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2章
1.乙女ゲーム始まる
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「ねえニール、伊達メガネって邪魔じゃない?第一、チューする時どうするの?殿下はニールの眼鏡外せないでしょ?」
ナオミは頬杖をついて、ティーカップのお茶を匙でかき混ぜながら、さして興味なさそうにニールに尋ねた。
「別に、そのままで、邪魔ではありません。」
ニールが答えると、ナオミは急にカップをガチャンと置いた。
「ちょっと!あんた達!チューしてんじゃないの!!なんなのぉー!!もう!!」
「そ、そういった意味合いではありません!」
「他にどういう意味があるんだか・・ねえ、先生?」
「ナオミ様、そうやってニールを誘導尋問にかけるのはおやめ下さい。ナオミ様は午後からまた、ダンスとマナーと歴史の授業と聞いていますよ。」
「そうなの!」
ナオミはまた、匙をテーブルにバン、と置いた。
「ついにゲームイベントが発生するのよ!だから歴史の授業が追加になっちゃって・・って、よく聞きなさい!ニール!!」
ナオミはニールを指差した。
「"アーベントドゥンケル王国"の使者・・王子がやってくるのよ。来週、晩餐会が開かれるわ。」
「アーベント・・北の、魔族の国の王子が?!」
ニールは驚いた。過去、ヴィルトウェルとは何度も対立しており、国交などなかったはずだ。
(最近、レオノーラ王女殿下の魔法の練習も中止になった。王族は晩餐会の準備に追われているのかもしれない・・。)
「陛下の悲願だった、平和的、瘴気問題の解決・・。交渉が進んだんだな。」
フレデリックは美しい顔を綻ばせた。
「ちょっとぉ!元愛人の功績を喜んでる場合じゃないのよ!魔族の連中が、ただで来ると思ってんの?!」
「そうは思っていないが、国交正常化の第一歩だろう・・?」
「この晩餐会で、私がアーベントドゥンケルの王子の好感度を上げちゃうと、魔族王子とのルートが開いちゃうわけ!そうすると、レオンハルト殿下が悪役なのはもちろんのこと、ヴィルトウェル全体が闇落ちのメリバ行きなのよ!今までお世話になったヴィルトウェルに後ろ足で砂を引っ掛けることになるような真似、私には出来ないわ!だから、絶対にこのルートには入らない!・・というわけで、私は晩餐会を欠席します!」
「晩餐会を欠席?!ナオミ様、それはダメだ!聖女であるナオミ様が出席されないなんて、それこそ国際問題だ!」
フレデリックは慌てて、ナオミを説得しにかかった。しかし、ナオミは抵抗した。
「だって私、チートな可愛さの可憐な少女なのよ?!目が合ったら絶対惚れられちゃうでしょうが!!」
「魔族王子に身染められるのを危惧しておられるのか?それだったら、その性格を前もって知らせておけば、絶対惚れられないと思うから、安心して出席してくれ!」
「ちょっと、先生!!」
二人は睨み合った。ニールは二人の間でオロオロしたが、何とか場を納めようと、発言した。
「で、では、ベールを被って、お顔を隠すのは如何ですか?そうすれば、ナオミ様の可憐なお姿は見えないかと。」
「ニール!採用します!」
フレデリックはやれやれと肩をすくめた。
「解決したようですね。では、ニールに魔力譲渡して、お引き取り願います。」
フレデリックはピシャリとナオミに言った。ナオミはまだ何か言いたそうにしていたが、渋々魔力譲渡して、フレデリックの研究室を後にした。
「さあ、我々も始めよう。時間がないのはこちらも同じだ。」
ニールは頷いた。
(アーベントドゥンケルのことも気になるけど、今は自分にできることをしよう。)
予想通り、浄化魔法の習得は困難を極めた。
フレデリックもニールも見たこともない魔法だ。フレデリックが翻訳した歴史書を一緒に浚いながら魔法の構築について話し合った。
意見が合わないこともあったが、この魔法が難しいということについては、二人の見解が一致した。
(もっと、当時の資料が欲しい。図書館の資料は、フレデリック先生がほぼ調べている。もっと他に・・。)
ニールは考えた。
ナオミは、前世でこの世界のことを知っていたらしい。関連の書籍を持ってくることを、神にも許可されたとか。
(あの本を、フレデリック先生も含めてもう一度読んでみれば、何かヒントが見つかるかもしれない・・。)
ニールは明日、ナオミに本を借りることに決めた。
ニールは魔法の練習を終えた後、子ニールをレオンハルトのところに届けた。子ニールの食事はレオンハルトの魔力だから、夕方にはレオンハルトの部屋へ帰すことになっている。
しかし、ニールが夕食を済ませて風呂を借りた後も、レオンハルトは戻っていなかった。
子ニールは腹が減ったようで、風呂上がりのニールの所までやってきた。ニールは今日、浄化魔法の練習をしたので、レオンハルトの魔力が残っていない。
(どうしよう・・。)
子ニールがニャーニャーと鳴くので、応接室に連れて行くと、テーブルの上に青い紐がついた棒があった。
暫くそれを振って遊んで、飽きてきたら近くにあった袋でかさかさと音を出してやった。一通り遊ぶと疲れたのかニールの膝で丸まって眠った。
子ニールは暖かくて、ニールもソファーで眠ってしまった。
ニールは耳元で「ニール・・」と、名前を呼ばれて、薄目を開けた。暗い室内なのに、ニールの名前を呼んだその人は光の魔力でぼんやりと光っていた。
その人に手を伸ばしたら、手を握り返してくれた。
口付けされて、魔力が流れてくる。
(殿下・・。)
ニールは眠っていて眼鏡を外していたから、今夜は、より、距離が近く感じた。
(ナオミ様が「伊達メガネは邪魔じゃないのか」と言っていた意味がわかった・・。)
ニールは明日、眼鏡を外すこと、ナオミに本を借りることを決めて、また眠りに落ちた。
ナオミは頬杖をついて、ティーカップのお茶を匙でかき混ぜながら、さして興味なさそうにニールに尋ねた。
「別に、そのままで、邪魔ではありません。」
ニールが答えると、ナオミは急にカップをガチャンと置いた。
「ちょっと!あんた達!チューしてんじゃないの!!なんなのぉー!!もう!!」
「そ、そういった意味合いではありません!」
「他にどういう意味があるんだか・・ねえ、先生?」
「ナオミ様、そうやってニールを誘導尋問にかけるのはおやめ下さい。ナオミ様は午後からまた、ダンスとマナーと歴史の授業と聞いていますよ。」
「そうなの!」
ナオミはまた、匙をテーブルにバン、と置いた。
「ついにゲームイベントが発生するのよ!だから歴史の授業が追加になっちゃって・・って、よく聞きなさい!ニール!!」
ナオミはニールを指差した。
「"アーベントドゥンケル王国"の使者・・王子がやってくるのよ。来週、晩餐会が開かれるわ。」
「アーベント・・北の、魔族の国の王子が?!」
ニールは驚いた。過去、ヴィルトウェルとは何度も対立しており、国交などなかったはずだ。
(最近、レオノーラ王女殿下の魔法の練習も中止になった。王族は晩餐会の準備に追われているのかもしれない・・。)
「陛下の悲願だった、平和的、瘴気問題の解決・・。交渉が進んだんだな。」
フレデリックは美しい顔を綻ばせた。
「ちょっとぉ!元愛人の功績を喜んでる場合じゃないのよ!魔族の連中が、ただで来ると思ってんの?!」
「そうは思っていないが、国交正常化の第一歩だろう・・?」
「この晩餐会で、私がアーベントドゥンケルの王子の好感度を上げちゃうと、魔族王子とのルートが開いちゃうわけ!そうすると、レオンハルト殿下が悪役なのはもちろんのこと、ヴィルトウェル全体が闇落ちのメリバ行きなのよ!今までお世話になったヴィルトウェルに後ろ足で砂を引っ掛けることになるような真似、私には出来ないわ!だから、絶対にこのルートには入らない!・・というわけで、私は晩餐会を欠席します!」
「晩餐会を欠席?!ナオミ様、それはダメだ!聖女であるナオミ様が出席されないなんて、それこそ国際問題だ!」
フレデリックは慌てて、ナオミを説得しにかかった。しかし、ナオミは抵抗した。
「だって私、チートな可愛さの可憐な少女なのよ?!目が合ったら絶対惚れられちゃうでしょうが!!」
「魔族王子に身染められるのを危惧しておられるのか?それだったら、その性格を前もって知らせておけば、絶対惚れられないと思うから、安心して出席してくれ!」
「ちょっと、先生!!」
二人は睨み合った。ニールは二人の間でオロオロしたが、何とか場を納めようと、発言した。
「で、では、ベールを被って、お顔を隠すのは如何ですか?そうすれば、ナオミ様の可憐なお姿は見えないかと。」
「ニール!採用します!」
フレデリックはやれやれと肩をすくめた。
「解決したようですね。では、ニールに魔力譲渡して、お引き取り願います。」
フレデリックはピシャリとナオミに言った。ナオミはまだ何か言いたそうにしていたが、渋々魔力譲渡して、フレデリックの研究室を後にした。
「さあ、我々も始めよう。時間がないのはこちらも同じだ。」
ニールは頷いた。
(アーベントドゥンケルのことも気になるけど、今は自分にできることをしよう。)
予想通り、浄化魔法の習得は困難を極めた。
フレデリックもニールも見たこともない魔法だ。フレデリックが翻訳した歴史書を一緒に浚いながら魔法の構築について話し合った。
意見が合わないこともあったが、この魔法が難しいということについては、二人の見解が一致した。
(もっと、当時の資料が欲しい。図書館の資料は、フレデリック先生がほぼ調べている。もっと他に・・。)
ニールは考えた。
ナオミは、前世でこの世界のことを知っていたらしい。関連の書籍を持ってくることを、神にも許可されたとか。
(あの本を、フレデリック先生も含めてもう一度読んでみれば、何かヒントが見つかるかもしれない・・。)
ニールは明日、ナオミに本を借りることに決めた。
ニールは魔法の練習を終えた後、子ニールをレオンハルトのところに届けた。子ニールの食事はレオンハルトの魔力だから、夕方にはレオンハルトの部屋へ帰すことになっている。
しかし、ニールが夕食を済ませて風呂を借りた後も、レオンハルトは戻っていなかった。
子ニールは腹が減ったようで、風呂上がりのニールの所までやってきた。ニールは今日、浄化魔法の練習をしたので、レオンハルトの魔力が残っていない。
(どうしよう・・。)
子ニールがニャーニャーと鳴くので、応接室に連れて行くと、テーブルの上に青い紐がついた棒があった。
暫くそれを振って遊んで、飽きてきたら近くにあった袋でかさかさと音を出してやった。一通り遊ぶと疲れたのかニールの膝で丸まって眠った。
子ニールは暖かくて、ニールもソファーで眠ってしまった。
ニールは耳元で「ニール・・」と、名前を呼ばれて、薄目を開けた。暗い室内なのに、ニールの名前を呼んだその人は光の魔力でぼんやりと光っていた。
その人に手を伸ばしたら、手を握り返してくれた。
口付けされて、魔力が流れてくる。
(殿下・・。)
ニールは眠っていて眼鏡を外していたから、今夜は、より、距離が近く感じた。
(ナオミ様が「伊達メガネは邪魔じゃないのか」と言っていた意味がわかった・・。)
ニールは明日、眼鏡を外すこと、ナオミに本を借りることを決めて、また眠りに落ちた。
応援ありがとうございます!
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