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ドラゴンの言うことにゃ
しおりを挟む頭の中など読めないアンズとガーリックは、突然のセリフに思えた様で首を傾げてる。
『我はこの大きさなので声を出して話すと主らの耳が壊れる恐れが有るのでな。
慣れるまで我慢してくれ』
ああ、確かにこのスペースでこのサイズの頭部から出る声は、ハウリングとかも起こしそうだし、鼓膜が破れたり脳が揺れるだろうね。
『そうだな。
しかし主は声を出すが良いと思うぞ。
連れに通じぬだろう』
「アドバイスありがとうございます。
声にしないと、皆には通じませんよね」
『フハハハハハ、無理して言葉遣いを改める事はない、喋りやすい様に話すが良い』
「気を使っていただきありがとうございます。
でも頭の中と違い対人…人?と話す時はこうなりますね。
正しい敬語ではないですけど、会話をする時は相手を不快にさせない話し方をする様に心掛けろと言うのが父の教えですので、無理しているのではなく、これが目上の方に対しての話し方なのです」
『そうか、主が無理をしていないのならそれで良い』
「ただ、まだ世間知らずなのは自覚有りますので、たまに変な言葉遣いになったり、咄嗟に突っ込んでしまうのはご容赦ください」
『良い良い、言葉を取り繕っても我には無駄な事だから、自然に振る舞えば良い』
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる僕に、ロンは壁際に有る出っ張りに腰掛ける事を勧めてくれたので、遠慮なく正面に腰かけた。
壁際とロンの頭までの距離は2メートル弱かな。
本当にデカイのでかなりの迫力だ。あの口を開けるとパクリと一飲みだろうな。
『喰わぬから心配するな』
あ、ヤベ、そうだった、考えダダ漏れなんだった、すみません。
『ハハハハハ、面白いのお。
心は千々に動くのに、恐怖心は全く無しか』
「確かに大きさには驚くものは有りますけど、恐怖は無いですね。
こちらから危害を加える事がない限り、貴方もこちらに何かをする事は無いでしょう?」
『ほほう、何ゆえそう思う?』
「だって貴方神様ですよね?」
アンズ達にも分かる様に声に出して言った。
ドラゴンはじっとこちらを見て
『何故ゆえそう思う?』
と問いかけてきた。
「そうですね、まずは考えを読まれた事と、ここの空気が女神から呼び出される時の空間に似ている事と…」
ドラゴンはニャリと笑う。
迫力だ。
「後は、先日女神に呼び出された時の会話で、それより上の存在が有るのではないかと思った事から推測しました」
『ほほう、中々察しが良いな。ただ少し訂正するなら、我は元神だ』
「元……ですか?」
『そうだな、引退して余生を新たに顕現した神のお目付役……アドバイザーをやっているという事だな』
ああ、成る程。
経験の浅いあの女神の世界が、滞りなく回っていくための監視役か。
そりゃあ神様達からしたら些細な命でも、生きているものにしてはリアルな問題なんだから「あ、失敗しちゃった」で済ませられないもんね。
『そう言う事だな』
「なら特別種を造られたのも貴方ですか?」
『ふはははは、頭の良い奴だな、何故わかる?』
「他の種族と比べて一人だけですし、繁殖もしない。
その上何かしらの役割が有るから、他と違うな、と。
…ん?それならエルフも繁殖しないな?」
『エルフはシンシリアが特別種を真似て作った種だな。
しかし一人きりは寂しいと少数人作った。
あれは止めるべきだったと思っていたのだが、お前が救ってくれたな。助かった』
ドラゴンが瞳を閉じて頭を下げる。
ヤバイ、神様に頭なんて下げさせるのってどうよ?
(あの駄女神は除く)
逆に怖いからやめて下さい~!
『ははは、お前は愉快だな。
そう言う所に救われたのだな。
勿論エルフだけではなくこいつらも』
話を振られたガーリックが頷く。
なんだ?誉め殺し?むず痒いぞ、話を変えようよ。
「それで、今日は何かご用が有るのではないのですか?
俺もドラゴンに逢いにと思ってましたけど、そちらも何か有るのですよね?」
『うむ、そうだな、お前がどんな人間なのか知りたかったのと、お前の知りたい事で答えられる事を答えてやろうと思ってな』
「あれ?俺の事と言われても、貴方は考えてる事がわかるんですよね?
わざわざ呼び出さなくても良かったのでは?」
『ははは、幾ら何でも離れた場所に居ると分からぬよ。
物を考えているのは生き物全てなのだから、その中の一つを拾い上げる事は無理だな』
「成る程。
聞きたい事……米とか味噌醤油は手に入らないですか?」
「…………ハハハハハハハハハハハ」
一瞬の間を置きドラゴンが大声で笑い出した。
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