シャウには抗えない

神栖 蒼華

文字の大きさ
11 / 67
第1章

11 魔物の異変

しおりを挟む

ガン ガン ガン

(………う、ん…)

ガン ガン ガン

『ガルア族長!』
『朝早くに申し訳ありません』

玄関の扉を叩く音に、シャウは目を覚ました。
外をみるとまだ陽が昇り始めた頃なのか、薄暗かった。

こんな朝早くに誰かが訪ねてくるなんて、何かあったのかな?

部屋を出て、下に降りていくと、父さんと母さんが警備隊の隊員と話している。
何か緊急事態が起こったのか、父さんに報告する隊員の顔は険しく、隊員の話を聞いている父さんの顔も徐々に険しくなっていく。

「分かった。すぐに行く」

父さんの返事を聞くと、隊員は走って去っていった。

父さんと母さんは手早く身支度を済ませると、父さんはそのまま急いで出て行った。
母さんは、僕に近づいてくると、一枚の紙を渡してきた。
紙を見ると、びっしりと文字が箇条書きされている。

「シャウ、その紙に書かれている物を持って後から来てくれる? 母さんは先に行って治療しなきゃいけないから」
「分かった」
「お願いね」

戦場にでも行くかのような厳しい眼差しで、母さんは父さんの後を追いかけていった。

「よし、急がないとね!」

自分に気合いを入れると、着替えのために自分の部屋へ走る。


   ***


母さんに言われた荷物を持って、警備隊に併設されている治療室の前で立ち止まる。

「おはようございます。族長ガルアの娘、シャウです。母ミイシアに言われた荷物を持参いたしました」

治療室ちりょうしつの前に立つ警備兵に入室の許可を求める。

「ミイシア様より伺っております。どうぞお入りください」

返事を聞いてから、治療室の扉を開ける。
なかに足を踏み入れた瞬間、ぞわりとした悪寒というかまとわり付く不快感を感じて、鳥肌が立つ。
気持ち悪さに鳥肌がたった腕をさすり、震えそうになる体を抱きしめた。

「シャウ、魔道具をちょうだい」

母さんに呼ばれて、慌てて持っていた鞄から魔道具を取り出した。
母さんが持っていた魔道具を預かり、鞄から出した魔道具を渡す。

部屋の中には二人、ベットに横たわっていた。
その内の一人の前に母さんは座り、治療している。

母さんは額に汗をにじませ、魔道具を左手に持ち、右手を黒く変色した隊員の腕の部分にかざしている。
かざした手のひらから白く輝く光が降り注ぎ、黒く変色した部分の端からゆっくりと肌色に戻っていく。

黒く変色しているということは、魔物の呪いをもらったのだろう。
呪いとは魔物に直接触れ、その部分が呪いを受け、肌が黒く変色することを示す。
呪いを放っておくと、全身に広がっていき、心臓に到達すれば心臓が止まり、脳に到達すればそのまま目覚めることはない。
だから、母さんみたいな治療士が居ないときは、呪いを受けた部分を切り落とすしか対処方法がない。
そして、治療士も治療するのは時間との勝負なのだ。しかも、大量の魔力が必要になってくる。
そのために、母さんは日頃から魔道具に自分の魔力を溜め、魔力を溜めた魔道具を何個も用意している。

今までも母さんが治療しているところは見たことがあるけれど、こんなに治療に苦戦している所を見たことがなかった。

治療に魔道具はどんどん消費されていくのに、呪いを受けた黒い部分の減りの少なさを見ていると、いつもと違う異常さを感じずにはいられなかった。

(なんだか恐い…)


「うぅ……」

うめく声にもう一人のベットに横たわっている人をみると、足に黒く変色した部分があり、そこからもやのようなものが見えた。
そのもやから先ほど感じたまとわり付く不快感を感じ、より一層底知れない恐怖を覚えた。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

処理中です...