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最終話 ルーヴェンの風に包まれて
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朝の光が、そっとカーテンの隙間から差し込んでいた。
鳥のさえずりが遠くで聞こえ、窓辺には柔らかな風。
その風は木々の葉を揺らしながら、部屋の中に入り込み、寝台の上で寄り添う二人の髪をそっと撫でた。
ユリスは、ゆっくりとまぶたを開いた。
視界に最初に入ったのは、銀灰色の髪。
すぐそばに、穏やかに眠るガルドの姿。
寝息は静かで、体温がほんのり伝わってくる。
その胸の上には、自分の手が乗っていた。
そして、気づけば灰銀の尻尾が――彼の腰から伸びて、まるで毛布のようにユリスの体を包んでいた。
「ふふ……あったかい……」
思わず笑みがこぼれる。
昨夜の記憶がゆっくりと蘇る。
あの強い腕に抱きしめられたこと。
壊れるほど真っ直ぐに、愛を伝えてくれたこと。
(……夢じゃ、ないんだ)
ユリスは小さく息を吐いて、ガルドの寝顔を見つめた。
いつもより柔らかく、少し幼く見える横顔。
長い睫毛、整った鼻筋、口元にかすかな笑み。
普段は誰にも見せない穏やかな顔だった。
「……ガルドさん、寝てるときの顔、ずるいですよ」
小声で呟いて、そっと指で頬を撫でる。
その瞬間、ガルドの耳がぴくりと動いた。
ユリスは慌てて手を引っ込めるが――遅かった。
「……起きてる」
低く、かすれた声。
「ひゃっ……あ、あの……おはようございます!」
「おはよう」
ゆっくりと目を開けたガルドの瞳が、琥珀色に光る。
その目に映るのは、自分だけ。
そのことが恥ずかしくて、でも嬉しくて、ユリスは視線を逸らした。
「……あの、しっぽが」
「あぁ、寒いと思ってな」
「……!」
尻尾がふわりと動いて、ユリスの腰を軽く撫でた。
その仕草があまりに自然で、ユリスの顔が一気に真っ赤になる。
「う、わ」
「どうした」
「あ、朝から刺激が強いです……」
そう言って毛布を頭までかぶるユリスに、ガルドは小さく笑った。
その笑い声が低くて、心地よくて、胸の奥に沁みる。
「……ユリス」
「はい?」
「昨日のこと、後悔していないか」
「……してません。少しも」
毛布から顔を出して、ユリスはまっすぐ見上げた。
目を逸らさず、真剣に。
「僕は、自分の気持ちをちゃんとわかっています。あなたを好きだって……」
「……ユリス」
「だから、ガルドさん、もう覚悟してください!」
ガルドは息を呑んだ。
そして、ゆっくりと手を伸ばし、彼の頬を包む。
「お前は本当に、油断ならない」
「え?」
「そんな可愛いことを言われたら……一時も離せなくなる」
そのまま、そっと唇が重なる。
今度は、深くも激しくもない。
ただ、穏やかで、確かな“朝のキス”。
唇が離れたあと、ガルドが微笑む。
「……ユリス。どんなに時が流れても、必ず傍にいる。
お前が笑っていられるように、俺はこの街を、お前を守り続ける」
ユリスの瞳が潤み、微笑みが溢れる。
「はい、ガルドさん」
二人の間に、風が通り抜けた。
窓辺のカーテンがふわりと舞い上がり、光が差し込む。
その風はまるで、ルーヴェンの街が祝福しているようだった。
◇
午前の街は、穏やかに賑わっていた。
市場の通りでは、パンの香りが漂い、子どもたちの笑い声が響く。
人族も獣人も、肩を並べて暮らすこの街は、今日も平和そのもの。
ガルドとユリスはいつものように並んで歩いていた。
手には小さな紙袋――中には、焼きたてのパンと香草入りのスープ。
市場のおばさんに「いいカップルねぇ」と冷やかされて、ユリスが耳まで真っ赤になる。
「……カップルって言われちゃいましたね」
「間違ってはいない」
「っ! ガルドさん、そういうの、さらっと言うのずるいです」
「事実を言っただけだ」
無表情のまま言うガルドに、ユリスは呆れ笑いを浮かべた。
でも、嬉しくて仕方がない。
街の風がふたりの間をすり抜け、灰銀の髪と金灰の髪を揺らした。
「ねぇ、ガルドさん」
「なんだ」
「この街、やっぱりいいですね。風も、匂いも、人も全部。
でも今は……それよりも、あなたが傍にいるのがいちばん嬉しい」
ガルドが小さく微笑む。
その笑みは、風のように穏やかで、まるで光を宿していた。
「……俺もだ」
それだけで十分だった。
言葉は少なくても、想いは確かに届いている。
ルーヴェンの風が吹き抜け、二人の尻尾の先がふわりと触れ合う。
その瞬間、ユリスがくすっと笑った。
「……ねぇ、ガルドさん。今度、また一緒にお祭り行きましょうね」
「ああ。次は、踊るか?」
「えっ!? それはちょっと……!」
「なぜ?」
「恥ずかしいんですって!」
「練習につき合ってやる」
笑い声が風に混じって、街に溶けていく。
その先には、いつもの青い空。
そして、どこまでも続く“共にある”という日々。
穏やかな午後、ふたりは並んで歩き出した。
守る者と、癒す者。
風と、温もり。
ルーヴェンの風がそっと吹き抜け、二人の髪と尻尾をやさしく揺らした。
「――ユリス」
「はい?」
「愛してる」
「……僕も、です」
琥珀と灰青の瞳が重なり、春の風が、静かにふたりを包みこんだ。
――その風はきっと、いつまでもこの街を巡り、二人の愛をそっと見守り続けるのだろう。
鳥のさえずりが遠くで聞こえ、窓辺には柔らかな風。
その風は木々の葉を揺らしながら、部屋の中に入り込み、寝台の上で寄り添う二人の髪をそっと撫でた。
ユリスは、ゆっくりとまぶたを開いた。
視界に最初に入ったのは、銀灰色の髪。
すぐそばに、穏やかに眠るガルドの姿。
寝息は静かで、体温がほんのり伝わってくる。
その胸の上には、自分の手が乗っていた。
そして、気づけば灰銀の尻尾が――彼の腰から伸びて、まるで毛布のようにユリスの体を包んでいた。
「ふふ……あったかい……」
思わず笑みがこぼれる。
昨夜の記憶がゆっくりと蘇る。
あの強い腕に抱きしめられたこと。
壊れるほど真っ直ぐに、愛を伝えてくれたこと。
(……夢じゃ、ないんだ)
ユリスは小さく息を吐いて、ガルドの寝顔を見つめた。
いつもより柔らかく、少し幼く見える横顔。
長い睫毛、整った鼻筋、口元にかすかな笑み。
普段は誰にも見せない穏やかな顔だった。
「……ガルドさん、寝てるときの顔、ずるいですよ」
小声で呟いて、そっと指で頬を撫でる。
その瞬間、ガルドの耳がぴくりと動いた。
ユリスは慌てて手を引っ込めるが――遅かった。
「……起きてる」
低く、かすれた声。
「ひゃっ……あ、あの……おはようございます!」
「おはよう」
ゆっくりと目を開けたガルドの瞳が、琥珀色に光る。
その目に映るのは、自分だけ。
そのことが恥ずかしくて、でも嬉しくて、ユリスは視線を逸らした。
「……あの、しっぽが」
「あぁ、寒いと思ってな」
「……!」
尻尾がふわりと動いて、ユリスの腰を軽く撫でた。
その仕草があまりに自然で、ユリスの顔が一気に真っ赤になる。
「う、わ」
「どうした」
「あ、朝から刺激が強いです……」
そう言って毛布を頭までかぶるユリスに、ガルドは小さく笑った。
その笑い声が低くて、心地よくて、胸の奥に沁みる。
「……ユリス」
「はい?」
「昨日のこと、後悔していないか」
「……してません。少しも」
毛布から顔を出して、ユリスはまっすぐ見上げた。
目を逸らさず、真剣に。
「僕は、自分の気持ちをちゃんとわかっています。あなたを好きだって……」
「……ユリス」
「だから、ガルドさん、もう覚悟してください!」
ガルドは息を呑んだ。
そして、ゆっくりと手を伸ばし、彼の頬を包む。
「お前は本当に、油断ならない」
「え?」
「そんな可愛いことを言われたら……一時も離せなくなる」
そのまま、そっと唇が重なる。
今度は、深くも激しくもない。
ただ、穏やかで、確かな“朝のキス”。
唇が離れたあと、ガルドが微笑む。
「……ユリス。どんなに時が流れても、必ず傍にいる。
お前が笑っていられるように、俺はこの街を、お前を守り続ける」
ユリスの瞳が潤み、微笑みが溢れる。
「はい、ガルドさん」
二人の間に、風が通り抜けた。
窓辺のカーテンがふわりと舞い上がり、光が差し込む。
その風はまるで、ルーヴェンの街が祝福しているようだった。
◇
午前の街は、穏やかに賑わっていた。
市場の通りでは、パンの香りが漂い、子どもたちの笑い声が響く。
人族も獣人も、肩を並べて暮らすこの街は、今日も平和そのもの。
ガルドとユリスはいつものように並んで歩いていた。
手には小さな紙袋――中には、焼きたてのパンと香草入りのスープ。
市場のおばさんに「いいカップルねぇ」と冷やかされて、ユリスが耳まで真っ赤になる。
「……カップルって言われちゃいましたね」
「間違ってはいない」
「っ! ガルドさん、そういうの、さらっと言うのずるいです」
「事実を言っただけだ」
無表情のまま言うガルドに、ユリスは呆れ笑いを浮かべた。
でも、嬉しくて仕方がない。
街の風がふたりの間をすり抜け、灰銀の髪と金灰の髪を揺らした。
「ねぇ、ガルドさん」
「なんだ」
「この街、やっぱりいいですね。風も、匂いも、人も全部。
でも今は……それよりも、あなたが傍にいるのがいちばん嬉しい」
ガルドが小さく微笑む。
その笑みは、風のように穏やかで、まるで光を宿していた。
「……俺もだ」
それだけで十分だった。
言葉は少なくても、想いは確かに届いている。
ルーヴェンの風が吹き抜け、二人の尻尾の先がふわりと触れ合う。
その瞬間、ユリスがくすっと笑った。
「……ねぇ、ガルドさん。今度、また一緒にお祭り行きましょうね」
「ああ。次は、踊るか?」
「えっ!? それはちょっと……!」
「なぜ?」
「恥ずかしいんですって!」
「練習につき合ってやる」
笑い声が風に混じって、街に溶けていく。
その先には、いつもの青い空。
そして、どこまでも続く“共にある”という日々。
穏やかな午後、ふたりは並んで歩き出した。
守る者と、癒す者。
風と、温もり。
ルーヴェンの風がそっと吹き抜け、二人の髪と尻尾をやさしく揺らした。
「――ユリス」
「はい?」
「愛してる」
「……僕も、です」
琥珀と灰青の瞳が重なり、春の風が、静かにふたりを包みこんだ。
――その風はきっと、いつまでもこの街を巡り、二人の愛をそっと見守り続けるのだろう。
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