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第1章
22 イラザの世話焼き
しおりを挟むラオスとイラザに会わなくなって数日。
家に閉じこもってばかりいたシャウは、さすがに母さんに家から追い出されてしまった。
「シャウ、今日はどこに行く?」
警備隊副隊長のザンガが、今日の僕の護衛を引き受けてくれた。
申し訳なくて断ろうとしたら、街の見回りついでだから大丈夫だと言われてしまった。
だからシャウは行く当てもなくザンガと街に繰り出していた。
「……特に行くところ、ない…」
「そうか」
シャウが無愛想に答えても怒るでもなく、優しく笑っていた。
ザンガは僕が今ラオスとイラザに会わなくなっていることを知っているのかもしれない。
「ザンガ、ごめんなさい」
「気にするな、それよりもかみさんに頼まれた香辛料を買いに行ってもいいか?」
「うん、いいよ」
ザンガに気を使わせてしまった。
申し訳なく思いつつ、ザンガと店に向かって歩き出した。
香辛料が売っている店が見えてくると、見知った後ろ姿が見えた。
(イラザ…)
突然立ち止まったシャウに不審に思ったザンガはシャウの視線の先を見た。
「あ? あれはイラザか」
「………」
ザンガはイラザを見た後、シャウを見てこめかみをかく。
「あー、俺だけ行ってくるな」
シャウはイラザから目線を外さないまま頷く。
それを見たザンガは苦笑すると、イラザのいる店に入っていく。
イラザは近づいてきたザンガに気がついて笑って会話をしていた。
そして、また目の前にある香辛料の山から幾つかを手にしては吟味しているようだった。
店の中から女性が一人大きな籠の中に沢山の瓶を入れて出てきた。
籠が重いのか、少しふらつきながらも店の前にある空いているスペースに瓶を置こうとして、躓いた。
「あっ…」
シャウは小さく声を漏らしていた。
店の前で派手に転んだ女性が頭から香辛料の粉を被っていた。
転んだ女性はすぐに立ち上がると、落とした籠の中に瓶を拾うと店の奥から箒を持ってきて地面に散らばった香辛料を片づけていく。
ただその女性は自分の頭に香辛料を被ったままなのに気づかなくて、動く度に頭の香辛料が地面に散らばった。
それを見たイラザが少し笑うと、その女性に声をかけると近くにあった椅子に座らせた。
そして布を取り出すと、その女性の頭から香辛料を払い落としていく。
女性は目をあけたままだったのか、目を擦りだした手をイラザは止めて一度その場を離れ店の奥に消えると、濡れた布を手にして戻ってきた。
そしてそっと顔についた香辛料を拭き取っていく。
ツキンと胸が痛んだ。
シャウは目の前の出来事を呆然と眺めていた。
今までイラザが僕以外の人に世話焼きしているところを見たことがなかった。
でも、僕が知らなかっただけで、僕以外の人にも世話を焼いていたんだ。
それとも、その女性がイラザの特別なのかな?
そう思ったときにもツキンと胸が痛んだ。
そうか、僕は勝手にイラザの特別だと思っていたんだ。
あまりにも小さい頃から一緒に居すぎて、居るのが当たり前になっていたけれど、そうだよね、幼馴染みなだけだもんね。
(そっか、そうだよね)
イラザだって好きな人くらいいるよね。
僕、邪魔しちゃいけないよね。
もう見ていられなくて、視線を逸らしていると頭の上から声がした。
「どうした? シャウ」
見上げると、店の袋を抱えたザンガが立っていた。
「ううん、何でもない。いいの買えた?」
「ああ、ちょうど最後のひとつだった」
「そっか、間に合って良かったね。じゃあ、帰ろうよ」
シャウの言葉に一瞬だけイラザの方を見たザンガは、改めてシャウを見ると頭を撫でられた。
「じゃあ、帰るか」
「うん」
シャウは最後に一回チラリとイラザを見て、振り切るように家に向かった。
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