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④少し経って8日目
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最近の聡は、休み時間のあいだ、ずっとスマホをいじっている。普段、聡を中心に回っている会話は、有司と友人Aだけでは少しも弾む事はなかった。
「なぁ、聡。あれ続けてるの?ストーカー」
「ん、ああ」
友人Aがカマをかけるが、聡は全く取り合わない様子でスマホの画面に指を滑らせている。
「おい、聞いてんのかよ?ストーカーは犯罪だぞ」
「ん、ああ、そうだな」
「お前さっきから、何やってんだよ」
そう言いながら、友人Aがスマホに手をかけ中を覗き込もうとしたとき、聡がその手、強く叩いた。
「何勝手に触ろうとしてんだよ!」
少々気色ばんだ聡に対し、友人Aは明らかにうろたえたようだが、なんとか平静を装い「お前が話し聞かないからだろ」と震えた声で返した。
「話し?話って何だっけ?」
「ほら、聞いてない。佐々峰だよ、佐々峰の事まだ追いかけてるのかって話」
先程のストーカー云々からは幾らかトーンダウンした言い方で友人Aは問いかけた。
「ああ、まあな。俺、なんか才能あるっぽいんだ」
「才能ってなんだよ!?」Aの顔がパッと明るくなった。「ストーカーの才能って、お前、それじゃあ変態じゃねえか」
ようやく聡が話に乗ってきて、調子にのった友人Aがまくし立てると、聡はいきなりAの胸ぐらを掴んだ。
「おまえ、何を偉そうに俺のこと変態扱いしてんだ!?」
「え?」
「前から気に入らなかったんだよ、俺らのこと軽く見やがって」
「な、何だよ軽く見るって」
「俺らは、お前が他の奴らにハブられてるから相手してやってんの。なのにイキってマウント取りにきやがって」
Aは胸ぐらを掴まれたまま、引き離すことも出来ずに、たじろいだ。
「とにかく、もういいわ。お前、うちらのところ来んな」
突き飛ばすように聡が手を離すと、そこまでされてもなお、名残惜しそうにしながらAは、その場を去った。
「やっと邪魔物が居なくなったよ」
居丈高に振る舞いながら聡は呟く。正直、有司には聡のこの態度に違和感があった。何故だか自信に満ちた表情と態度。それに少なくとも聡とAは気が合っているのだと有司は思っていただけに今の行動は理解ができない。
「なあ、有司。お前にだけ、いい物見せてやるよ」
有司に対しては、先程Aにとった態度と違った柔和さで接したが、その目には異様な自信が溢れていた。
「ちょっと廊下に出ようぜ」
聡は有司を廊下に連れ出し、周りに誰もいない事を確認すると「これ見てみろよ」とスマホの画面を差し出した。そこにはカメラで撮ったであろう画像があった。
それは佐々峰の画像だった。
有司は、それを見て世界がグニャリと歪んだ感覚に陥った。呼吸が荒くなるのを隠す事が出来ず、胸を締め付ける圧迫感は今まで感じた事が無いくらい強烈で、今にも足元から崩れ落ちそうなのになった。
それでも有司は、スマホから目を離す事が出来なかったのだ。
佐々峰は、おそらく公園の中でしゃがんでいる。カメラから背けられている為、顔の表情は見て取れない。長い間、佐々峰を視界やカメラで捉えてきた有司には見慣れた姿に思えるがそうでなかった。
佐々峰は、しゃがんだ脚を大きく開いていたのだ。そして、そうなると必然的に佐々峰の下着は丸見えになる。聡のスマホはその様子を画像に収めていたのだ。
「もっと先も見てみ」聡に促され、有司は画面を指でなぞり画像を次々に表示する。
それは、有司が今まで想像はしていたものの、決して見る事が出来ない画像だった。
後ろ姿でスカートを捲し上げ、下着を腿まで下ろし、尻を丸出しにしている画像。ブラウスのボタンを全て開けブラジャーをさらけ出している画像。またそのブラジャーを外し大きな胸を露わにしている画像。
有司の心臓は、喉を通って外に這い出ようとするかのようにドクドクと脈打った。
これは、本当に現実なのか?精密に作られたコラージュなのではないのだろうか?
しかし、有司は聡にそんなスキルがない事を知っている。認めたくない気持ちと認めざるを得ない現実は波のように寄せては帰る。
夢中でスマホの画像を送り続けていた有司の目に、ひとつの画像がとまった。
それは、おそらく佐々峰の後ろ姿を上から撮った画像で、服は着ているものの、その着衣は乱れており、佐々峰は上体を倒しながら前屈みになり両手を手にあてそれを支えているような格好だった。今まで見てきた画像から比べて、さほど目を引くものではないのだが、その画像の真ん中には、それが『動画』である事を意味する『再生ボタン』が表示されていた。
有司は聡に断る事なくそれを押してしまった。
「んっ!んあっ!あ!ああっ!」
スマホから流れてきたのは聞いた事のない佐々峰の声だった。
「バカやめろ!」と聡が慌ててスマホの横にあるボリュームボタンを操作し音量をゼロにした。
音声が聞こえなくなった動画は固定されていない為、焦点がさだまらず、とても見辛い物だったが、それはセックスをしながら撮影をしている物だと容易に把握する事が出来るものだった。
「なぁ、聡。あれ続けてるの?ストーカー」
「ん、ああ」
友人Aがカマをかけるが、聡は全く取り合わない様子でスマホの画面に指を滑らせている。
「おい、聞いてんのかよ?ストーカーは犯罪だぞ」
「ん、ああ、そうだな」
「お前さっきから、何やってんだよ」
そう言いながら、友人Aがスマホに手をかけ中を覗き込もうとしたとき、聡がその手、強く叩いた。
「何勝手に触ろうとしてんだよ!」
少々気色ばんだ聡に対し、友人Aは明らかにうろたえたようだが、なんとか平静を装い「お前が話し聞かないからだろ」と震えた声で返した。
「話し?話って何だっけ?」
「ほら、聞いてない。佐々峰だよ、佐々峰の事まだ追いかけてるのかって話」
先程のストーカー云々からは幾らかトーンダウンした言い方で友人Aは問いかけた。
「ああ、まあな。俺、なんか才能あるっぽいんだ」
「才能ってなんだよ!?」Aの顔がパッと明るくなった。「ストーカーの才能って、お前、それじゃあ変態じゃねえか」
ようやく聡が話に乗ってきて、調子にのった友人Aがまくし立てると、聡はいきなりAの胸ぐらを掴んだ。
「おまえ、何を偉そうに俺のこと変態扱いしてんだ!?」
「え?」
「前から気に入らなかったんだよ、俺らのこと軽く見やがって」
「な、何だよ軽く見るって」
「俺らは、お前が他の奴らにハブられてるから相手してやってんの。なのにイキってマウント取りにきやがって」
Aは胸ぐらを掴まれたまま、引き離すことも出来ずに、たじろいだ。
「とにかく、もういいわ。お前、うちらのところ来んな」
突き飛ばすように聡が手を離すと、そこまでされてもなお、名残惜しそうにしながらAは、その場を去った。
「やっと邪魔物が居なくなったよ」
居丈高に振る舞いながら聡は呟く。正直、有司には聡のこの態度に違和感があった。何故だか自信に満ちた表情と態度。それに少なくとも聡とAは気が合っているのだと有司は思っていただけに今の行動は理解ができない。
「なあ、有司。お前にだけ、いい物見せてやるよ」
有司に対しては、先程Aにとった態度と違った柔和さで接したが、その目には異様な自信が溢れていた。
「ちょっと廊下に出ようぜ」
聡は有司を廊下に連れ出し、周りに誰もいない事を確認すると「これ見てみろよ」とスマホの画面を差し出した。そこにはカメラで撮ったであろう画像があった。
それは佐々峰の画像だった。
有司は、それを見て世界がグニャリと歪んだ感覚に陥った。呼吸が荒くなるのを隠す事が出来ず、胸を締め付ける圧迫感は今まで感じた事が無いくらい強烈で、今にも足元から崩れ落ちそうなのになった。
それでも有司は、スマホから目を離す事が出来なかったのだ。
佐々峰は、おそらく公園の中でしゃがんでいる。カメラから背けられている為、顔の表情は見て取れない。長い間、佐々峰を視界やカメラで捉えてきた有司には見慣れた姿に思えるがそうでなかった。
佐々峰は、しゃがんだ脚を大きく開いていたのだ。そして、そうなると必然的に佐々峰の下着は丸見えになる。聡のスマホはその様子を画像に収めていたのだ。
「もっと先も見てみ」聡に促され、有司は画面を指でなぞり画像を次々に表示する。
それは、有司が今まで想像はしていたものの、決して見る事が出来ない画像だった。
後ろ姿でスカートを捲し上げ、下着を腿まで下ろし、尻を丸出しにしている画像。ブラウスのボタンを全て開けブラジャーをさらけ出している画像。またそのブラジャーを外し大きな胸を露わにしている画像。
有司の心臓は、喉を通って外に這い出ようとするかのようにドクドクと脈打った。
これは、本当に現実なのか?精密に作られたコラージュなのではないのだろうか?
しかし、有司は聡にそんなスキルがない事を知っている。認めたくない気持ちと認めざるを得ない現実は波のように寄せては帰る。
夢中でスマホの画像を送り続けていた有司の目に、ひとつの画像がとまった。
それは、おそらく佐々峰の後ろ姿を上から撮った画像で、服は着ているものの、その着衣は乱れており、佐々峰は上体を倒しながら前屈みになり両手を手にあてそれを支えているような格好だった。今まで見てきた画像から比べて、さほど目を引くものではないのだが、その画像の真ん中には、それが『動画』である事を意味する『再生ボタン』が表示されていた。
有司は聡に断る事なくそれを押してしまった。
「んっ!んあっ!あ!ああっ!」
スマホから流れてきたのは聞いた事のない佐々峰の声だった。
「バカやめろ!」と聡が慌ててスマホの横にあるボリュームボタンを操作し音量をゼロにした。
音声が聞こえなくなった動画は固定されていない為、焦点がさだまらず、とても見辛い物だったが、それはセックスをしながら撮影をしている物だと容易に把握する事が出来るものだった。
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