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1章
2.夫探し
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ニールが15歳の年に兄のシェーンは婚約した。シェーンはちょうど20歳だった。
シェーンの婚約者エリス・ケルバトロは侯爵家の令嬢だ。ノーラン家は魔道具店を営んでいて金はあるが、男爵家である。家格の釣り合いが取れていない縁談が成立したのは、その令嬢エリス・ケルバトロからの強烈なアプローチがあったからだ。
夜会でエリスはシェーンに一目惚れしたらしい。シェーンは父親に似た、涼しげな紫色の目に明るい茶色の髪をしている。背はスラリと高くて、人目を引く容姿であった。18歳で社交界に出て、今まで何も無かったのが不思議なくらいだった。
婚約が決まった夜、ニールはいつも通り、シェーンの部屋にいた。
「シェーン、婚約おめでとう!本当に良かった。侯爵家の令嬢を射止めるなんて・・!ノーラン家の未来は明るいね!」
「別に侯爵家と結婚しなくても、ノーラン家は安泰だったんだ。むしろ、断る事で、影響が出るってことだよ・・・。」
シェーンはため息をつきながら、ニールを抱き寄せた。
「これからはあまり、頻繁に魔力譲渡が出来ないから、限界まで入れておこう。」
シェーンはそう言ってニールの手を握った。ゆっくり、ニールの中に熱い魔力が入ってくる。
「シェーン!それはもういいんだ!」
ニールは慌てて、シェーンを止めた。
「なぜ?」
「今年、15歳になったから、王立魔法学校の寄宿舎に入ろうと思って。」
「ニール・・!それは無理だ!」
シェーンは厳しい口調で言った。でも、ニールは引き下がらなかった。
「お父様の許可はいただいて、試験を受けて先日合格したんだ。」
「私の魔力で合格したんだろう?入学した後、私の魔力なしでやっていけるとでも?あそこは、私も卒業しているから知っているが、そんなに甘くない。」
「自分の魔力も多少は・・あるのです。これからはもう大人だから、自分の力でやっていかないと!兄上がノーラン家を継ぐのだから、私は私の食い扶持を見つけます!」
ニールは胸を張ったが、シェーンは深くため息をついた。
「食い扶持なんて・・ここはニールの家だ。ずっといていいんだよ?王立魔法学校は、ニールがずっと行きたがっていたのを知っているから・・。」
シェーンはそう言って立ち上がった。机の引き出しの中から、何やら箱を取り出した。
「どうしても行くと言うなら、わかった。でも約束して?学校にいる間はこれをかける事。」
そう言って、箱の中から眼鏡を取り出してニールにかけた。
「絶対外さないで。約束できる?」
ニールはこくんと頷いた。
「あと、他人から魔力譲渡を受けてはダメだよ。ニールは少し間違えたら、・・ニールの貞操が危ない。魔力が欲しい時は、週末帰ってきなさい。いいね?」
ニールが頷くより先に、シェーンにキツく抱きしめられた。
「はあっ!結婚したくない!」
シェーンは悲痛な叫び声を上げた。
ニールは密かに、最後の「他人の魔力譲渡を受けない」という所には頷かなかったから、嘘はついていない、と思っていた。
ニールの魔力量で、王立魔法学校を卒業するなんて無理だ。そんな事、ニールが誰よりも分かっていた。
だから、ニールは決心していた。
(私に、毎日魔力譲渡をしても、有り余る魔力を持った人・・・私の夫になる人を王立魔法学校で見つけよう!そして王立魔法学校を卒業した暁には、宮廷魔導士として就職したい!)
ニールは、魔力を譲渡して貰った後、ちょっと恥ずかしいことになる事があるので、ニールのパートナーは「妻」でないほうがいいのではないかと思っていた。
(ヴィルトウェル王国は、同性婚も認められているから、なんとかなるだろう。)
王立魔法学校は国内外から、生徒が集まるのだから、とニールは簡単に考えた。
それに、ニールには思い描く人が、既にいた。
天才魔術師、フレデリック・デイモン先生!
ニールはフレデリックの魔力を想像して、笑顔になった。シェーンが「私は悲しいのに・・」と愚痴を溢したので、慌ててシェーンを慰めた。
シェーンの婚約者エリス・ケルバトロは侯爵家の令嬢だ。ノーラン家は魔道具店を営んでいて金はあるが、男爵家である。家格の釣り合いが取れていない縁談が成立したのは、その令嬢エリス・ケルバトロからの強烈なアプローチがあったからだ。
夜会でエリスはシェーンに一目惚れしたらしい。シェーンは父親に似た、涼しげな紫色の目に明るい茶色の髪をしている。背はスラリと高くて、人目を引く容姿であった。18歳で社交界に出て、今まで何も無かったのが不思議なくらいだった。
婚約が決まった夜、ニールはいつも通り、シェーンの部屋にいた。
「シェーン、婚約おめでとう!本当に良かった。侯爵家の令嬢を射止めるなんて・・!ノーラン家の未来は明るいね!」
「別に侯爵家と結婚しなくても、ノーラン家は安泰だったんだ。むしろ、断る事で、影響が出るってことだよ・・・。」
シェーンはため息をつきながら、ニールを抱き寄せた。
「これからはあまり、頻繁に魔力譲渡が出来ないから、限界まで入れておこう。」
シェーンはそう言ってニールの手を握った。ゆっくり、ニールの中に熱い魔力が入ってくる。
「シェーン!それはもういいんだ!」
ニールは慌てて、シェーンを止めた。
「なぜ?」
「今年、15歳になったから、王立魔法学校の寄宿舎に入ろうと思って。」
「ニール・・!それは無理だ!」
シェーンは厳しい口調で言った。でも、ニールは引き下がらなかった。
「お父様の許可はいただいて、試験を受けて先日合格したんだ。」
「私の魔力で合格したんだろう?入学した後、私の魔力なしでやっていけるとでも?あそこは、私も卒業しているから知っているが、そんなに甘くない。」
「自分の魔力も多少は・・あるのです。これからはもう大人だから、自分の力でやっていかないと!兄上がノーラン家を継ぐのだから、私は私の食い扶持を見つけます!」
ニールは胸を張ったが、シェーンは深くため息をついた。
「食い扶持なんて・・ここはニールの家だ。ずっといていいんだよ?王立魔法学校は、ニールがずっと行きたがっていたのを知っているから・・。」
シェーンはそう言って立ち上がった。机の引き出しの中から、何やら箱を取り出した。
「どうしても行くと言うなら、わかった。でも約束して?学校にいる間はこれをかける事。」
そう言って、箱の中から眼鏡を取り出してニールにかけた。
「絶対外さないで。約束できる?」
ニールはこくんと頷いた。
「あと、他人から魔力譲渡を受けてはダメだよ。ニールは少し間違えたら、・・ニールの貞操が危ない。魔力が欲しい時は、週末帰ってきなさい。いいね?」
ニールが頷くより先に、シェーンにキツく抱きしめられた。
「はあっ!結婚したくない!」
シェーンは悲痛な叫び声を上げた。
ニールは密かに、最後の「他人の魔力譲渡を受けない」という所には頷かなかったから、嘘はついていない、と思っていた。
ニールの魔力量で、王立魔法学校を卒業するなんて無理だ。そんな事、ニールが誰よりも分かっていた。
だから、ニールは決心していた。
(私に、毎日魔力譲渡をしても、有り余る魔力を持った人・・・私の夫になる人を王立魔法学校で見つけよう!そして王立魔法学校を卒業した暁には、宮廷魔導士として就職したい!)
ニールは、魔力を譲渡して貰った後、ちょっと恥ずかしいことになる事があるので、ニールのパートナーは「妻」でないほうがいいのではないかと思っていた。
(ヴィルトウェル王国は、同性婚も認められているから、なんとかなるだろう。)
王立魔法学校は国内外から、生徒が集まるのだから、とニールは簡単に考えた。
それに、ニールには思い描く人が、既にいた。
天才魔術師、フレデリック・デイモン先生!
ニールはフレデリックの魔力を想像して、笑顔になった。シェーンが「私は悲しいのに・・」と愚痴を溢したので、慌ててシェーンを慰めた。
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