ文庫