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第三章 異世界の馬車窓から

この世界の学問事情と結婚事情

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ユゲ家では王弟のレン様が迎えてくれた。
宰相のレニ様はまだ仕事中の様だ。まぁまだ昼前だし。

「レン様、暫くの間よろしくお願いします」

頭を下げるとレン様は、笑いながら、
「敬称など不要ですよ。
レンとお呼びください」
と言ってくれた。

実際の僕と同じ年くらいだろうけど、見た目幼児が呼び捨ては無いだろう。

「ではレンさんで宜しいでしょうか?」
「ではそれで。
勿論妻や子供も敬称不要ですよ」
「いえ、流石に一国の宰相を敬称抜きとは……」
「城では宰相ですが、家では私の妻ですからね。
それに性別も変わりますから切り替えしやすいでしょう」

イタズラっぽく笑うレンさんに、
「確かに」
と頷く。

「では私の事も様抜きでお願いしますね」
僕が言うと、
「ならばお言葉に従いましょう」
態とらしく言いながら笑って手を差し出す。

僕は握手だと思って握り返したのだが……はい、そのまま手を引かれて屋敷の中へと案内されました。

ええー?王様もレンさんもハーフじゃ無いと聞いていたんだけど。

後日聞いたところによると、魔物の人達の様な『触りたい、抱きつきたい、触って欲しい』とかではなく、ただ単に自分の子供より小さな見た目だから手を引いた、との事。

つまりは完全に子供扱いって事だった。


*****


応接室でレンとお茶を飲みながら話をする。
「妻は夜になると戻りますが、息子も今は家庭教師が来ていて勉強中なので、紹介は昼食時で良いですか?」
この世界の貴族の子供は、午前中家庭教師に勉強を教わる様だ。

「来年から学園ですから、基礎をしっかり学ばないといけませんからね」

家庭教師は色んな基礎を教えて、12歳から学園へ通うそうだ。

基礎…礼儀作法に始まり歴史や各国との力関係、国内の諸事情から馬術、剣術、体術、薬学、勿論妖術の基礎も学ぶと。

基礎だと言っても、学ぶ事が多くない?

その基礎を学びながら、本人の資質や希望で、学園で何を学ぶか決めるそうだ。

成る程、家庭教師は小学校、学園は高校とか大学って感覚かな。 
ん?中学はどこに行った?

とにかくこの世界では、学園で四年間学び、卒業後それぞれの道を進むとの事なので、学園は大学って感覚かな。


この世界では16歳で成人なので、学園卒業したらもう一人前だと。
僕の中の感覚では16歳ってまだまだ子供って感じるけど、卒業と同時に結婚する人もそれなりに居るそうだ。

いや、早いって!って思うのは現代日本人の感覚か?

そして他国では当てはまらないそうだけど、この国では離婚率ゼロなんだと。

素晴らしい!

死別は有るけど、良く聞く浮気や性格の不一致、DVや仕事にのめり込み過ぎて家庭崩壊とか、ギャンブルや買い物などの借金が理由で……などなど結構耳にしてたけど、ここでは無いそうだ。

素晴らしい!!

ましてやキモいとか、臭いとか、動物に好かれ過ぎるとか…そんな理由で別れるなんて有り得ないとか。

素晴らしい!!!

結婚するのも一人で生きるのも自由で、独り身で居ても、周りは何も言わないと。

素晴らしい!!!!

別に離婚をしてはいけない、など決まっているわけでは無いけれど、

『この人とずっと一緒に生きて行く、死が二人を分かつまで』

と思える相手と結婚するので、離婚は有り得ないとの事。

素晴らしい!!!!!

独りで居るのは、そんな運命の相手に出会えて居ないだけの事で、無理に結婚する必要も無い、と言う考えが一般的だと。

素晴らしい!!!!!!

浮気とかは無いのかと聞くと、逆に
『死ぬまで一緒に居たい程好きな人と一緒になって、他に目を向けるなどあり得ない』
そうだ。

いや、本当に素晴らしい!!

浮気…した事無いけど、された事は…………何だろう、景色が滲んで見えるなあ。

「魔物の方や祝福を受けた方は長生きしますからね、死別はあり得ますが、それ以外で別れるという事は無いですね」

「一生一緒に居る相手って、どうやって見つけるんですか?」
僕が聞くと首を傾げ、
「どうやってと言われても、出会えば分かるものなのではないですか?
運命の相手は必ず出会えますから。

私も妻と出会った時、私はまだ3歳でしたけど、ああ、この人が私の相手だとわかりました。

ですが、その時はまだ彼女には旦那さんが居ましたから、待ちましたよ。
妻もその時感じるものが有ったそうです」

ん?旦那が居た?
宰相さんは再婚か。
と言うか3歳って……。
「あ、妻の年は聞かないで下さいよ。
女性の年齢は秘密ですからね」
そう言ってレンは笑うけど、宰相さんハーフと言ってたし、結構年上なのかな。
しかし3歳で運命の相手が分かるとは、感覚が違うんだなとしか言いようが無い。

あれ?宰相さんと前の旦那さんは運命の人だったから結婚してたんだよね?
それなのに、レンさんにも【感じるもの】とかがあったの?

「運命の相手は必ずしも一人とは限らないのですよ。
寿命の違う相手と結ばれた時は、残された相手は、次の運命の相手が現れるのです。
浮気や略奪などしなくても、運命の相手とは必ず結ばれるのですから、時を待てば良いのです」

前の相手を忘れるわけで無く、愛を重ねて行くのだとか。
今はちょっと理解し辛い感覚だけど、そのうちわかるのかな。

でも良いなぁ、円満夫婦。
僕もこの世界で運命の相手に出会えると良いなぁ。
今度こそ、今度こそ幸せな家庭を……ああ、やっぱり視界がボヤけるよ…。




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